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年の瀬も迫り、官庁が御用納めを済ませて数日、明日は大みそかである。彼が帰省したために電話とラインしか交わさないで済む。やはり私は彼のことをそこまで好きではないのだなと思う。アクセサリーをしまった棚に無造作に納められたティファニーのネックレス。そんなに好みではなかったためにあまりつけることはないだろう(デート時は流石に着ける、大人の配慮である)。
「ふーっ。」
大掃除も佳境を迎え、残すは全体の掃除機がけとコロコロによる仕上げのみである。掃除機の音を響かせる午前十時、昨夜から始めておいて良かったと心底思う。ごみもまとめて来年明けてから一番の最初のごみ回収の日に年始のごみと合わせて集積所にだそう。
「ふっふふっふんふふふーん。」
よく分からない鼻歌も掃除機の音と一緒に奏でる。
曇り空の寒い日にほんのり汗をかいて掃除を終えた私はベッドに倒れ込むようにして眠りに落ちた。なにせ昨日からずっと掃除をしていたのだから疲労もピークであったし、決して片付けながらロードオブザリングに夢中になっていたわけではない。ちゃんと録画もしたのだ。
ぶぶぶぶぶぶぶぶ
しつこい音が遠くから遠くから聞こえる。ああ、うるさい。
「もーいいかげんにしてよ。」
スマホを見ると茉莉と望と作ったライングループでの2人のやり取りだった。個人で連絡しなさいよ!と内心逆切れ気味の私は腹いせついでに冷凍庫にあった5分チンすると食べられるパスタをレンジに無造作にいれ温めを開始する。その間に2人とのラインを確認する。
「明日の明後日の?初詣どこに行く?」
「原宿か浅草はどう?」
「いいかも、東京大神宮もあるよ!」
「東京大神宮わら 初詣のあとってなんかする?」
「どうしよっか。梨花は意見ある―??」
「誰かの家で飲もーぜ!」
「だそうでーす! どーしよーね。私は甘酒飲みたい。」
「神社で飲めると思う!きっとタダw」
「やたー❤」
内容は大みそかから元旦にかけての毎年恒例の初詣についての調整のようである。この会話の間にも2人はスタンプをバンバン押していて、通知がどんどん多くなっていたようだ。
時計を見るともう3時になっていて、中途半端な時間のお昼となった。私はラインをぽいと投下する。
「私は明治神宮希望かな。渋谷ならいろいろやっていると思うから。寒かったら茉莉の家に避難するとかどう?」
「うちはシェルターか!笑」
「シェルターwww」
「駄目??」
「いーよ!掃除したもん。望、美味しいチョコ買ってきてね。」
「ニキビできるぞ~。」
望のツッコミに怒ったキャラクターのスタンプを茉莉が送る。私も乗っかって怒りのスタンプをぽんと送信する。
「2人に怒られた!」
望がしょぼんとしたスタンプで返信してくる。
冷凍のパスタは冷凍ということを考えれば十分に美味しくハイクオリティで、私は一緒にプリンまでぺろりと平らげた。




