決意 4−4
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「二人とも大丈夫!?」
「余裕ですよ……」
「こちらも大丈夫です……」
一ノ瀬を置いて廃病院を後にした影井達は、巨大な化物と交戦していた。
「あの馬鹿がいないだけでここまで変わるとは……」
クロスを杖変わりにして立ち上がる相馬。
「悔しいけどその通りね……」
楪も、相馬同様体を支えるためにクロスを地面に突き立てている。
「みんな……」
先ほどの戦いで巨大な化物の左腕を削ぎ落とすことには成功し、戦況が有利になると思われたが、それ以上に一ノ瀬の抜けた穴は大きく、攻撃を防ぐことで精一杯だった。
「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛」
大きな唸り声を上げる巨大な化物。
「影井先輩……、俺が突っ込みます……。援護を……」
「それは駄目だよ。ただでさえ相馬君は怪我を」
「このなかで奴とまともに接近戦を出来るのは俺だけです。やらせてください」
一ノ瀬を庇った際に負った怪我の影響により、楪には巨大な化物と正面からやり合うだけの体力は残されてはいない。影井にはそもそも接近戦は不可能。結果、相馬が相手をするしかなかった。
「……分かった。僕と楪さんで援護をする」
「ありがとうございます」
相馬は杖替わりにしていたクロスを両手で構える。
巨大な化物との距離はわずか数十メートル。
相馬の考えでは、この距離を一気に詰め、懐に入り込んだ瞬間にけりをつけるという算段。しかし、一歩でも間違えれば攻撃をもろに受けてしまう。失敗など許されない状態だった。
「相馬君……」
「大丈夫です。俺に任せて下さい」
チャンスは一度、巨大な化物がこちらに近づいてきた瞬間が勝負。
この場の空気が今まで以上の緊張感で包まれる。そしてついにその時がきた。
「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛」
巨大な化物は、大きな唸り越えを上げながらこちらに突っ込んできた。
相馬も巨大な化物が踏み込んだと同じタイミングで、足に溜め込んでいた力を一気に解放し、すさまじい速度で懐へと飛び込んでいく。
「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛」
巨大な化物は、相馬の速度に全く対応出来ず、懐への侵入を許してしまう。完全に隙をついた。あとは素早い一太刀を浴びせるだけだった。
「クッ!」
しかし、寸前のところで相馬の動きをとまる。
蓄積していたダメージが今の踏み込みで襲ってきたのだ。
当然、巨大な化物はその隙に反撃を加えるために腕を振り上げる。
「くそッ……!」
間一髪のところで横に飛んで避けるも、巨大な化物の攻撃は終わらない。
「このッ! こっちを向け!」
今も倒れる相馬に近づく巨大な化物。
それを阻止しようと影井が攻撃を仕掛けるが、巨大な化物は全く反応しない。今は、目の前の相馬だけに狙いを定めていた。
「クッ……」
相馬は体の痛みから起き上がることが出来ない。
「相馬君!」
影井が大声を上げながら、相馬の下へと駆ける。だが、既に巨大な化物は、人よりも大きな右腕を振り上げ攻撃を仕掛ける寸前。影井がいる位置からでは確実に間に合わない。楪も、怪我のせいですぐに駆けつけることは出来なかった。
「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!」
唸り声を上げながら、相馬めがけて右腕を振り下ろす。
楪、影井、それに相馬自身も諦めかけ目を閉じた。
「……」
しかし、巨大な化物の攻撃が相馬に届くことはなかった。
苦しむように叫び出す巨大な化物。
「——悪い。遅くなった」
そして、あとから聞こえてきた声に、楪、相馬、影井の三人は恐る恐る閉じていた目を開ける。
そこには——、
「一ノ瀬……。お前……」
剣を片手に立つ一ノ瀬の姿がそこにはあったのだ。




