表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブラッドアッシュ I  作者: KeNta
第一章
38/48

決意 4−6

※最新情報を発信するためツイッターを始めました。

ご気軽に@k_atneフォローお願いします。


※アクセスして頂きありがとうございます。

もしよろしければ、感想、ブックマーク登録の方頂けたら幸いです。

「一ノ瀬。今回はお前に美味しいところをくれてやる」

「本当は立ってるのもやっとなんだろ、無理するなって」


先陣を切ったのは相馬。そのあとに俺が続く。

海斗も俺達が向かってきていることに気がつき、迎え撃つように大きな体を揺らして近づいてくる。だが不思議と先ほどより恐怖を感じない。それは単に鋭く尖った三本の爪がないからだろうか。いや違う。きっと、今の俺には頼もしい仲間がいるからだろう。


「相馬」

「ああ、なんだ?」

「ありがとな」


前を走る相馬の背中に一言だけ伝えた。


「……。いくぜ一ノ瀬!」

「おう!」


俺達は、それぞれ握っているクロスに再度力を入れて握り直す。


「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛」


緊張の一瞬。

放たれた海斗の一撃は、確実に俺達へと迫ってくる。その距離わずか数メートル。少し前の俺なら怯えて横に飛んでいただろうが今は違う。


大丈夫だ! 仲間を信じろ!


俺は、仲間達を信じて前へと進む足を止めなかった。そして、ぎりぎりまで拳を引きつけた瞬間、後方から一発の銃声が響き渡り、海斗は膝から崩れかけた。


「今だ、二人共!」


聞こえてくる掛け声。勿論、掛け声も銃弾を放ったのも影井だ。

影井は、海斗が相馬に拳を放つ瞬間、最も体重が乗った状態の左膝めがけて一発の銃弾を打ち込んだ。

バランスを崩した海斗は、唯一ある右手で体を支え転倒を防ぐが、結果、正面が無防備になる。


「いくぞ一ノ瀬!」

「ああ……」


気合を入れるように声を出す相馬とは対照的に、やけに落ち着いた口調で答える俺だったが、握っているクロスには力が入っている。二人は隣に並び立ち、相馬は左下から、俺は真上からクロスを振り払い、海斗に一太刀浴びせた。


「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!」


今の一太刀により一二歩後退する海斗だが、俺と相馬は休む暇を与えずの二人で追撃しかける。

時には海斗が反撃として右腕を振り払ってきたが、それを俺がクロスで受け流し、その隙をついて相馬が一太刀加える。俺達は考えるよりも先に、隣にいる仲間の行動を瞬時に予測し、それに合わせてお互いクロスを振るった。


「チッ!」


既に体力の限界が近い相馬。

時折体全体に今までの痛みが走り、クロスを振るう手が止まりかけてしまう。だが、その隙は仲間がフォローする。


「——まだ動いちゃ駄目よ」


いつの間にか背後に回りこんでいた楪が、海斗の足に狙いを定め素早い一振りを加える。

海斗はまたもバランスを崩し、今度は右手で体を支える前に倒れ込む。

————そして、ついにとどめを刺す時がきた。


「今がチャンスだ! 二人共!」

「「おう」」


あと一押しと判断した影井から激が飛ぶ。


「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!」


海斗も最後の力を振り絞るかのように、掠れた声を上げ攻撃を繰り出そうとする。


海斗……。


だが、その攻撃を相馬が見事に受け流す。


「一ノ瀬! 決めろ!」

「……おう!」


視界が歪む。気がつくと目には大粒の涙が。それでもこのクロスを振るう手を止めてはいけない。


『海斗ってんだ、よろしく』


海斗……。


『——お前がいればなんだって出来る気がするよ』


海斗……。


「一ノ瀬君!」

「行くんだ一ノ瀬君!」


『——生きろ。そして俺達の夢を頼む……』


海斗。あとは俺に任せろ……。——そして、今までありがとう。


「…………うおおおおおおお!」


覚悟を決めた最後の一撃が、巨大な化物、海斗の胸を捉えた。



挿絵(By みてみん)




「————裕太、助けてくれてありがとう」




いつかに交わした約束のお礼を最後に、海斗は眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ