10
お参りはなんとか無事に済ますことができ、私たちは新年を迎えたばかりの街を静かに歩いている。少し遠くの渋谷駅の方では若者たちの騒ぐ声が聞こえる。吐き出す息は白くほわほわと闇夜に昇っては霧のように散っていく。
茉莉の暮らす部屋へ向かう途中のコンビニでお酒とおつまみ、チョコレートやポテトチップスなどのお菓子類を購入する。それぞれが好きなものをカゴにいれ、望がまとめて会計を済ますのを入口そばにある雑誌の占い特集をきゃっきゃ眺めながら待つ。
「お待たせ。」
「「はーい。」」
コンビニ独特のドアの開閉音に見送られた私たちは再びきんと冷えた空気に飲みこまれた。
「寒いね。」
「うん、さむー!!」
凍える私たちの隣りで望は『男の肉まん』というネーミングの特大サイズの肉まんをはふはふと頬張る。
「あつ、旨!」
「温かそー。」
茉莉はふざけて望の肉まんに手をかざして暖をとるまねをする。
「一口食う?」
「あ、欲しい欲しい。」
差し出された特大の肉まん。茉莉は躊躇することもなく望が口を付けた辺りを望の半分以下のサイズの一口分を頬張った。しばらく口の中ではふはふさせて食べきると望の真似をして
「あつ、うま!」
と言って笑った。私と望もつられて笑い、望ではなく茉莉が私に肉まんを勧めてくれる。
「梨花も、はい。」
「あはは、猫舌なんだけど食べれるかしら?」
「んー・・・難しいかも。」
「おーい、俺の肉まんなんですけどー。」
ぶーたれる望は茉莉から肉まんを取り返す。小さな茉莉の一口分の歯型を飲みこむ大きな一口で望は肉まんを頬張った。
私はホッカイロ代りに購入したホットのココアの缶をあけ、ごくんと一口分飲んだ。冷えた手に熱を奪われつつあったココアは少し熱いくらいの丁度いい温度で、スチール缶の硬くて冷たさを感じさせる手触りとは似つかわしくないような『ぬくみ』を私の中に生んだ。
「あまい・・・。」




