家族 3−7
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奴らはどこにでも姿を現す。人間を喰らい、殺すために。
「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛」
体は堕人よりも圧倒的に大きく、左腕には鋭く尖った三本の爪。
あの時、大学生四人組を襲った巨大な化物は、なにかを探すように歩き回っていた。
「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛」
餌を探して歩き回っているのなら、太平と咲を殺していれば済んだはなしだろう。しかし、この巨大な化物は、二人に全く興味を示さず、太平の顔を確認すると次を求めて歩き出してしまったのだ。
人間の言葉のようにも聞こえる、巨大な化物の唸り声。
それに引き寄せられるように、あちこちから奴ら、堕人が姿を現し始める。奴らは人間しか襲わないと言われていたが、この巨大な化物は違う。こいつは——、
「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
大きな唸り声を上げながら、次々と目の前の堕人を殺していく。
鋭く尖った三本の爪で串刺し、左腕程ではないが、大きな右腕で奴らをまとめて掴み、地面に勢いよく叩きつけるなどと、明らかに堕人を敵と判断していた。
「あーらら。また暴れちゃってー」
巨大な化物が暴れる様子を建物の上から眺めていたサクラス。
その表情、声からは、怒っているといった様子はない。むしろこの光景を楽しんでいるようにも見えてしまう。
「それにしても、まさか堕人になっても人間としての意識が残っているなんてねー。あ、もう飲み干しちゃった」
言いながら、巨大な化物目掛けて大学生咲の遺体を放り投げる。だが、巨大な化物は全く興味を示さず、他の堕人を襲い続けていた。
そう、サクラスの言う通り、今も暴れている巨大な化物には多少なりとも人間としての感情が残っていたのだ。
そして消え入りそうな人間としての感情の下、なにかを探し、なにかを守るように他の堕人達を殺し続けていた。
「お前の目的はなんだい?」
巨大な化物に問いかけるも、勿論答えは返ってこない。ただ唸り声を上げて歩き回るだけだった。
そんな様子に退屈していたサクラスだったが、遠くの方から聞こえてきた建物が崩れる音に体を向ける。
「あっちが騒がしいねー。人間かな」
まだ血が足りないと、わざとらしく自身の上唇を舐めまわしながら不敵に微笑む。
「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛」
その音に巨大な化物も反応を示す。
「お前も興味あるのかい? だったら一緒に行こう。もしかしたら探し物が見つかるかもよ」
サクラスが先導するように、巨大な化物は音のした方へと歩き出した。




