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「・・・・私、決めた。」

「お。」

夜闇に二人の期待が盛り上がる。月は空にあり、星も空にあり、風は大気を巡っている。混ざり合って世界が出来る。空と海の群青色が混じり合うみたいに。決して、同化することはない。だから。

「決めました。二人と、一緒に暮らしま・・・。」

私はそこでテレビの安いバラエティー番組みたいにコマーシャルを間に入れてしまう程のためを作って茶化すように言おうとする。シリアスになっていくのが少し怖かったから。

「す?」

「せん。」

「ええーなんでよ、なんで。」

「もしかして俺らに、気、遣ってる?そんなの全然いらないのに。」

「そーだよ、ウェルカムだよー。」

二人が右側から私も一緒にと本当に思って言ってくれている声がかけられる。私は小さく左右に首を振る。私の様子に二人が真剣な面持ちに変わるのがわかった。ちゃんと伝えた方がいいのかもしれないと思う。ここから少しずつ私達の見つめていく行き先の角度が変わりだすことがもう今の私にはわかってしまっていた。

「ううん。一緒も楽しいけど、私達・・・ずっと一緒じゃダメなのよ。」

「それは・・・どうして?」

「だって、えっと、ほら。・・・いき遅れちゃいそうじゃない?」

「そんなこと・・・ないって。」

「そうだよ、梨花だもん。」

「冗談いいから。まじで。」

「ん、そだね。私、二人と一生、一緒にいたい。だから。」

ずっと隣りにいたいから、一体になりそうな状況は避けたかった。一体に近付くほど私達は融合しきれないなにかによってきっと苦しんでしまう。そう思うから、私は二人とは結びついてがんじがらめにはなれない。隣りで、手を伸ばせば繋げるぐらいの距離感で、ずっと一生を生きていきたいと、そう思う。

「それなら・・・それこそ一緒にいようよ。」

「ダーメ。怖いもん、近くにいて・・・・近くにいれなくなるの。怖い。だって、二人のこと大切だもの。失いたくないの。」

「そんなの、同じだよ。梨花のこと大事だよ、居なくなって欲しくない。だから、一緒にいたいよ。」

望が茉莉の肩を抱いて私を見つめて頷く。一緒にいたい、ずうっと。三人が三人で、ずっと。側に、傍で。

「だから、こそ・・・なの。それにほら、それに二人が喧嘩したらどうするの?別々に住んでいれば、私が一人ずつ私の家で迎えてあげる。一緒は、難しいけれど、すぐ近くにいるわ。そうしたら側にいて、毎日だって会えるでしょう?」

「梨花ちゃん。」

「うん。わかったよ、梨花。ご近所さんしようね。」

「じゃあ、ちょっとずつ考えますか!まずはー・・・・」

望が明るい声を出して、別の話題を話し始める。

こうやってバランスをとって私は私で、彼は彼で、彼女は彼女で、二人の仲が変わっても、三人の関係性は変わらない。もし変わる日が来ても、それは新しい三人の始まりであるだけだ。


 いつも共にあることは側にいることに直結はしない。私は私として二人は二人として、個人として変わったり戻ったり、こじれたり、そうやって大人になっていく。もう年齢的にはちゃんと大人ではあるのだけれど、本当の意味で大人に変わっていく。大人の形も私と茉莉と望では全く違っていて、違うからこそ無限の可能性が広がっていくのだと信じる。

 空は海と混ざり、空気は地上と空を混ぜ、波が地上と海を繋ぐ。波間にぽかんと浮かぶオレンジ。幼い日に読んだ宮沢賢治の『やまなし』に出てくるような甘美な果物。空に輝く太陽のオレンジ。


 オレンジ。それは、憧憬。





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