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ブラッドアッシュ I  作者: KeNta
第一章
24/48

家族 3−4

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「よう、例によってまた暗いな。もしかして怖気付いたか?」


任務場所へと向かう車内。

俺達は前回と同じ場所に座り目的地へと向かっていた。


「人の話を聞いてるのかよ」


車内で口を開いているのは相馬のみ。

俺は前回のように突っかかるわけでもなく、適当に聞き流しながら外の様子を遠い目で眺めていた。


「おい、人の話を——」

「……懐かしいだけだよ。ここがな……」


この道も、あのお店も、どこも知っている場所ばかり。しかし、そのどれもが奴らの手によって壊され、崩壊仕掛けていた。


「それって……」


さすがに相馬も気がついたのか、バツが悪そうな顔でこちらから目を背ける。

そう、ここは昔、俺が母さん、海斗と住んでいた街、『相模原』だ。

出発前まで目的地を黙っていたのは俺への配慮だろうか、フロントミラー越しに水野を眺めるが、運転に集中しているためこちらの視線には気がついていない。


久しぶりだな……。


再び車の外へと視線を向け、当時の日々を思い出すかのように見つめる。

それと同時に、なにも出来ずに逃げ出した自分が悔しくて仕方がなかった。


「……悪かった」


そんな思いで移り変わる風景を眺めていると、相馬が申し訳なさそうに口を開いた。


「今回は俺が全面的に悪かった。すまん……」


体もこちらに向けて謝る相馬。


こんな時代に生きる俺達は、心のなかにそれぞれのトラウマを抱えている。

家族を殺されたトラウマ。恋人、友人を殺されたトラウマなどと。そのため俺達は必要以上に過去を話そうとはしない。


「……いいよ。だいぶ前のことだし……」


口では言うものの、故郷に戻るとどうしても当時の忌まわしいき記憶が蘇ってしまう。


まだ、家もあるのかな……。


先ほどまで騒がしかった相馬も大人しくなり、聞こえてくるのは今にも壊れそうな車のエンジン音のみ。

車内から人の声が消えた。


「……」

「お前ら、好きな食べ物はなんだ?」


俺や楪、相馬や影井が一言も喋らない様子を見かねて、水野が明るい調子で口を開く。


「影井お前はなんだ?」

「ぼ、僕ですか!?」

「ああ。で、好きな食べ物はなんだ?」


フロントミラー越しに影井の顔を見つめる水野。


「お肉ですかね……」

「なるほど肉か。一ノ瀬、相馬、お前達はなんだ?」

「肉です」

「俺も」


相馬に続くように俺も質問に答える。


「楪、お前は肉嫌いか?」


最後に助手席に座っている楪に声をかけた。


「お肉ですか……」

「そう、肉だ」


楪は一度目を閉じ、じっくり考える。


「嫌いじゃないですね」

「なるほど、話は以上だ」

「「はあ?」」


思わず相馬と声が合ってしまった。

楪も、水野の方に首を向けて驚いている。


「なんだ、どうした?」


水野はわざとらしくフロントミラー越しに俺と相馬の表情をうかがう。


「いや、ここは上官である私が特別に奢ってやろう。とか言う場面だろ!」


三人を代表して俺が口を開くと、一斉に頷き始める。あの楪でさえ。


「冗談だよ。私がそんなケチくさい人間に見えるか?」

「……」


再び車内が静まり帰る。


「お前達、今ここで降りるか?」

「み、水野隊長は太っ腹です!」

「そうです!」

「水野は美人!」


相馬、影井、俺の順番で必死に水野を褒めちぎり、なんとか降りることだけは間逃れた。


「この任務が成功したらな」


そしたら焼肉を奢ってやると水野は言った。


「水野隊長、ありがとうございます!」

「隊長ありがとうございます!」


もしかして、水野はわざとこの空気を壊すために、あえて場違いなことを言ったのではないだろうかと考えてしまう。


「どうした、一ノ瀬」


意味ありげに俺を呼ぶ水野。


フロント越しではあるが、全てを見透かしたような視線に俺は思わず目を逸らす。

そして、「ふん」と鼻で笑ったあと再び運転に集中し、目的地である『相模原』に到着した。

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