家族 3−3
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「みんな、もう大丈夫だ」
「はぁ……はぁ……」
「な、なんとか助かったね……」
「これからどうする?」
男女の大学生四人組は、荒廃した建物のなかへと避難していた。
「さすがに奴らもここまでは上がってこないだろ」
みんなを先導していた茶髪の男が呼吸を整えながら答える。
それを聞いて安心したのか、他の三人からも先ほどのような険しい表情は消えた。
「そうだよ! あいつらがこんなところにまで登ってこられる訳ない」
「バリケードも作ったしね」
「だな! あの野郎次見つけたらぶっ殺してやる」
完全に肩の力が抜けた三人だったが、茶髪の男だけは変わらず険しい表情。それもそのはず、奴らの侵入を防ぐために作ったバリケードも所詮は机や椅子などを積み上げたに過ぎない。果たして、そんなもので奴らの進行を防ぐことが出来るのだろうか。と茶髪の男は不安で仕方がなかったが、それを隠すように気丈に振舞う。
彼らとは大学入学当初からの付き合いで、常に行動を共にしてきた仲間達。
ここへくる途中、家族や友人全てを失った四人は、一緒に生きて行くことを決意し、奴らから逃げるように生活をしていた。
「いや、走ったから腹減ったよ」
もう一人の大柄な男がバッグを漁る。腹を満たすための食料を探しているようだ。
「ちゃんと計画的に食べないと駄目だよ!」
「大丈夫、大丈夫。もしなくなったら近くのコンビニから取ってくるよ」
人の話も聞かず、大柄な男は大事な食料を食べ始めた。
「なあ、咲は?」
考え事をしているうちに、咲がこの場からいなくなっていた。
「咲ならトイレに行くって言ってたけど、遅いね……」
中々帰ってこないことに、もう一人の女の子が不安げ表情を浮かべ始める。それとは対照的に、大柄な男は「うんこだろ」と、デリカシーのない発言をして一人で笑っていた。
「悪い、ちょっと見てくるわ」
嫌な予感がした茶髪の男は、咲を探しにトイレへと向かう。
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「咲いないのか?」
女子トイレの入り口で咲を呼んでいるが全く反応がない。
入って確認すれば済む話なのだが、こんな状況でも女子トイレに入るのは少し躊躇ってしまう。
「おい、咲!」
先ほどよりも大きな声で呼ぶが返事はない。そして、次第に焦りが生まれる。
もしかしたらあの化物達に、そう思った瞬間体が勝手に動き、女子トイレへと足を踏み込んでいた。
しかし、五つある個室トイレ全てを確認してが、咲の姿はどこにもなかった。
「咲……」
不安と焦りだけが徐々込み上げる。
「も、戻ろるか」
ここへくる途中に入れ違いになってしまった可能性もあるので、引き返そうとしたその時、背後からなにかの気配を感じた。
「わっ!」
急いで振り向くと、そこには人を驚かすように咲が背後から現れたのだ。
当然、驚かない訳もなく、茶髪の男は大きな声を上げながら後ろに一二歩下がり尻餅をつく。
「だ、大丈夫!?」
やり過ぎたと感じた咲は、慌てて手を差し伸べる。
「ああ、大丈夫……」
「ごめんね。大きな声で私を呼んでたからつい……」
「よかったよ、無事で」
これで一安心して戻ることが出来ると思ったのだが——、
「——きゃああああああああ!」
建物全体に響き渡る女性の悲鳴。
「あっちも遊んでるんだ」
咲が笑いながらこちらに答えてくる。
茶髪の男も最初はそう思っていたのだが、あとから聞こえてきたもう一つの声を聞き、絶句する。
「こっちにくるな化物! わああああああ!」
男の野太い悲鳴。
そして茶髪の男は理解する。化物達が攻め込んできたと。
「行こ!」
一瞬頭の中が真っ白になったが、咲に手を引かれてすぐに我にかえる。そして、そのまま二人の悲鳴がした方へと走り出した。
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先ほどいた場所に戻ると、そこは絶望的な状況が広がっていた。
奴らに襲われた女性は左足が削がれ、必死に抵抗をした証拠に服がボロボロに破れていた。
男の方は、奴らに噛まれたあとが複数あり、そこから夥しい量の血を流している。
「み、みんな!」
奴らが近くにいるのにどちらも全く動かない。既に奴らに殺されたあとだった。
「……逃げるぞ」
言ったと同時に咲の手を掴む茶髪男だったが、死んだ二人を見つめながら全く動こうとはしない。
先ほどまで喋っていた人間が突然動かなくなったのだ。同様するのは当然。だが、今は止まっている場合ではない。
「咲ッ!」
声をかけるも、涙を流しながら動こうとはしない。
ついには奴らがこちらに標的を変え、ゆっくりと迫ってきていた。
「美久、浩二……」
「おい、咲ッ! 早くしろ!」
咲の手を引き、強引にでもこの部屋から逃げ出そうとしたのだが、入り口付近に新たな足音が。
「嘘だろ……」
振り向いた先には、体の至るところが赤黒く変色した奴らと同じような化物の姿が。
「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛」
新たにやってきた化物は、全長三メートルはある大きな体。左腕には鋭く尖った三本の爪と、一目見ただけで危険なことが分かる。
「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛」
巨大な化け物は、よだれを垂らしながらゆっくりと近づいてくる。
勿論、間を縫って抜け出すスペースもない。かといって、前を見たところで二人を殺した奴らの姿が。
「……」
この状況ではどこにも逃げ場はなかった。
「……大平」
咲が茶髪男、大平の名前を呼びながら、全てを諦めたかのように手を握る。
「咲……」
「今までありがとう、楽しかったよ」
それが最後の言葉のように、二人を殺した奴らが一斉に襲いかかってきた。
大平は無駄だと分かりながらも咲の盾になるように覆いかぶさり、そのまま二人は倒れこむ。
出来ることなら咲だけでも逃してあげたいが、大平にそんな力はない。大平は小さく「ごめん」とだけ咲に伝え、強く目を閉じた。
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「……大平、大平!」
咲の声でゆっくり目を開ける。
確実に死んだと思っていた大平達は、奴らの攻撃を一度も受けることなくその場に倒れこんでいたのだ。
「大平。あれ見て!」
咲に言われた通り顔を上げると、予想もしていなかった光景が広がっていた。
「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
「嘘だろ……」
なんと、目の前では巨大な化物が奴らを襲い、食い殺していた。
奴らも負けじと応戦しているようだが全く歯が立たず、一匹、また一匹と食い殺されていく。そして、気がつくとこの部屋には巨大な化物だけになっていた。
「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛」
全てを食い殺した巨大な化物は、そのまま大平達の下へ。
逃げ出すチャンスはあったが、恐怖から足が全く動かなかった。
左腕程ではないが、普通の人間より大きくなった右腕で大平の首を掴む。
「ぐはああああああ」
「大平!」
首を絞めるような形で、巨大な化物は大平を軽々と持ち上げる。
太平も、逃れようよ必死に足掻くが、その勢いも次第に弱くなる。窒息寸前まで追い詰められていた。
「やめて!」
咲が必死に止めようと泣きながら巨大な化物を叩いているが、全く反応がない。
「……うッ」
今度こそ死を覚悟した。
「————」
だが、巨大な化物は突然大平から手を離し、ゆっくりとした足取りで部屋から出て行ってしまう。
「大平、大丈夫!」
倒れた俺に駆け寄る咲。苦しかっただけでとくに外傷はなかった。
「あいつ……」
「どうしたの?」
咲には聞こえていなかったようだが、首を絞め上げられていた大平にははっきりと聞き取れた。
「大平……」
あいつは、太平の顔を見るなり「違う」とはっきり言ったのだ。




