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夏祭り6(番外編)

ハンソンside






何で貴方様がっ!?


服対決にてモデルとして現れたアレスを見て、ハンソンは心の中で絶叫していた。


表には顔を出さないはずの者が、素性を隠しているとはいえ、堂々と大勢の観衆の前に姿を見せたのだ。


ハンソンにとって二度目の邂逅であった。


一度目は管理人就任時、約12年前だ。


確かに招待状を送ったのは私です。


ハリス男爵を牽制する為に送らさせて頂いたのです。公爵家と連絡が取れる事実を証明し、公爵家にハリス男爵の行いを報告すると、警告を(ホノ)めかす為の伏線でした。


公爵家の名前だけお借り出来れば良かったのです。


視察は構いません。

連絡なしの視察はいつもの事です。


なのにっ!


無干渉の貴方様が潰してどうしますかっ!?


しかも自分の身分は伏せて、アイリスの称号を持つカリフ伯爵子息を利用するなどっ!


何をなさっているのですかっ!?


カリフ伯爵様に連絡したのも貴方様でしょう!


貴方様しか考えられません。

国王陛下の従兄弟でしたら、国王陛下護衛騎士のカリフ伯爵とも連絡を取るのは容易いはず。


ハリス男爵に今後はないでしょう。


あれほどの醜態を民に見せたのです。


社交界の噂の餌食になります。


貴族もカリフ伯爵を敵にしたハリス男爵を味方する者はいないでしょう。


男爵という名の肩書きだけの庶民に成り下がります。もしかしたら庶民より辛い生活になります。何しろ味方が居ないのですから………。


金も地位も信頼もない。


まぁ、この領から退去する方です。


私にはすでに関係ない話ですね。


「居たっ!ハンソンさんっ!!先程のイチのモデルをしていらした方は何処へっ!?」


医者は椿を伴い、汗だくで駆け寄った。


「帰られましたが………何かありましたか?」


「媚薬の解毒剤を開発された方なのです!」

「あの媚薬ですかっ!?」


効能が認められた新薬は開発者の使用許可が必要になる。

薬の知識、薬を流通させるにはアレスの許可が必要だったが、本人はいない。


医者はこの解毒剤作製書を世に出したかった。


この薬で助かる患者が居るのだ。


助かる方法を知っているのに、隠匿するなど医者には出来なかった。


「何方なのです!?早く探さなくてはっ……」


「いや、探す必要はないです。薬は領から出しても問題ありません」


「ですが、それでは盗みなりますっ!」


「安心なさい。なりませんから………あの方からはすでに媚薬が成分ごとに分解された物を預かっています。それが答えなのですよ……」


後は自分達の好きなように………


まったく、アレストファ公爵家の者はいつもそうだ。


やる事をやったら、その後は放置する。


この薬も世に出す、出さないも好きにしろとの意思表示。


昔からあの一族は提供するが、干渉はしないのだ。


「栄えるも滅びるも、選択は自分達でしろ」


「それは………」


「初代アレストファ公爵様が領の管理人に告げた言葉ですよ。私は滅ぼすつもりはありません。薬は流通させます」


「はいっ!有り難う御座います!おおっ、そうでした!椿が媚薬をあの方に渡したおかげで解毒剤作製書が作られたのですよ」


「椿が?」

「ええ、まさかこの様になるとは、思いもしませんでしたわ」


「…………あの方に買われたのか?」

「ふふっ、買ったのは小さいお嬢ちゃんですわ。美味しく召し上がって下さいました」


「なっ!?」


「お食事だけですが」


クスクスと笑う椿に安心の表情を浮かべるハンソン。


(胸を味見されたのは内緒ですわ)


「驚かせないで下さい……………椿、いやサラ。私と結婚して下さい」


「……………ご冗談を。私は娼婦ですわ。管理人が身請けなど外聞が悪いですわ」


「なら、聞こうではありませんか?」


広場の舞台からハンソンは会場中に聞こえる程の声をあげた。


「私、ディル=ハンソンは花籠の椿を妻にと望みますが反対する者は居ますか?それとも管理人職は生涯独身でないといけませんか?」


「んなわけねぇーだろう!」

「男なら好きな女ぐらい駆っ拐えっ!」

「椿ー!アンタも意地にならないで素直になりなよねっ!」

「管理人職が生涯独身なら誰もやらんぞーっ!」

「さっきの兄ちゃん等を見習いなっ!」

「兄ちゃんって年かっ!?」

「あれは犯罪だろっ!歳の差いくつだよっ!」


反論はあがらない。


広場は一気にお祝いムードだ。


領民は知っていたのだ。ハンソンの想い人を。


管理人として領を領民を、一番に考えてくれる人の幸せを願わないアレストファ領民はいなかった。


「結婚してくれますか?」


「………でも私は、私は、娼婦ですわ!他の男に体を売ったっ!!私は娼婦であることを後悔してませんわ!憐れみなどいらな……」


「サラ、貴女がいいのです」

「…………………ディル」


「愛してます。結婚して下さい」


「…………………負けですわ。仕方がないので結婚してさしあげますわっ!もう、これでよろしくてっ!?」


顔を赤くしながら了承する。


「はい、有り難う御座います。一生愛し続けます」


「~っ////私も………し…る…よ……」


椿がボソボソと何かを言うが、声が小さくて聴こえなかった。


「えっ?何で………」

「私も愛してるわよ!同じことを言わせないで下さいまし!!」


怒鳴り付けるような告白に、ハンソンは笑みを浮かべて強く椿を抱きしめるのであった。


広場は沢山の祝福の拍手に包まれた。








アレストファ領管理人ディル=ハンソンは最愛の妻サラ=ハンソンと共に生涯を歩む。


結婚式にはお忍びで来られた、アレス、リン、イチの姿が見られた。


夏祭りは恋の終わり、愛の始まりとして、この時期に結婚する者が増えたとか。


余談だが星の湖はプロポーズの場になっている。




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