家族 3−1
※決意を新たにした裕太の戦い、第三章が始まります。
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三日間の休養を経た俺達水野班は、二回目の任務に当たることとなった。
内容は初任務同様、領土の奪還。
そのため、俺は制服に身を包み、前回のように集合場所である車庫へと向かっていた。
あれから影井や真理亜のおかげで考えがまとまり、体がだいぶ楽になった。今なら迷うことなく自分の思いを伝えることが出来るだろう。
「あ、お兄ちゃん!」
通路を歩いていると、曲がり角で真理亜と鉢合わせる。
しかも、組織の制服を着た状態で。サイズが全く合っていないところを見ると、誰かのものを勝手に着て遊んでいるようだ。
「真理亜、その服は誰のだ?」
「内緒」
と本人は答えるも、俺は聞くまでもなくこの制服が誰のものか分かっていた。
「こら、真理亜ちゃん。私の制服返して」
それで怒っているつもりなのだろうか、可愛い声を上げながら真理亜を追って華耶がやってきた。
今の華耶は、真理亜に制服を取られているのでTシャツにハーフパンツとかなりラフな格好。
「あ、一ノ瀬君」
俺に気がつくと、華耶は恥ずかしがるように頬染め、その場から一二歩後ろへ下がる。
「やっぱり華耶の制服か」
「は、はい……。着替えようと思ったら何処にもなくて……」
予想通り、華耶の制服だった。
というか富士山って……。
一瞬だが、華耶のセンスを疑ってしまう。
「これは真理亜の!」
あれから誰が真理亜の面倒を見るかという話になった。
最初は水野班の誰かが面倒をみるという方向で話を進めていたのだが、俺や相馬、影井は男なので役不足。
水野は他の業務があるから面倒見切れないと、そして最後に楪にみんなの視線が集まったが、「子供は嫌いです」と一蹴されてしまう。要は、水野班のなかで真理亜の面倒を見ることが出来る母性見溢れた人間はいなかったのだ。
このままでは真理亜は行き場を失い路頭に迷ってしまう。
そんな時、華耶に白羽の矢が立ったのだ。
『私ですか? 別にいいですよ、子供好きですし』
二つ返事で真理亜の保護者役を引き受けてくれた。
「真理亜ちゃん、私の制服を返して」
「いやだよー」
ここで暮らすようになってから、まだ三日間しか経過していないが、華耶とは随分と仲良くなった様子。
言葉通り、華耶も子供のことが好きなのだろう。かなり手を焼いているようだが見ていて楽しそうだ。
「真理亜、制服を返しなさい」
俺も出来るだけ優しく、制服を返すよう真理亜に伝える。
「……分かった」
真理亜は頬を膨らませながら、着ていた制服を脱いで華耶に返す。
その場で脱ぎ始めたので、一瞬裸になるのかと思ったが、下にTシャツを着ていたのでその心配はなかった。
「一ノ瀬君、ありがとうございます」
返してもらった制服を胸の前で大事そうに抱え、ぺこりと一度頭を下げる。
「こっちこそ真理亜の面倒見てくれてありがとな。大変だろ?」
「そんなことないですよ。久しぶりに子供とお話が出来て楽しいです」
「久しぶり」華耶は何気なく言ったのだろうが、その言葉を聞いた瞬間、胸のあたりが騒つく。
久しぶりか……。
確かに華耶の言う通り、真理亜くらいの子供と久しぶりに話した気がする。
果たして、今地上には真理亜と同い年くらいの子供はどれくらい生き残っているのだろうか。
この前の地域でも生き残りは真理亜一人だけだった。多分、他の地域変わらない。生存は絶望的だろう。真理亜があの環境で生き残っていたのは奇跡にちかい。
「一ノ瀬君、どうかしましたか?」
地上のことを考え気持ちが暗くなっていると、心配した華耶がこちらに声をかける。
「なんでもない、なんでもない。それより華耶も任務か?」
「いいえ、今日はお休みです」
「そっか」
華耶は知之と一緒に朝霧班に配属され、俺より一日遅く初任務を行ったらしい。
「一ノ瀬君はこれから任務ですか?」
「あ……」
真理亜と出会ったことですっかり忘れていたが、俺はこれから任務に向かうのであった。それに感づいた華耶は会話を早々に切り上げ、俺を集合場所まで向かわせようとする。
「任務、気をつけて下さい」
「お兄ちゃん行ってらっしゃい」
「ああ、行ってくる」
俺は華耶と真理亜に挨拶をし、集合場所まで走った。




