お散歩に行きます!
お家がやっぱりいいのです。
今日も旦那様は書き物をしています。
暇です。
お散歩に行きたいのです。
「森に行きたいのです」
「………一人で?」
「はいです。縄張りにしてくるのです」
皆(使用人)好きです。
一緒に遊ぶのは楽しいのです。
でもお散歩は一人でしたいのですよ。
アレスは書類を書く手を止めて思案する。
リンは元猫だ。
家猫であったが今では外(庭園)で遊ぶし、森へも散歩しに勝手に一人で行った事がある。
行動範囲が拡がった自由気ままな猫を今更、家に押し込めるとストレスが溜まる。
「約束、守れる?」
「服は汚さないのです!」
「夕方には帰ってきなよ」
「はいです!」
行ってもいいのです!
さそっく行きます!
「行ってきますです!」
「行ってらしゃい。気を付けてね」
お散歩なのです。
ウキウキです。
「嬢ちゃん、やけにご機嫌だな?」
廊下を歩いていたら、モコモコ白布を抱えたイッちゃんに会いました。
「これから、お散歩なのですよ」
「散歩か。今日は天気もいいしな」
「はいです。魔物狩り日和なのです」
「はっ!?魔物っ?……………嬢ちゃんは何処に行くのかな?」
庭園で遊ぶのだろうと思っていたイチが問う。
「森です。旦那様がいいって言いました。イッちゃんの服は汚さない約束なので安心して下さいです」
「安心出来ないからっ!兄さーんっ!!!」
「煩いよ、イチ」
旦那様がお部屋から出てきました。
書き物は終わったのです?
「嬢ちゃんを森に行かせるのかっ!?危ないだろっ!止めろよっ!!」
魔物が出るんだぞっ!!
「リンなら大丈夫だよ。それより着ぐるみは?」
「今から作るのっ!じゃなくて……」
「お嬢様、御出掛けですか?」
「オヤツはどうされます?」
「帽子被ってから行けよ?」
「水筒も忘れないようにね」
「鞄よりリュックのがいいでしょうな」
イチの声を聞き付けて、使用人達が集まり出した。
ちなみに初めが侍女のマァム、料理長、医者、庭師、執事である。
アレストファ公爵家の使用人はデザイナーのイチを合わせて、総勢6人。
貴族の使用人数にしてはかなり少い。
アレストファ公爵家は少数精鋭だった。
「あれの資料が足りないから用意して」
アレスが執事に話し掛ける。
「畏まりました」
「それと帽子とリュックに菓子と飲物もね。リンは帰ってくるまで、それ以外は飲み食いはしないこと」
魔物は食べない、森の水も飲まないようにね。
「はいです!」
「イチは早く作りなよ。耳と尻尾はちゃんと付けてね」
「…………あの、嬢ちゃんの心配は?」
「魔物よりリンのが強いよ」
「魔物がお土産でしたわ」
「花もな」
「魔物の髭にね」
「斬新な発想です」
「毒草込みの花束でしたな」
アレス、マァム、医者、庭師、料理長、執事の順で答える。
心配は皆無。
どちらかと言うと魔物に襲われる事より、拾い食いか、狩りに夢中になり過ぎで熱中症にならないかのが心配であった。
イチ以外の使用人達はリンの奇行にはすでに慣れた。
そもそも遣える主人が規格外であった為、リンに慣れるのも早かった。
「イチ、着ぐるみなら兎もお願いしますわ」
マァムからリンの着ぐるみが追加された。
「私は犬が」
執事からも要望あり。
「メェとお揃いのドラコンは?」
「おっ!いいな、それっ」
庭師、医者からも……
「羊も可愛らしいですよ」
料理長さえも………
「まずは猫が先だよ」
アレストファ公爵家に着ぐるみブーム到来。
「もう、イヤーッ!!!!!!」
白猫着ぐるみの布地を抱えながら、イチは戦線離脱した。
「イッちゃんにもお土産もって来ますねー!!」
廊下を走って部屋へと戻るイチに、リンは大声で声を掛けるのであった。
「弄りすぎたね?」
アレスは走り去ったイチを見つつ、使用人達に話し掛ける。
「反応が新鮮なんですもの」
「弄りがいがある奴だよな」
「イッちゃん、楽しいんだもん♪」
マァム、医者、庭師はイチで遊ぶのが好きであった。
「弄り過ぎましたな」
「悪いことをしました」
執事と料理長はマァム達に便乗するが、普段はイチで遊ばない。
イチはカリフ伯爵家でもアレストファ公爵家でも可愛がられていた。
ただ今のイチはリン土産(魔物)をどうするか、白猫着ぐるみを作りながら悶々と悩むのであった。




