仲間 2−6
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「誰か助けてえええええ!」
追い詰められ、今まさに目の前の奴らに殺されかけたその時——、
「危ねえ!」
間一髪のところで女の子を抱え、攻撃を避けるように横へ飛んだ。
「大丈夫か?」
「うん……」
女の子は涙を流しながらも一度頷く。見たところ大きな外傷もないので命に別状はないだろう。
もし、あと少しでも飛び出すのが遅れていたら……。
考えるだけで胸がくるしくなる。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
一撃を避けただけで、脅威がまだ去ったわけではない。
奴らはすぐにこちらへと迫っている。俺と女の子を殺すために。
「くそッ……」
敵は七体。その全てが何度も目にしている堕人。奴らのなかでも最低ランク。
この数なら俺一人でも十分相手に出来る数だった。しかし、なかなか武器を解放することが出来ず、女の子を後ろで守りながら後退するのみ。
「お兄ちゃん……」
心配そうに俺の服を掴み、こちらを見つめてくる女の子。
「大丈夫、俺が守ってみせるから」
「うん……」
早く、早く武器を解放しないと……。
これでは女の子を助けるどころの話ではない。二人とも奴らに殺されてしまう。
それなのにどうして……。
迫る奴らに対して武器を解放することが出来なかった。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
「お兄ちゃん!」
「クッ!」
覆いかぶさるように女の子をかばう。せめて女の子だけでも助けるためにと。
だが、聞こえてきたのは奴らの唸り声だけで、悪魔のような手がこちらに届くことはない。
一体どうなって……。
恐る恐る顔を上げると、そこには予想だにしない光景が広がっていた。
「——たく、女の子を助ける策はあると言っただろうに」
「——なに情けない面してんだよ」
「——貴方は馬鹿なのかしら」
俺と女の子を囲むように目の前には水野や楪、相馬が武器を片手に立っていたのだ。
「みんな……」
「立て、すぐに引くぞ」
「水野隊長、こいつらはどうします?」
「構うな。それより女の子を避難させる方が最優先だ」
「分かりました」
「私が後方で奴らを牽制する。相馬、お前が先導して車まで戻れ、いいな?」
「了解。いくぞお前ら」
先ほどまで俺と同じように緊張していたはずの相馬だったが、今ではそんな様子を全く感じさせない。
「行くぞ!」
走り出す相馬。
「お兄ちゃん……」
不安げな表情を見せる女の子を抱きかかえ、俺は相馬と楪の後を追う。
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「影井先輩の姿が見えないようだけど」
「知るか。怖気付いて逃げたんじゃねえのか?」
走っている最中、前の二人が会話をしているようだがこちらまでは聞こえてこない。今は女の子を避難させることで頭がいっぱいになっていた。
「もうすぐ助かるからな」
「うん……」
女の子は落ちないよう俺の服をしっかりと握っている。
「くそ、前から来やがった」
相馬の言葉通り、前方から化物達が迫っていた。
「相馬君、どうする?」
平坦な口調で楪は答えるも、迫る奴らの群れに僅かながら動揺している様子。このままでは奴らの群れとぶつかってしまう。かといって方向転換した先にも奴らがいるので結果は変わらない。
「おい、相馬どうするんだよ」
今この状況で指示を下すのは相馬。
そのため俺と楪は戦う準備をしつつ、相馬の指示を待っているのだが、一向に行動を起こそうとはしない。
「早く指示を!」
「うるせえ! 誰のせいでこうなったと思ってやがる! お前は少し黙ってろ!」
初任務、初戦闘、決定権と、一度に全てが押し寄せてきたプレッシャーに、相馬は冷静な判断が出来ないでいた。
敵との距離は僅か数十メートル。
「おい、相馬!」
「……ッ、お前ら——」
「そのまま走れ!」
相馬がなにかを言いかけたところに、後方から水野がこちらに追いついてきた。そして、眼前の状況を確認してもなお、走り続けろといっている。
「相馬君」
後ろで走っている楪が確認するように相馬に語りかける。
「お前ら! このまま走り抜けるぞ!」
「「了解」」
奴らとの距離が僅か数メートルに差し掛かったその時、視界から消えるようにいきなり真横へと吹き飛んでいく。
「え……」
先頭を走っていた相馬から驚きの声が上がり、そのあとも次々と目の前の化物達が倒れていく。
これって……。
「影井だよ」
訳が分からず驚いていると、いつのまにか俺達に追いついた水野が遠くに見える建物を指差している。どうや
ら、あの場所から影井が奴らを狙撃していたようだ。
あんな遠くから……。
的確に奴らを狙撃していく。
「このまま一気に突っ走るぞ」
「「「了解!」」」
水野の掛け声の下、俺達は走り続け気がつく頃には車を置いた場所まで戻ることに成功した。




