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不器用な親馬鹿

サッちゃんと無事使命を果たし、お家に帰って来ました。

帰る途中、魔物相手にキャッキャッ、ウフフしながら殺し、友達らしく追いかけっこして遊びました。

友達と遊ぶのは楽しいのです。


なのに、帰りを出迎えたイッちゃんに仁王立ちで怒鳴られました。


「僕は確かに卵を買って来いと頼んだよ。この際、大量の卵も渡した金額以上の食料にも目を瞑る。嬢ちゃんだし、ただのお使いで終わるはずないのは予想範囲内だったさ……………………でもさ……………」


イッちゃんがサッちゃんをズバッと指差します。

人を指差してはいけいのですよ。


「だからって何で親父を買ってくるんだよっ!!返品してきなさいっ!!」


サッちゃんはイッちゃんのお父さんでした。じゃんちゃん♪







そんな感動の親子の対面を他所にリンはさっそくオヤツを頬張っていた。


「フアフアなのです~」


オヤツのパンケーキにはリンが大量購入した卵が早速使用され、その上にはリンの潰した林檎がコンポートへと姿を変えた。


「旦那様もアーンです」

「んっ」


ただでさえリン好みに作られた甘甘なパンケーキをさらに甘くするように、リンが歪にナイフとフォークで切り分けたパンケーキをアレスの口許へと運ぶ。

それを恥ずかしがりもせず口をあけ咀嚼するアレスにご満悦のリン。


甘いお菓子に甘い空気。

もう、二人の世界。

庭のテラスはデロデロの甘甘で吐き気さえするほどだ。


そんな隔絶された二人の世界の目の前では、先程からBGM の様に剣の甲高い音が鳴り響く。


「ちょっ!おわっ!」

「ふむ。さすが我が息子よ。これも避けるか……ならっ」


サイの剣を右へ左へと避けるイチ。

言葉にするのは簡単だが、その剣捌きは残像さえ見えるほどのスピードがあり、イチが一太刀避ける度にそのスピードを停止せず、避けられた反動をそのまま利用しさらに加速する。


「これにはどうする!」


サイの剣が稲妻を纏いながら、とらえたイチの首筋を狙い突かれる。

剣先からバチバチと稲妻を走らせながら(イカズチ)が伸びる。

剣の射程距離を越えた魔法剣での攻撃にイチは瞠目し避けること出来なかった…………ことはなく。

素早い身のこなしで飾り布を広げ雷を物ともせず受け止め、そのまま上体を剣に添うよう動き、布を剣に巻き付けながら剣を引っ張り、剣を持つサイの手首を蹴り上げるも、サイは剣その物を手放し、イチの足を掴み拳を鳩尾狙いで叩き込むが、その拳はイチの手によって阻まれた。


「っ!このっ、ふざけんなよ!クソ親父!!魔法剣なんか使いやがって!テメェもくらいやがれっ!!」


拳を受けた手とは別の手で、布を巻き付けた剣を引き寄せると再び剣は雷を纏い、そのままサイ目掛けて矢のごとく飛んでいった。

咄嗟にイチの足を離し、剣の刃に当たらぬ様に回避しながら柄だけを掴むも、雷は柄まで纏っている。常人ならそれだけで焼き焦げていたであろうが、サイは何も問題なく平然と掴み、剣を鞘に納めた。


「むっ、手が痺れたな。ちょっとピリッとするぞ。老体を労らぬとはこの親不孝者めが」

「喧しいわっ!数年ぶりに会った息子に初っぱなから魔法剣で攻撃する親が何処にいるんだよ!?」

「此処に居るではないか。立派で偉大なる父が」

「どうしてそうなるのっ!?何処が立派で偉大だよ!頭の病気をいい加減に治せやっ!!」


「親子喧嘩なのです?」

「あれで可愛がってるつもりなんだから馬鹿だよね」


イチと久し振りに会い、嬉しいがどう対応していいか分からず、まるで思春期の娘に対してどうすればいいのかと悩む父のような葛藤の末、まずは純粋に再会を喜ぼうと重い愛情を剣にのせる親が何処に居るだろうか。

だから息子(イチ)に嫌がれるのに、それでしか愛情表現が出来ないのだから救いようもない。


「私も遊びたいのです」

「あとでね。今は親子水入らずの邪魔は頂けないよ。それより初めてのお使いはどうだったの?」

「イイ女にまた一歩近付きました」


リンは『悪女の条件』と表紙に書かれた本を取り出し、アレスに見せる。


「何これ?」

「これは凄いのですよ。これで下僕も卵もサッちゃんも手に入れたのです。まさに聖書(バイブル)なのです」

「へぇ。じゃあ今日は俺に何かそれを参考にしてくれるのかい?」

「はいなのです。夜を楽しみに待つのですよ。男は焦らすのが良いと書かれていたのです」

「そう、今から夜が楽しみだよ。期待してる」

「はいです。うっふーんのあっはーん、なのです」


庭で殺伐とした親子の戯れを見ながら、夜を楽しみに待つアレスであった。




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