仲間 2−7
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「お前達、初任務ご苦労」
「……」
あれから一度車に戻った俺達は、新たに作戦を立て直し任務に当たった。
その作戦とは——、
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「なんで俺が車で待機なんだよ!」
「隊長命令だ」
俺が車で女の子の面倒をみている間に、水野達が奴らを殲滅するというものだった。
どうやら、本作戦では俺はお荷物らしい。
「なんでだよ! 俺にも戦わせろよ!」
作戦から外され騒ぐ俺を他所に、周りは水野の提案に賛成だったのか、誰も口を出すものはいなかった。
「お前いい加減にしろよな!」
「相馬、いい私がやる」
水野が相馬を制止し、俺の目を見て再び話を続ける。
「一ノ瀬。お前なぜ女の子を助ける時、クロスを使わなかった」
クロスとは、奴らと戦うために『最果ての血』が作り出した対吸血鬼用武器。
通常の武器では仮に奴らの腕や足を切ろうと瞬時に再生してしまうが、この鬼光石という素材を使用した特殊な武器であれば奴らを倒すことが出来る。そして、このクロスは普段十字架のブレスレットや指輪などのアクセサリーに形状を変えることが可能で、これを閉鬼状態と呼ぶ。そして、水野はあの時クロスの解放を命じた。
だ、が俺にはそれが出来なかった。何故なら……。
「——躊躇っただろ。元人間だからという理由で」
「それは……」
そう、水野の通り、俺は元人間だからという理由で奴らの命を奪うことを躊躇ってしまったのだ。
「いいか、お前が今手にしているものは奴らを倒す力であり、人間を守る力でもあるんだ。もしお前がその力を使わず、私達も駆けつけなかったらあの子はどうなっていたと思う?」
「……」
「守るものを見失っている人間を戦場に立たせる訳にはいかない。今はそこで少し考えろ」
「……」
そして、俺抜きで作戦は実行され見事成し遂げ帰還した。
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「今日はゆっくり休んでくれ。今後のことはまた後日連絡する。では解散」
朝集まった場所で解散を言い渡す水野。
俺は近くにあった用具箱に腰を下ろしていた。
「それと真理亜は私とくるんだ」
「分かった!」
真理亜、それが先ほど助けた女の子の名前。
歳は五歳、青い目に腰まで伸びる白い髪をした女の子。
「またねお兄ちゃん。助けてくれてありがとう」
「ああ……」
普段では許されないのだが、真理亜を『最果ての地』が保護した。
拠点を制圧したあと、真理亜の家族を探したが何処にも見つからなかった。それどころか、あの街で見かけた人間は真理亜のみだった。本人は『おじさん』と呼んでいた男性と共にいたそうだが、気がつくと一人になっていたという。
多分、真理亜の親代わりをしていた『おじさん』と呼ばれる人はもうこの世にはいない。奴らに殺された。
そのため行くところのない真理亜を特別に保護し、連れてきたのだ。
「ありがとう」か……。
果たして、俺は真理亜にお礼を言われる資格があるのだろうか。もしかしたら、俺のせいで奴らに殺されていた可能性もあっただろうに。
「俺は……」
「——おい」
そんなことを考えていると、相馬が俺の下までやってきた。
「なんだ、相馬か……」
あいからずの態度に普段なら強気に出ている俺も、今回ばかりは張り合う元気もなく、適当に返事をしたあとまた下を向いて黙り込む。
その態度が気に入らなかったのか、相馬は厳しい言葉を俺にぶつけてきた。
「お前、俺達の班にはいらねえわ」
「なっ!」
なにを言われても適当にあしらうつもりだったのだが、さすがに今の一言は許せず反論しようと立ち上がる。だが、相馬はそれよりも先に話を続けた。
「隊長の命令を無視して、しかも仲間を危険な目に合わす奴はこの班には入らない。迷惑だ」
「……」
相馬は一言だけ告げると足早に自分の部屋へと戻っていく。
確かに相馬の言う通り、俺は水野の命令を無視して女の子を助けに行った。
結果として全員助かったからよかったものの、もし今回の相手が堕人ではなく悪鬼だった場合、こう上手くはいかなかっただろう。そう考えると相馬になにも言い返すことが出来なかった。
迷惑か……。
「じゃあ私もこれで」
続くように楪も荷物をまとめて戻ってしまい、この場に残されたのは俺と影井のみ。
「ちょっといいかな……」
気まずそうに影井が俺の下まで歩み寄ってきた。
「先輩……」
結局、あのあと影井にも助けられたお礼を言えていないので、面と向かって会話をするのは少々気まずい。しかし、影井はそんなことを全く気にする素振りも見せず、俺が座っている用具箱の隣に立つ。
「一ノ瀬君、今日はお疲れ様」
「俺はなにもしてないけどな」
影井に当たるわけではないが、先輩からの言葉を皮肉交じりに答えてしまった。
「——僕も最初はそうだったよ」
「え、……?」
てっきり相馬のように厳しい一言が飛んでくるのかと思ったが、返ってきた言葉は非常に優しく、俺の予想とは全く異なるものだった。そして影井は話を続ける。
「僕はね、最初の任務で友達を殺したんだ……。この手でね……」
「友達を……」
さらりと答える影井だったが、それはとてつもなく勇気がいることで、もし俺が同じ状況に立たされたとしたら躊躇うことなく友達を殺せるだろうか。分からない。そもそも、そんなことを考えたくもなかった。
「そう、でも最初は怖気付いて引き金をひけなかったけどね」
当時を思い出すように、影井は苦笑いを浮かべながら答える。
「僕が殺し損ねたせいで作戦は失敗してしまったんだ……」
「失敗……」
今の俺のようにと影井は答えた。
「あの時は僕も周りから散々怒られたよ。使えないだの、いらないだのってね……」
「……」
「まあ、言われて当然だと思うけどね……」
要は、遠回しに俺のことをいらないと言っているのだろうか。
だとしたら相馬のように直接言って欲しいものだ。
「水野隊長が言った通り、誰かがやらないといけないんだ。そうしいと僕達人間は殺されてしまうから……」
「分かっています」
そんなことは十分わかってる。分かっているはずなのだが、あの時は体が動かなかった。
「僕達は、誰かの犠牲の下で生きているんだよ。家族や友人、そういった人達の犠牲でね」
「……」
「彼らはどんな思いで僕達の犠牲になったと思う?」
「それは……」
「その意味をはっきりと理解すれば自分のやるべきこが見えてくるよ」
それだけ伝えると、「僕も疲れたから休む」と言って影井も自分の部屋へと戻ってしまい、車庫に残っているのは俺一人だけとなってしまった。
やるべきことか……。
影井に言われたことを考えながら暗い天井を見上げる。
当然俺のやるべきことは奴らを倒し、みんなを守ること。分かっている。
多分、このままだと次の任務でも同じ失敗を繰り返し、仲間を危険な目に晒してしまう。
俺はどうすれば……。
「お兄ちゃん」
用具箱に座り一人考えに苦しんでいると、水野と何処かへ行ったはずの真理亜がこちらに戻ってきた。
「真理亜どうした?」
「お兄ちゃんを迎えにきた」
こっちが悩んでいることも知らず、真理亜は笑顔で俺の服を引っ張る。
誰かがこんなにも楽しそうにしている顔を見るのは久しぶりな気がした。そんな明るい表情を見ていると、自然と俺も顔がほころぶ。
「迎え?」
「そう、あっちでお姉ちゃんに頼まれたの。励ましてあげてって」
「お姉ちゃんって誰?」
「内緒」
お姉ちゃん。果たしてそれは誰のことだろうか。
とりあえず水野と楪ではないことは分かるのだが、その心使いは素直にありがたい。真理亜が現れてくれたおかげで少し気が楽になった。
「お兄ちゃん?」
しかし、それでも俺は答えを出さなくてはならない。
「なあ、真理亜。俺、お前のこと守れたのかな……?」
返事が怖かったが、恐る恐る真理亜に尋ねる。すると——、
「守れたよ。だって真理亜はここにいるもん」
五歳の女の子真理亜は、自分の気持ちを隠すことなく俺へとぶつけてきた。
「だからお兄ちゃんのおかげだよ」
最終的に真理亜を助けたのは水野達なのだが、それでも俺に「ありがとう」と、笑顔で真理亜は言ってみせた。
もし、真理亜以外の人達も笑顔にすることが出来たなら……。
こんな時代でも、みんなに生きる希望を与えることが出来るのではないだろうか。と俺は思った。
「お兄ちゃん?」
真理亜の頭を撫でながら覚悟を決める。
——やってやる。
影井に言われたようにやるべきことを理解し、俺は立ち上がった。
次回より、第三章の始まりです。
今後ともよろしくお願い致します。




