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ブラッドアッシュ I  作者: KeNta
第一章
28/48

家族 3−8

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「みんな! 大丈夫!?」


あの後、合流地点まで向かっていた俺達は、再び奴らの群れと遭遇。そして戦闘に。

しかし、戦いっている最中いきなり近くの建物が倒壊し、その巻き添えをくらうような形で戦いは終わった。

今は怪我がないかを確認するように、影井がみんなに声をかけている。


「な、なんとか……」

「こっちも無事です」

「同じく……」


幸い俺達四人に怪我はなかった。


「まさかいきなり倒れてくるとは思いませんでした」

「危なかったね」


倒壊した建物を見ながら会話をする楪と影井。対照的に残りの二人は……。


「おい、馬鹿一ノ瀬! テメエ、俺の邪魔するんじゃねえ!」

「はあ!? お前が苦戦してたから助けてやったんだろ!」

「苦戦なんかするかボケ!」


相変わらずの状態。

今の戦闘でも互いにぶつかり合ったり、狙っていた敵を奪われたりなどと、全くと言っていいほど俺達四人は連携が取れていなかった。勿論、その原因を作っているのは俺、楪、相馬の三人。

三人共連携を取っているつもりらしいが、影井から見ると、どうも一人で先行している箇所が目立ってしまうようだ。


「二人共ストップ。喧嘩はそこまで。今回の戦いで、みんなかなりの体力を消耗したと思うから少し休もう」


影井の提案で、休憩という名の頭を冷やす時間を作ることにした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「じゃあ僕と相馬君でこの階段から上がっていくから、一ノ瀬君と楪さんはあっちの階段から上がって奴らがいないか確認して欲しい」

「了解」

「分かりました」


俺達は、戦闘を行っていたすぐ近くの建物に入り、休憩を取ることにした。

その際、建物全体の安全確認の意味を込め、二手に分かれて別々の階段を上ることに。


なんで俺が楪と……。


俺の前を歩く楪の背中を眺めながら、そんなことを考えてしまう。

楪とは訓練兵時代からあまり会話をした記憶がなく、なにを考えているのか全く分からない。という印象。それは同じ班になった今でも変わらず、俺は楪との接し方が分からず任務に当たっていたのだ。


これじゃあいつまで経っても仲良くはなれないよな……。


二人になれたこのチャンス、少しでも楪との距離を縮めようとしたのだが、なにを話せばいいのか全く分からず終始無言。このままではなにも変わらず影井達と合流してしまうところだった。


なにか、なにか……。


考えながら楪の後ろを歩いていると、階段の前までやってきた。

しかし、楪は階段を上ろうとはせずその場で立ち止まってしまう。


「どうした?」


何故止まったのか分からなかった俺は、楪の背中に声をかける。


「あなたにはデリカシーというものがないのね」

「あ……」


そこで、初めて楪がなにを言いたいのかを理解した。


上は俺と同じ制服、だが下は太ももまでしかないミニスカート。

このまま先に階段を上がってしまうと、スカートの中身が見えてしまう可能性があったのだ。


「ご、ごめん!」


分かった瞬間顔が赤くなり、俺は慌てて楪の前に立ち階段を登り始めた。


「ありがとう」

「お、おう……」


無言のまま階段を上がっていく二人。


ああ、やっちまった……。


せっかく楪のことを知るチャンスだったのだが、今ので完全に声をかけるタイミングを見失う。


「ねえ、ここが地元って本当?」


だが、予想外に楪の方から声をかけてきた。


「そ、そうだよ」

「そう……」

「それがどうした?」

「……突然こんなことを聞いてごめんなさい。今の話は忘れて」


いきなり声をかけられ動揺していただけなのだが、楪は聞いてはいけないことを聞いてしまったと勘違いをしていた。確かに、任務場所がここであることを聞かされた時は当時の記憶が蘇り、少し複雑な気持ちにもなったのは事実。それでも今は大丈夫。


「車内でも話したけど、ここは俺の地元なんだ……」


俺は楪が聞いてきた質問の話を続けた。


「まあ、この街には三、四年しかいなかったけどな」


それでも、母さんや海斗と過ごした大切な街。ここへくる途中も幾つか行ったことのあるお店が目に飛び込んできた。


「そうなの……。その前はどこに?」

「分からない」

「え?」


俺の返事を聞いた瞬間、楪の足が止まる。


楪に話した通り、今になってもあの母さんと逃げていた以前の記憶が全く思い出せない。ただ、それが原因で生活に支障をきたしている訳でもないので、もうあまり気にならなくはなっていた。


「楪って俺と歳が近かったよな?」

「そうだけど」


階段で止まっている楪の方を振り返り、話を続ける。


「なら、奴らが初めて襲撃してきた年、確か八歳かな。多分その時のショックでそれ以前の記憶が無くなったんだ」

「そんな……」


果たして本当にショックで記憶をなくしてしまったのかは分からないが、これ以上答えようがないので、このまま話を押し通すことに。


「ねえ、記憶喪失ってやっぱり辛い?」


こんなに喋る楪を見るのは初めてだ。


「まあ多少はね」

「そう……」


小さな返事と共に、楪がこれ以上詮索してくることはない。


「楪は何処に住んでたんだ?」


車内での相馬がそうであったように、俺達は相手の過去を安易に詮索してはいけない。だが、会話に詰まった俺は、楪からあった質問をそのまま返してしまう。


「——私は……」


一言口を開いてからは、全く喋り出す気配を感じない。


「楪……?」

疑問に思った俺は、楪に声をかける。

すると、一拍置いたあとに「ごめんなさい」と一言だけ聞こえてきた。

どうやら聞いてはいけない質問だったようだ。


「いや、俺の方こそ……」


急いで質問したことを謝るが、もう楪からは返事がない。


やっちまった……。


「……」


再び無言で階段を上る二人。

そして、俺達がこれ以降会話をすることはなかった。

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