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 日付が変わって地に足を着けたまま迎えた新年の明治神宮は果てしない混み具合だった。

「もはや帰りたい。」

「やー待って梨花。きちんと祈願しなきゃ!」

私の絶望にも似た呟きに茉莉は過剰反応を示す。甘酒のアルコール分が高かったのかもしれない。この娘は甘酒でも酔うのだったろうか。

「はいはい、ちゃんとお参りするわよー。ね、望?」

「うん。するから大丈夫だよー。」

ふわふわ酔っ払った茉莉は握るのも掴むのも丁度いいのか望の腕を掴んでいる。そのため真新しい濃紺のトレンチコートには不自然なしわが寄ることになってしまった。

「今年は何お願いしようかな。梨花、決まってる?」

「一応ね❤」

「あ、俺はねー。」

「望はお金持ちになれますよーに!でしょ?」

上目遣いで至近距離から見つめる茉莉に望がどきどきしているのがよくわかる。本当に分かりやすいのだが、茉莉には伝わっていない。

「あ、当たり??ふっふーん、やっぱりね!じゃあ梨花は・・・彼氏と別れませんように、とか?」

「ええっ??別れるときは私が別れたい時だからわざわざお願いしないわよ。」

思わず本音が漏れた。いつだって私はずっとこの人と歩みたいと心の底から願ってはいない。私がずっと一緒にいたいのは―

 隣りで茉莉が素っ頓狂な声をあげる。

「そうなの!?」

「なんか梨花ちゃんっぽいね。」

「望、それ・・・なんか馬鹿にしてるわよね??」

「いや、そんなことは。」

「梨花モテモテ~❤ああー私たちも頑張って相手見つけなきゃ。ね、望。」

「へ、あ、ああ。」

望は少し悲しげな表情を一瞬だけ浮かべたが、次の瞬間には笑顔で茉莉に返す。

「ま、俺が本気出せば茉莉が1人見つける間に5人は口説けるね。」

「ちゃらい!望ちゃらすぎ!!」

「節操無いわね!」

「冗談じゃんかー。タッグ組んでいじめるなよ!!神様、どーか今年は2人にいじめられないようにしてください。」

本殿から遠い列の中で望は柏手を打った。私と茉莉はまたけらけらと笑った。

 望もきっと複雑。私はもっと複雑??



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