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子育ては大変6

イチは赤ん坊を強奪するとリンとメェに説教をしていた。


「赤ちゃんは大切に扱わないと怪我するだろ?遊ぶなら優しく、優しく扱わないと駄目だから。ましてボール扱いなんて言語道断!ボールはどうした?ボールで遊んであげろよな。ちなみに投げるのはシュークには早いから転がして遊んでやれ」


育児放棄したイッちゃんに怒られる謂れはないのです。


「キャッチボール出来ないのが悪いのですよ。シュークがボールの気持ちにならないと駄目なのです」


ボールになればキャッチボールが出来る様になるのです。だからシュークを投げて遊んであげてたのにイッちゃんに怒られました。


理不尽です。


「シュークはまだ赤ちゃんだから、いくらボールの気持ちになっても投げられないのっ」

「英才教育は小さいうちにやるのです。この経験がいつの日か必ずキャッチボールに役立つのですよ」


「違う、英才教育違うからっ。これは家庭内暴力!第一、キャッチボールにその経験はいらんっ。トラウマになるだけだわっ!」

「じゃあ躾です」


「尚更悪いわっ!」

「…………ああ言えば、こう言うのです」


「僕の台詞だからっ!!」


これが姑と言うものなのですね。


嫁いびりです。


「リン」


アレスがゆったりとした足取りで庭にやって来た。

ちなみにイチ以外の使用人達は己の仕事に戻っている。


「兄さんからも何か言ってやってっ」


「イチで遊ばないの。イチもまだ着ぐるみ作り終わってないでしょ?早く作りなよ」


アレスの口からはリンへのお説教ではなく、イチへの着ぐるみ製作の催促であった。


「でっ、じゃないから!とっ、でしょうがっ!それに猫の着ぐるみは昨日に渡しただろ!!」


「リンのはね。シュークのがないでしょ?シュークのは茶虎にしてよ」


「なんなのっ!?それより問題はシュークの遊び方だからっ」


「シュークも喜んでいるから問題ないでしょ」


「問題だらけだわっ!」


シュークを抱えるイチにアレスが近寄ると、シュークがアレスに両手をパタパタしながら手を伸ばした。


「あうー」

「ほらっ、抱っこしろだとよ」


イチはアレスにシュークを差し出すが、アレスは受け取らずにリンを抱えた。


「???」


「嬢ちゃんじゃなくてシュークを抱っこしろやっ!」

「残念。両手が塞がってるよ」


「塞いだんだろうがっ!」


「旦那様はシュークで遊ばないですか?」


「だからっ、とっ、でしょうがっ!とっ!!」


「今日はリンも俺も休み。メェは翁の所に帰りなよ」

「キュー」


メェは一声鳴くと空へと飛びだって行った。


「メェちゃん、バイバイでーす」

「あうあー」


「さて、リンは一緒に部屋に戻るよ」

「シュークは?」


「シュークはイチが面倒みるよ」


「えっ!」


「俺達は今から育児休暇だから」


「育児休暇は仕事を休んで育児する事だからっ!育児を休む事じゃないからなっ!!それに兄さんはシュークの面倒見てないだろっ」


そう、リンとアレスはシュークの面倒を見ている様で見ていなかった。


シュークの面倒は使用人がほぼ見ていた。


オムツ交換はマァムが(リンは汚れたオムツを袋に入れるだけ)、ミルクは料理長が(リンは飲ませるだけ)、ゲップは医者が(リンはまだ力加減が出来ない)、服の着替えはイチが(リンは脱がすだけ)、風呂へは庭師が(リンにやらすには危険)、寝かせるのは執事が(赤ちゃん部屋=執事部屋)、遊ぶのはリン。アレスは基本何もしなかった。


なのに、シュークは面倒を見ている使用人達よりリンやアレスになついていた。


嬢ちゃんはわかる。

嬢ちゃんが拾って来たのだから。


でも何もしない兄さんに何故、なつく!?


今だってそうだ。

こんなに抱っこしてと両手をパタパタさせているのに、抱っこしない兄さんに未だに手を伸ばして催促している。


兄さんは僕にも冷たいが………


「シュークにも冷たい」


嬢ちゃんにはやたらとデロデロに甘いのにっ!


「旦那様はあったかいのですよ?」


イチはアレスの性格が。

リンはアレスの体温が。


二人が思う事は違った。


「はぁ、遊べばいいの?」


アレスはリンを片手で抱えると、イチの手からシュークの首根っこを掴む。


そして…………


「ギヤャャャャァァァァ!!!!」

「きゃはははは♪」


…………………シュークを投げた。


それはもう、思いっきり。


笑うシュークをイチが顔面崩壊で追い掛ける。


…………………………………


ダダダダダダダダダッ


「ハァハァハァハァ何やっとんじゃっ!!!!!」


無事シュークをキャッチしたイチがアレスに詰め寄る。


「何って、遊びでしょ?」

「赤ちゃんを投げる遊びがあるかっ!!」


「シュークは喜んでるよ?」

「私もグルグルは好きなのです」


「だからっ、アンタ等の遊び方が可笑しいのっ!」


「なら、イチが遊んであげなよ」

「お手本です」


「分かったよ。いいかっ!?まずはボールをだな……」


イチは胡座をかき、足の間にシュークを仰向けで寝かせると、ボールをシュークの前に転がす。


「「「………………」」」


コロコロコロ………


「「「………………」」」


コロコロコロ………


シュークはボールを目で追い掛けるも、笑ってはいなかった。


「イチ」

「イッちゃん」

「あぶっ」


イッちゃんの遊びはつまらないのです。


シュークも不満気です。


「…………どうするよ!?シュークがただの遊びに満足しなくなっただろっ!!」


イッちゃんが責任転嫁してきました。


面白くない遊びが悪いのですよ。


それからイチはシュークに、高い高いや、いないいないバァ、ガラガラなど試したがシュークがイチの遊びで笑う事はなかった。


初めての遊びがハード過ぎて、普通の赤ん坊なら喜ぶはずの遊びが、シュークはには物足りなくなってしまっていた。


そしてそんなイチはやはりアレスとリンに放置され二人は育児休暇(休憩)に入った。


ちなみにイチがシュークの笑った顔を見れたのは、アレス注文の茶虎猫着ぐるみを見せた時であった。




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