家族 3−2
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集合場所に到着すると、既に水野以外の全員が揃っていた。
「よう」
「……」
相馬に挨拶するも無視。鼻で笑われるだけだった。
「よう、楪」
「おはよう」
楪に挨拶するもあいかわずの様子。
「よう、お前達」
気まずい空気のなか、水野が右手を軽く上げて登場。
いつも通りやる気のない挨拶だが、今日は左手に小さなアタッシュケースを持っている。
「そのケースはなんですか?」
場の空気を変えるように、影井が大きな声で口を開く。
「これか、これは後でのお楽しみだよ」
「そうですか」
まだ見せる気はないらしく、水野はわざとらしくアタッシュケースを胸の前で抱えるが、そんなことをしたところで場が和むわけでもなく、登場前と全く変わらない。楪に至っては全く興味がないのか、ため息を吐きながら顔を反らしていた。
「水野隊長、それより任務の詳しい内容を」
痺れを切らした相馬が、やや怒りながら任務の内容について詳しく説明するよう申し出る。
すると、いきなり真面目な表情へと一変した水野。任務の内容について説明を始めた。
「今回の任務も前回同様、敵領土の奪還と制圧。しかし、今回はその規模が大きいので部隊を二つに分けようと思う」
「二つにですか?」
「ああ、二つだ」
班を二つに分けることが珍しいのかは分からないが、影井の反応からしてあまりないのだろう。
俺は黙って話を聞くことに。
「詳しい話は現場でもう一度確認するが、班の編成は私とお前達だ」
水野は当たり前のように答えた。
「つまり水野隊長は一人で行動するということですか? 危険ですよ!」
「なあに、お前達よりは強いから安心しろ。それにやばい奴と遭遇したらすぐに撤退するさ」
適当過ぎる班編成に相馬が抗議を示すも、水野は全く聞こうとしない。
「そして影井、お前がこいつらの面倒を見ろ。臨時の隊長だ」
「ぼ、僕ですか!?」
いきなり自分の名前が出たことに、影井は情けなくも大きな声を上げてしまう。
「頼んだぞ、隊長」
「い、いや僕には……」
今にも隊長の座から降りようとしていたが、その前に楪が口を開く。
「隊長の作戦通りに任務を行うのであれば、実践経験が一番多い影井先輩が適任だと思います」
「決まりだ。頼んだぞ、影井」
「僕ですか……」
これ以上反論しても無駄だと観念した影井は、渋々といった感じで引き受ける。
俺もとくに反論はなかったのだが、このなかで相馬一人だけが納得のいかない表情をしていた。
「影井が隊長だと不安か?」
「いいえ、影井先輩が隊長の代わりを務めるのは問題ありません。ですけど、こいつを任務に連れて行くのは反対です。またなにをしでかすか」
隣に立っていた相馬が俺を指差し、本作戦から外すよう水野に伝える。
「一ノ瀬、お前はどうだ?」
作戦に参加するかの有無を俺に問う水野。
そんなの勿論参加するに決まっているのだが、それだけでは周りの信頼を得ることは出来ない。
だから俺は、みんなが見える位置に立ち、ゆっくりと口を開いた。
「——あの時は勝手な行動を取って悪かった」
前回の単独行動を謝罪する意味を込め、深々と頭を下げる。
「一ノ瀬君……」
「お前、なにを……」
突然俺が頭を下げたことに戸惑いを隠せない楪と相馬だが、無視して話を続ける。
「俺の単独行動でみんなを危険な目に合わせちまった。ごめん……。今度からは水野の指示に従って行動する」
「当たり前だ」
相馬が当然のように答える。
「単独行動を取ったのは悪いと思っている。でも、あの時飛び出して行ったことは後悔していない。結果として真理亜を助けることが出来た」
そう、俺が直接的に助けた訳ではないが、結果としてあいつの笑顔を見ることが出来た。こんな時代でも、あんな風に笑うことが出来ると教わった。だから、だから俺は決めたんだ。
「——みんなを守りたい。お前達を、家族を守りたい。だから、俺を連れて行って欲しい」
これが俺の出した答え。
「だとさ、どうする相馬?」
頭を下げている姿を見て、水野は相馬を試すように言葉をかける。
「……好きにしろ」
「だとさ。よかったな」
「ああ、」
水野は最初からこうなることを予想していたような口ぶりだった。
「よし、荷物を車に積み次第出発する! 今回の目的地は『相模原』だ!」
俺達水野班の二回目の任務が始まった。




