子育ては大変8
*女=マデリーンの愛犬(雌)
何ですか!何なんですか!あの女は!!
旦那様にベタベタとっ!
弱い女の分際でっ!
旦那様も旦那様です!
私が居るのに、あんな女なんかにデレデレしてっ!
旦那様は強いから女が寄って来るのは仕方がないのです。
でも、でもあの女は駄目なのですよ!
「旦那様の節操なしです!」
私は怒ったのです!
旦那様は反省しないと駄目です。
あの女との浮気は許しません!
謝るまで許さないのです。
「シュークも一緒に行くのですよ。浮気性の旦那様が居るお家にいたら教育に良くないのです。シュークはあんな女に騙されてはいけませんよ?」
部屋にある兎リュックに哺乳瓶とオムツ、お菓子を入れます。
リュックを背負い兎財布を首にかけて、シュークを抱えたら準備万端です。
窓から家の外に飛び降り、柵を越え、目指すは実家です。
「マル爺のとこに行くのです。メェちゃんのお家ですよ?メェちゃんのお母さんのピーも居ますからシュークの面倒も見れます。何よりシェリーが居るのです。あの女とシェリーを比べれば、シュークだって騙されないのです。シェリーは強いし火も出せますから、シュークの教育には良いのです。シュークだけは節操なしの浮気男にはなっては駄目です。目を養って女を見るのですよ?旦那様の様になっては駄目です!嫁を蔑ろするなど絶対駄目です!」
「あいっ」
森の中を走ります。
魔物は邪魔しに来ません。
私がボスなので当たり前です。
ボスに逆らったら殺すのです。
でも今は無性にイライラするので殺したいのです。
強い魔物は居ませんかね?
弱い魔物は要りません。遊んでもつまらないのです。
まったく最近の魔物は柔な奴しか居ませんね。なってないのですよ。
マル爺のお家に行ったら私もシェリーと遊ぶのです。
「………………マル爺のお家?」
リンは爆走していた足を車の急ブレーキの様に止まった。
「うっ?」
「マル爺のお家は何処ですか?」
「あうー」
「私、マル爺のお家への行き方知らないのです」
マル爺のお家には旦那様の魔力移動で行っていたので道が分からないのです。
匂いや気配を辿るには遠過ぎるのです。
どうしましょう?
メェちゃんが来るまでお家で待つのは嫌です。
お家にはあの女が居ますし、居なくても匂いが残っているのです。何より旦那様が居ます。私はまだ旦那様の浮気を許してないのです。
「…………予定変更です。シューク、町に行きますよ」
町に行って、誰かにマル爺のお家を聞けばいいのです。ついでにピンクのお店と花火屋とボール屋さんでシュークのボールを買ってあげましょう。
お金の遣い方はイッちゃんが教えてくれたから大丈夫なのです。
「シュークも '公園でびゅー' をしないといけませんね。絵本に書いてありました。子供同士は遊んで、親同士は子育ての愚痴を言うのでしたかね?シュークは私の飼っている赤ちゃんなのですから、そこらの子供に殺られては駄目ですよ?まずは公園のボスに成るのです。負けは許さないのです」
「あいっ」
「良いお返事です。では町に行って初めての'公園でびゅー'なのです」
町は人間が多い所なのです。
煩い所に町があります。
町なら行けるのです。
リンは目的地を目指してまたもや爆走するのであった。
その頃、アレストファ公爵家では…………
「帰りなよ」
アレスがマデリーンを追い返していた。
「今日はお泊まりしようと思ってましたのに……」
「帰れ」
「そんなに婚約者様が良いのですの?私のキャサリン(犬)に嫉妬されてましたが他はよろしいのでしょう?浮気は婚約者公認ですわ」
「男を抱く趣味はないよ。それに君は俺ではなく、俺に付いてる精霊が目的でしょ?紛らわしい言い方はやめなよ」
「ああん、そんな冷たい。公爵様(の精霊)はいつも私に冷たいですわ。でもそんな視線も痺れる~」
「早く帰りなよ。シュークの素性も解ったし、君には用はない。その犬も二度と連れて来ないでよね。連れて来たら今後一切、精霊術師はここには入れないから」
「それは………うっ、分かりましたわ。公爵様(の精霊)をキャサリンで懐柔しよう考えた私が浅かったですわ。申し訳ございません」
「俺は犬より猫派だよ。まぁ、あの子より可愛い猫はいないけどね」
「誤算でしたわ。公爵様(の精霊)は小動物なら全てお好きだと思ってましたのに……」
「嫌いではないよ。だからリンに浮気者扱いされたしね………」
「人間はよろしいのに、キャサリンは駄目なのですね。寛大なのか心が狭いのか分かりませんわ………公爵様、ちゃんと愛し合っておりますの?」
「俺はね。リンはまだ刷り込み中だから恋愛感情事態がまだ分かってないよ。まぁ、時間の問題だね」
「悪どいですわ………」
「いいから、帰って」
「ええ、原因の私が言うのも何ですが、早く仲直りして下さいませ」
マデリーンは愛犬を抱えると部屋から出ようとして、ドア付近に居たイチを見て立ち止まった。
「あら、貴方にも精霊の加護がありますわ。珍しいですわね。四大精霊の加護なんて………ああ、そうでしたわ。リン様には加護がありませんが、あれは精霊同士が誰が加護に付くかで牽制してるからですわ。特定の加護はありませんが大多数の精霊はリン様をその都度護って下さいますわ。羨ましくらいに精霊達に愛されてますもの」
爆弾を落とすだけ落として、マデリーンはアレストファ公爵家から去って行った。
「えっ、僕にも精霊の加護が付いてたの?………いや、じゃなくて嬢ちゃんは!?」
「………邸にはいないみたいだね」
魔力探査するも、すでに邸ではなく森で反応が見られた。
「ここの掃除して。犬の毛1本たりとも見逃さないでね。イチは俺の着替えを用意しておいて」
「えっ、兄さん何処に………」
てっきりすぐにでもリンを追いかけると思っていたイチはアレスの着替えの準備の要求に首を傾げる。
「風呂」
一言だけ答えると部屋から出ていった。
「………なんで風呂?」
「お嬢様に不潔扱いされてましたから仕方がありませんわ」
「魔力で全身洗浄すればいいだろ?」
「それでお嬢に触ろうとして拒否られたろ」
「アレス様はショックだったでしょうな……」
「初の夫婦喧嘩だからね」
「一方的ですがね」
「喧嘩するほど仲が良いって言うから大丈夫だろ」
イチだけを残して後のメンバーは掃除をやり始めた。
何だろう。
突っ込みが追い付かない。
どうしてシュークの素性調査から兄さんの浮気問題が勃発した?
相手は犬だし、浮気も人間と猫なら許すらしいし、実家は結局何処なんだっ!?
兄さんも小動物には優しいんだな。僕には冷たいのに………しかも刷り込みってなんだっ!?嬢ちゃんは鳥の雛じゃないんだからっ!
何か僕にも精霊の加護が付いてたみたいだし、その辺はマデリーンさんについでの様に言われたし……
僕の扱いが不憫過ぎないだろうか………
「………………着替え持って行くか……」
イチは考えるのを放棄した。




