仲間 2−3
※ここから『奴ら』の正体、裕太の戦いが始まります!!
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「なんでみんなを連れてこないんだよ! ここなら奴らも来ないんだろ!?」
「……」
「おい、聞いているのかよ!」
この地下で生活をしているのは組織の一員と、僅かな肉親、親戚のみ。
あの時一緒に避難をしていた青年や子供達を水野は地下へと連れてくることはしなかった。それに腹を立てた俺は、何度も水野に詰め寄り訳を問いただしたが、一向に答えようとはしなかった。
「おい! 本当に聞いているのか——」
「お前には奴らを全滅させる力があるのか?」
「え?」
気がつくと、水野は俺の胸ぐらを掴み、凄まじい剣幕でこちらを睨みつけていた。
「もう一度聞くぞ、お前に奴らを全滅させるだけの力があるのか!?」
「そ、それは……」
「ないだろ!? いいか、ここにはなあ、まだ地上の人間全員避難させるスペースがないんだよ!」
「でも!?」
「もし地上の人間達が消えたら奴らはどうする? 奴らはきっとこのアジトを狙ってくるだろう。その時、お前は全ての人間を守りながら戦えると!? 自分には奴らと戦える力があると!? 確かに奴らに挑んでいった勇気は認めてやる。だけどな、お前はまだ弱い、人間は弱すぎるんだ。知ってのるか? 私達がお前を助けるために殺した化物には上の個体がいるんだよ」
「上の個体……」
『おぉ、そっちになにかいたのかー』
俺はそいつらを知っている。きっと海斗を殺した奴のことだろう。
「その反応、知っているようだな。あんな奴らが一斉にここを攻めてきたら終わりだ。奴らは次元が違いすぎる。戦えば多くの犠牲を生む」
「じゃあ奴らに殺されていく人達を見過ごせって言ってんのかよ!? そんなの人殺しと同じだ! お前は人殺しだ!」
「お前、水野隊長に!」
さすがに我慢出来なくなった隊員の一人が俺達の下に駆け寄ろうとするも、それを水野が一喝して黙らせる。
「ああ、私は人殺しだよ! 多くの人間を見捨ててきた。この手で助けられたかもしれない命に目を瞑ってきた。私は……」
この時初めて水野が涙を流す姿をみた。
そして、それ以降俺達はこの話をすることは二度となかったのだ。
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「俺の方こそすみませんでした……」
水野に対して敬語を使うことは滅多にないのだが、この時ばかりは目の前にいる人を一上司、一大人として、自分の行いを反省するように頭を下げた。
「今なら隊長の気持ちがよく分かります……」
「一ノ瀬……」
全てを守りたくてもそれが叶わない。あの時水野がどんな思いで言葉を紡いでいたのか、どんな思いで俺の言葉を受け入れていたのか、それを理解するのに大分時間がかかってしまった。
だが、今は違う。
俺は頭を上げ、水野の目をまっすぐ見て答えた。
「——これからは、隊長でも助けることの出来ない人達を俺が助けます。この手で守ってみせます。そして、必ずこの手で奴らを倒します」
と、拳を強く握りしめて俺は答えた。
「ふん、生意気な」
水野は鼻で笑いながら優しい手つきで俺の頭を一二回ほど叩き、今きた通路を戻っていく。本当に労いの言葉だけを伝えにきたようだ。
「あ、そうだ」
呆れている俺に、水野はまだ言い残したことがあると言いその場に立ち止まる。
「なんですかー?」
「期待しているよ、一ノ瀬」
最後にそう言い残し去って行く水野。俺はその大きな背中に——、
「任せてください」
一言答えて、あいつらがいる部屋へと戻る。そして、いよいよ初任務が始まろうとしていた。




