決意 1−10
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「前野さんを離しやがれ!」
脱出した場所から再びなかへと飛び込み、今も前野に群がる奴の後頭部目がけて鉄パイプを振り下ろす。
「ゆ、ゆうたくん……」
裕太が戻ってきてしまったことに驚きの声を上げる前野。その声は弱々しく、辛うじて息をしているといった危険な状態だった。
早く、早く助けないと!
続けざまに次をお見舞いしようとしたのだが、奴が振り向いた際、手の甲がみぞおちへ直撃してしまった。
「ガハッ!」
そのまま後ろに吹っ飛び、壁に背中を強打。
「クッ……」
すぐにでも立ち上がろうとするが、痛みで体のいうことがきかない。
「ゆうたくん……、はやくにげて……」
必死の叫びも今の俺には届いていない。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
前野を襲っていた数体が標的をこちらに変え近づいてくる。
動け! 動けよ!
しかし、思いとはうらはらに、奴らがすぐ近くまで迫っているというのに一歩も動けなかった。
「ゆうたくん……」
前野が俺の名前を呼ぶが、彼女も既に起き上がることすら出来ない。
まさに絶対絶命の状況。
やっと奴らと戦う決心がついたところなのに……、ここで終わりなのかよ……。
迫る奴らに全てを諦めかけ目を閉じたその時、連続した銃声と共になにかが倒れる音が耳に入ってくる。
「……え?」
恐る恐る目を開けると、今にも俺を殺そうとしていた奴らが目の前で倒れていたのだ。
一体なにが……。
突然の出来事に驚愕していると、裏口の方から声が聞こえてきた。
「生存者は二名! 岩城、宍戸、矢野は引き続き敵殲滅を! 牧江は大至急重症者の手当
だ!」
「「「「了解!」」」」
最後に入ってきた女性の勇ましい掛け声と共に、残りの人達も指示通りの行動をとる。
なんだよこれ……。
「おうらッ!」
「死にやがれ!」
大きなハンマーや斧を持った男達が次々と奴らを殺していく。
「大丈夫か?」
目の前で行われている光景に、ただ口を開けて眺めていると、指示を飛ばしていた女性が俺の下まで歩み寄ってきた。そして、はめていた手袋を外し、俺の頭に優しく触れる。
「——もう大丈夫。頑張ったな、あとは私達に任せろ」
俺は水野薫と名乗る女性、『最果ての地』なる組織に命を助けられたのだ。
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「水野隊長、あの女性の方は……」
「そうか……」
あれから目の前のことが早送りのように過ぎ去っていき、奴らは一瞬にして始末された。たった五人の集団に殺されたのだ。
俺は未だになにが起こったのか理解出来ていない。ただ、これだけははっきりと言える、
この人達についていけば……。
「少年、この先に避難所が——」
「俺を仲間に入れろ!」
水野の言葉を遮り俺の思いをぶつけた。
「はあ?」
当然、いきなりの発言に驚いた顔をする水野だったが、俺の嘘のない表情を伺い、すぐに態度を改める。先ほど俺を助けに来てくれた時のような真剣な表情に。
「仲間に入れて欲しいと?」
「ああ、俺には奴らと戦う力が必要なんだ」
「少年は何故力を求める?」
「それは——」
『誰かあああ!』
『助けてくれええええ!』
『くそ、俺達のせいだ……』
『絶対に生きて!』
『——生きろ』
目を閉じると、あの時助けることが出来なかった人達の、悲鳴や叫びが脳裏を過る。
もう、こんな思いはこりごりだ……。
「少年、人の話を聞いて——」
「——奴らを倒し、多くの人を守るためだ」
まごうことなき瞳で見つめながら、俺は水野の問いに答えた。
「——少年、名前は?」
「一ノ瀬裕太だ」
「そうか」
水野は一拍おいたあと、俺に手を差し出し、
「——ついてこい一ノ瀬、お前に力を与えてやる」
そして、俺は奴らを殺す力を手にいれるために『最果ての地』へ入ることを決意したのだ。
今回で、『第1章 決意』が終わります。
次回からは第2章、『奴ら』の正体、裕太の戦いが始まります!!
是非とも楽しみにしていてください!!




