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オヤツの時間

今日から私がこの森のボスなのです。


馬がボスなのは認めないのですよ。


ボス狩りも終わりましたので、オヤツにします。


火に囲まれていますが跳び越えればいいのです。


それにしても、さっきから煩い女なのです。


リンが魔物を殺した事にも気付かず、女は白い塊を叩きつけていた。


「お前なんか産まれなきゃ良かったのよっ!この化物がっ!!死になさいよっ!!」


叩きつけられた事により、白い布が捲れた。


「赤ちゃんです?」


人間の産まれて間もない赤ん坊であった。


臍の緒がまだ付いている赤ん坊は泣き声もあげずただ、自分の産みの母を見つめる。


女がいくら地面に叩きつけても、赤ん坊には衝撃さえ伝わらず痛みはない。


薄い膜が赤ん坊を守っていた。


叩きつけていた女はリンの声に反応し振り返ると、魔物が死んでいた。


「こいつも殺してっ!そしたら逃げられるわ!」


「この火は赤ちゃんがやっているのです?」

「そうよ!この化物がっ!!」


リンは叩きつけられていた赤ん坊を持ち上げた。


「凄いのです!旦那様みたいなのです!」


旦那様も人間なのに火を出せます。

他にも何か出せますかね?


「メェちゃんみたいに水は出せますか?火は燃えるから危ないのですよ。水なら遊んでも良いのです」


赤ん坊は初めて負の感情以外で抱かれた。


水は出なかったが火は鎮静化し消えた。


「小さいのです」


リンが赤ん坊の手を指で触ると、赤ん坊はリンの指をぎゅっと握りしめた。


「力も弱いのですね」


人間の赤ちゃんは弱そうなのです。


「ねぇ!早くそれを殺してよっ!!」

「???何故ですか?」


「あの火を見たでしょう!化物なのよ!そいつはっ!!」


火くらい旦那様もメェちゃん達も出せるのですよ。


「お母さんではないのです?」

「化物なんか産みたくて産んだわけじゃないわよっ!早く殺してよっ!!」


「嫌です」


旦那様と同じ人間なのです。


「いらないのなら下さい。お家で飼います」

「駄目よっ!殺さないと私がそいつに殺されるかもしれないのよ!!」


貰えませんでした。


女に赤ちゃんを奪われました。


私のではないので大人しく返してあげました。


盗みは駄目です。


「ふっ……ふぇぇぇぇぇん!エェェェェェン!!」


赤ん坊は初めての心地好い温もりから無理矢理離され、産まれて初めて泣いた。


「黙りなさいよっ!化物が今頃泣き真似したところでもう、遅いのよ!!」


叩きつけても死なない、ならば………


赤ん坊の鼻をつまみ、口を塞ぎ、窒息させ殺そうとした。


女の顔が歓喜に歪む。


「最初からこうすれば良っ……キャァァァァ!!!」


女が燃え上がった。


火を消そうと地面に転がるが、火は衰えない。


人が燃える異臭が漂う。


「臭いのです。人間の丸焼きは不味そうなのです」


女の髪はチリチリになり焼き焦げ、皮膚はダラリと溶け落ち、最後には黒くなった骨だけが残った。


くぅ~


「オヤツの時間です。一緒に食べますか?」


焼死体を前にしても空腹な腹は鳴る。


リンは赤ん坊を抱き上げた。


「あう~」

「人間の赤ちゃんは喋れないのですか?」


女は死にました。

赤ちゃんは私のです。


そもそもここは私の縄張りなのです。

私の縄張りに入ったものは私の自由にしていいのです。


盗みにはならないのです。


「あっちにお花畑があるのです。そこでオヤツにしましょう」


森の中で唯一、花が咲く花畑がある。


そこには日を遮る木がなく、隠れる場所が無い為か魔物もいなかった。


その花は'聖花(セイカ)'と呼ばれる魔物避けの花で、市場でも護符として高値で取引される品であったがリンは知らない。


リンは赤ん坊を抱えながら素早く移動した。


目的地にはすぐに着いた。


白い鈴蘭のような花畑は円形に広がっていた。


綺麗な花畑を踏みつけ、赤ん坊を置いてから花畑の中央に兎リュックからレジャーシートを出し拡げてからオヤツに水筒をシートに置いた。


「今日のオヤツはシュークリームなのですよ」


まずは手を拭きます。

赤ちゃんの手も拭いてあげました。


シュークリームはいつもより小さいのですが、数が5個あります。


1個を一口で食べます。


「美味しいのです!」


赤ちゃんにも1個渡しますが、シュークリームが潰されました。

潰れたシュークリームから出たクリームだけを食べています。


贅沢な食べ方です。


歯がないからまだ、皮は食べれないのですか?


「ジュースも飲みますか?」


ミルクはないのです。

すりおろしリンゴのジュースです。

でも赤ちゃんに水筒の蓋は持てなさそうですし、溢しそうです。


スプーンはないのです。


「う~ん…………そうです!」


スープにパンを浸けたように、シュークリームの皮をジュースに浸けてみましょう。


「あーんですよ」

「うっあー」


赤ん坊の開いた口にリンゴジュースに浸したシューを入れると、リンの指までしゃぶった。


「私の指は食べ物と違うのですよ」

「うむ、うむ、うむ」


「赤ちゃん語は分からないのです」


リンは指を赤ん坊にしゃぶれながら、穏やかなオヤツの時間を過ごすのであった。




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