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今日から私の縄張りです

まだ日は高い。


だが鬱蒼と生い茂る森には太陽の光さえ遮る。


人が住まぬ大地は闇そのもの。


そんな中、リンは…………


ギャァァァァァッ


嘴には鋭い歯、紅羽根の(オオトリ)の首をへし折っていた。


「飛ぶのは狡いのです」


事切れた鳳は神経がまだ脳と繋がっている為に翼をバタつかせた。

紅い羽根が舞う。


リンは爪を伸ばすと紅い翼を切断した。


「………………変な鳥になってしまいました」


翼がない鳥。

長い首はくの字に曲がっている。


鳥の体型は丸い。

鳥は空を飛ぶ為に胸筋をつけ、地上に着地する為に腿筋をつけて進化した動物だ。

鳥は飛行機の原形でもある。

それは鳥の魔物にも当て嵌まる。


鳥は翼が大きい。それゆえ体型をさほど気にして見ないが、翼無しの鳥はハッキリ言って太って見える残念な姿であった。


「帰ったらメェちゃんのお菓子は禁止にするのです」


変なメェちゃんは嫌なのです。


ドラコンと鳳を比べるのは間違っている。そもそもメェの翼を切断しなければ良い話だが、幸か不幸か突っ込み役は只今着ぐるみ製作中で不在であった。


鼠、蛇、熊、蜘蛛、最後に鳥。


リンが森に入って仕留めた獲物。


どれも魔物であった。


魔物は動物、爬虫類などに似ている。

あくまで似ているだ。


鼠は毒牙持ち、大蛇は頭が二つ、熊は二足歩行、蜘蛛は巨大化したものであった。


その魔物もリンを警戒し出てこなくなっていた。


「ボスは何処でしょうか?」


ボスを倒します。


森を私の縄張りにするのです。


森の主を探す為にリンは気配を探った。

集中力を高めると比例して魔力も高まる。

視界に映る景色は静止し、耳は森全体の音を拾い、嗅覚は研ぎ澄まされた。


今のリンは森の全域を支配していた。


風で揺れ動く草の動き、水の音、魔物の息さえ把握出来ていた。


……………………ァ


「居ました」


微かな音。気配を消していた魔物の気配。


今までの魔物よりも強い。


リンは感じ取った瞬間に駆け出した。


飛ぶ様に加速する足は地面を殆ど踏まずに、一歩の距離が長い。

行く手を阻む大木さえ足場にし、反動をつけて跳び駆ける。


加速は止まらない。


それなのにリンは一切音をたてない。

逃げられないよう、気配を殺し忍び寄る。そして狙いを定めタイミングを図ってから獲物を狩るのが、猫の狩猟本能であった。


森の主はリンに気付かず、今から獲物を狩ろうとしていた。


獲物は魔物ではなく人間の若い女だった。


女は悲鳴をあげながら、白い布の塊を魔物に投げつけると逃走した。


魔物は塊に目もやらずに襲い掛かる。


リンは女よりも塊が気になり塊に近寄った。


「助けっ!アアアアアッ!!!」


女がリンに気付き助けを求めたと同時に魔物が爪で女の足を刺した。


溢れ出る血は赤黒い。


魔物は気配を感じられなかったリンを警戒したのか女はまだ生きている。


「助け……て……」


爪が刺さったまま、女はリンに手を伸ばして懇願した。


「何故です?」


白い塊を指でツンツンしながらリンは不思議そうに女を見た。


なんで人間の弱い女が森に居るのですか?

森は弱肉強食なのです。

弱いと食べられます。


「私はそれを捨てに来ただけなのっ!お願いだから助けてっ!」

「嫌です」


私、関係ない。


私はボス狩りに来たのですよ。


「うん?ボスを狩れば助ける事になるのです?」


女に興味はありませんがボス狩りをします。


爪を伸ばしボスに飛び掛かる。


魔物は女を刺していた爪を抜くとリンの攻撃を避けた。


爪を抜かれたことにより、女の拘束は解かれたが代わりに血が吹き出した。爪が止血の役割をしていたのだ。


女は痛みと止まらない血に、悲鳴をあげながら足を手で押さえる。


「煩いのです!」


「ねぇ逃げましょう!!」


怒鳴り付けたのに女は血だらけの手でリンの服をに触ろうとした。


「汚い手で触るなですよ!」


服が汚れるのです!


リンは女の手を足で蹴った。


「私は狩りに来たのです!邪魔するなですよ!!」


ポキッ


女の指が折れた。


魔物に襲われ、魔物から助けてくれた少女にさえ傷を負わされた女は、またしても痛みに悲鳴をあげる。


「煩い女なのです。次は喉を潰します」


(怖い、恐い、こわい、コワイ…………逃げないと、逃げないと死ぬ)


女は魔物に少女が勝てるわけもない、逃げることしか考えられなかった。


痛む足を押さながら、どうにか立ち上がり逃げようとしたが突然、炎がリン、魔物、女を囲むように火柱をあげた。


「…………この化物めっ!!」


女は白い塊に近寄り、塊を掴むと一心不乱に地面に向けて何回も叩きつけた。


「お前のせいでっ、お前のせいでっ!」


「煩いのです。でも………」


これなら逃げられずに狩れます。


魔物を見据える。


森の主は胴体は虎、尾は蛇、足は鳥、口にはマンモスのような牙。


そして………………


「ボスが馬なのは赦せません!!」


顔はリンが嫌いな馬であった。


リンは炎に囲まれ困惑する魔物の背に飛び乗った。

魔物は振り落とそうと暴れる。


前足を浮かせ後ろ足だけで立ち上がり、首を左右に振るが、首に腕をまわしたリンは締め上げつつ、魔物の耳に口を近付けた。


「ナァァァァァァ……………………!!!!」


高音の超音波が魔物の耳に直撃した。


鼓膜が音の振動で破れ、耳から血を流す。


人間だったら聞き取れたの最初の音のみで鼓膜が破れることはなかった。だが動物系の魔物は総じて耳が良い。


声なき声も聴こえる。


聴こえるが為に鼓膜が破れ、耳の神経から脳まで伝達され、脳内出血までさせた。


魔物は呆気なく息絶えたのであった。


速い馬でした。

強い馬でした。


でも………


「馬は嫌いなのです!」




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