小悪魔ケーキ
お風呂の試練を乗り越え、旦那様にいつの間にか用意されていた服に着替えさせられました。
青いヒラヒラの上に白いヒラヒラ(エプロンドレス)を重ねた服です。
寒くないので白いのだけでいいと言ったら、旦那様から駄目だしがでました。
何やらブツブツと聞こえずらい声で
「……裸エプロン」
と、呟いてました。
慣れない服は重いし邪魔です。
特に靴下と靴は窮屈で今にも脱ぎたいです。
でも、我慢したら旦那様の御飯も分けてくれるそうなので頑張ります。
御飯を食べる場所までは旦那様の腕にしがみつきながら、二足歩行の練習です。
人間は手を使わずに歩きます。
その方が速く走れるそうです。
御飯場所に着く頃には歩く感覚がつかめ、一人でも歩けるようになりましたが、猫の時のが速いです。
人間は本当に不便な生き物です。
でも、御飯は最高でした。
椅子に座る旦那様の膝の間に座り、テーブルに置かれた沢山の皿の中から、魚の匂いがする 'むにえる' を旦那様が器用に銀の棒(ナイフ、フォーク)を使い一口サイズに切って食べさせてくれました。
「っっっっ!美味しいです!もっと下さい!」
「美味しくて良かったよ。もっと食べたいなら、これ持ってね」
銀の棒を左右の手に持たされ、旦那様がその上から手を添えて教えてくれますが、やはり人間は皿から直接、口につけて食べないようです。
面倒ですが、今は人間なのでお腹の為にも頑張ります。
それなのに魚だけでなく、野菜も食べさせようとする旦那様、口を開けないと魚も食べさせないと脅してきます。
渋々 'さらだ' を食べました。
苦いです。
葉っぱは猫草と似ているからいいのですが、 'にんじん' 'ぴーまん' は嫌いです。
でも 'きゅうり' は好きです。
野菜は葉っぱと'きゅうり'だけでいいと思いました。
どうにか、 'さらだ' を完食したら、旦那様が白いフワフワに赤い果物がのったケーキをくれました。
「ご褒美だよ」
「っっっっ!!!」
甘くて噛まなくても溶ける、白いフワフワ(生クリーム)赤い果物(苺)は甘いけどサッパリしていて、白色に隠れた黄色い(スポンジ)のはしっとりしていて、ほのかに甘い。
「人間になって良かったです」
母の言っていた
「週に一度の自分へのご褒美」
の、意味が分かりました。
ねだってもくれない訳です。
これは、譲れない美味しさなのです。
ケーキとは偉大です。
ケーキを作った人間は凄いです。
人間が面倒な生き方をするのが分かりました。
人間はケーキを食べる為の生き物なんですね!
ケーキ、恐ろしい奴です………
でも甘い奴で美味しいので許します。
「……また、変なこと考えてるでしょ、君……」
私は変ではないのです!
失礼ですよ、旦那様!
でも今の私は、ウハウハのアマアマなので許します。
旦那様に返答せず、黙々とケーキを食べた私は、お風呂の疲れとケーキを食べきった満腹感を味わいそのまま寝てしまいました。