子育ては大変3
それはアレスがリンの私室へ訪れる前の一時であった。
赤ん坊は今だスヤスヤと寝息をたて、ベットに寝ていた。その傍らでは何やらゴソゴソと準備を始めるリン。
用意は整いました。
まずはトイレを設置します。
土の入った木箱を部屋の隅に置き、トイレは出来ました。スコップも準備してあります。
赤ちゃんが起きたらトイレの場所を教えてあげましょう。
次に腕輪です。
白金のシンプルな腕輪。
純金製より高価な腕輪には3カラットはあるダイヤモンドが一粒嵌め込まれていた。
リンは爪を伸ばして腕輪の表面に文字を刻んだ。
執事が見たら絶叫するであろうが、リンに装飾品の価値など分かる訳がなかった。
「し、ゅ、ー、く……………リームが書けなくなりました………まぁ、シュークでもいいのです」
初めて文字を書いた、しかもペンではなく爪で刻んだ文字は歪だ。一字一字が大きい為に文字は最後まで刻まれずに終わった。
リンは腕輪を持ち寝ている赤ん坊の首に嵌めた。
「シュークの首輪の完成です!」
赤ん坊はシュークリーム、否シュークと名付けられた。
腕輪に全ての文字が刻まれなくて良かったであろう。
リンのネーミングセンスはメェしかり、単純であり過ぎた。
語源は赤ん坊が初めて食べたのがシュークリームだったからである。
「うっ………うぁ~」
首に違和感を感じたのか、リンが声をあげたせいなのか赤ん坊は目覚めた。
「おはようなのです。ご飯食べますか?」
「うぁ」
「むっ、赤ちゃん語は分からないのですよ」
まだ喋れないのです。
赤ちゃんの口の中に指を入れて確めるが、吸われるだけで噛まれないのです。
歯もまだ、生えてません。
「んぅ、んぅ、んぅ」
「なかなか大きくなりませんね…………ご飯が足らないのかもです。ちょっと待つのです」
指を口から出して料理長から貰ったシュークリームを渡してから、グラスに入ったミルクを注射器で吸い込む。
吸い込むことは出来たが、注射器からポタポタとミルクが床やらベットに滴り落ちる。
「痛くないのですよ。ミルクなのです」
赤ん坊の口に注射器の先を入れて、一気にミルクを流し込む。
注射器が小さかったのが幸いだった。
注射が嫌いなリンが大きい注射器を貰うはずがない。
針がなく自分に使用する訳ではないが、注射器は注射器だ。
本当はスプーンにしようと考えたが、グラスに入ったミルクをスプーンで掬うのはリンには難しかった。
ストローも考えたが赤ん坊は吸うよりしゃぶると言った方が正しい為に候補から却下された。
柔らかい食べ物も料理長に確認しました。
カスタードクリームは無理ですが生クリームなら私でも作れそうなのです。
「早く大きくなるのです」
ミルクを何回かあげてから、イチに貰った布で赤ん坊を包もうと布団を捲ると、そこには世界地図と言う名のオネショでシーツが汚れていた。
「あーっ!汚れてます。ベットはトイレと違うのですよ!」
「うー」
リンは布で赤ん坊を包もうとしたが、これでは身動きが取れないと思い、マントの様に首に布を結んだ。
赤ん坊をトイレに運ぶ。
土の入った木箱=猫用トイレ
赤ん坊の排泄手段がオムツだと知らないし、オムツさえリンは知らなかった。
「いいですか、ここがトイレですよ。と、い、れ」
ガチャ
「「「「「……………………」」」」」
鍵を閉めたドアが勝手に開いたのです!
皆いるのです!
赤ちゃんを急いでベットに連れて行き、布団で隠しました。
「な、何も飼ってないのですよっ!」
「あぅあ~」
声をあげては駄目なのです!
バッチリ見られた赤ん坊を必死で隠そうとするリン。
赤ん坊より赤ん坊に猫の排泄の仕方を指導するリンに、将来を愁いるアレス。
魔物ではなく、赤ん坊だった事に驚くマァム。
その他は赤ん坊を飼っていたリンに驚くしかない。
ただ姿は布団で見えなくなったが、赤ん坊の声だけがやけに存在を主張していた。




