決意 4−1
本日から、第4章がはじまります。
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「楪さん、大丈夫?」
「はい。だいぶ楽になりました」
巨大な化物から逃れた俺達は、戦場から少し離れた場所にある廃病院までやってきた。
幸い命に別状ない楪は、ここに着くと同時に目を覚まし、今は影井の手当てを受けている。骨折など大きな怪我はなく、ところどころに擦り傷のような跡が出来ている状態。俺をここまで担いだ相馬も、楪同様命に別状なかった。
そして、俺は二人のおかげで無傷だった。
「相馬君の方は大丈夫?」
影井の言葉に答えることはなく、相馬は俺の前に立った。
「——おい」
ドスの利いた声で口を開くと、そのままの勢いで俺の胸ぐらを掴む。
「……」
俺は、先ほどの出来事があまりにも衝撃的だったため、相馬に反抗することも出来ず、引っ張られるように立ち上がる。
「お前。自分がなにをしたのか分かってるのか?」
「……」
なにかを喋っているようだが、全てがザー、ザー、というノイズ音にしか聞こえない。
「おい! なんであの時とどめをささなかったって聞いてるんだよ!」
「…………トドメ……」
微かではあるが、相馬の叫び声が耳に届き始める。
とどめ? 俺が海斗を? どうして?
あの巨大な化物は、海斗で間違いないだろう。だったら、何故俺が海斗を殺さなくてはいけなのか、家族を手にかけなくてはいけないのかと、分からずにいた。
「いいか!? お前のせいで俺達は死にかけたんだぞ!」
言いながら、今も寝込んでいる楪の方を指差す相馬。
「ユズリハ……」
消え入りそうな声で口を開きながら、相馬の指差す先を見ると、そこには今も苦しそうに寝込んでいる楪の姿が。
そうか、俺を庇って……。
あの時、楪が助けてくれなければ倒れていたのは間違いなく俺だ。
「……」
「テメエいい加減にしろよ!」
更に俺を掴む手に力を込める相馬。
確かに、あの状態だったら巨大な化物を仕留めることが出来ただろう。しかし、寸前のところで正体が海斗であることに気がつき、クロスを止めてしまった。
結果、班の半分が負傷するという事態を招くことに。
全部……俺のせい…………。
楪や相馬が怪我をしたことも、海斗があんな姿に変わってしまったことも全部俺のせいだ。
「さっきから人の話を!」
「……ごめん」
「ああ!?」
「悪かった。ごめん……。だけど……」
次は相馬にも聞こえるようはっきりと答えた。
「だけどなんだよ!?」
どうしても止めをささなかった理由が知りたいのか、相馬は未だに俺の服を離さないまま、こちらを睨めつけている。
「——殺せる訳がないだろ……」
「なんだとテメエ!」
ついに我慢の限界に達した相馬が、俺の顔面を殴ろうと右拳を上げる。だが、寸前のところで影井が止めに入った。
「なっ! どうして止めるんですか?」
「一旦手を離そう。話はそれからだよ」
影井に言われた通り、相馬が俺の服から手を話す。
「一ノ瀬君。殺せる訳がないってどういうこと」
そして、影井も直ぐに訳を尋ねてきた。
「おい。答えろよ」
追撃とばかりに相馬からも同じ質問が飛んでくる。多分、今も横になっている楪も同じ思いを抱いているのだろう。
もう、答えるしかなかった。
「一ノ瀬君……」
優しい口調のなかに、はっきりとした疑問の念が込められていたので、俺は覚悟を決めて話すことに。
どうして、俺があの時巨大な化物にとどめをさせなかったのかを。




