夏祭り3
「観客の皆様、お待たせ致しました!ではイチさんに伺います。何故この服をデザインしましたか?」
「僕の服は兄さんと嬢ちゃんにしか着こなせないから…………………は建前で、コイツ等ときたらっ…………………!!!!!」
イチは出会いから服作りの過程まで熱く語った。
それは裸かで寝るから始まり、下着作りまで熱弁した。
司会者、観客がイチを気の毒そうに見る。
「同情を誘うとは姑息なっ……司会者、早く先に進めぬかっ!」
ハリス男爵が一喝する。
「ちっ…………では服の着心地はどうですか?」
キンピカに舌打ちした司会の人間に聞かれました。
服は着れればいいのです。
でもイッちゃんを褒めないとキンピカを潰せません。
「イッちゃんは我儘でケチです。シャーベットはくれませんでした。でもイッちゃんは元気で恥ずかしがり屋さんです」
「僕は我儘でもケチでも恥ずかしがり屋でもないっ!シャーベットも最終的には食っただろっ!?僕のことより服の感想はっ!?」
間違えました。
服を褒めるのです。
褒める………良いとこでしたか?
「一人で着れました!」
「当たり前だっ!そうじゃなくて、デザインとか肌触りとか色々あるだろうがっ!!」
イッちゃんはやっぱり我儘です。
ドレスは一人では着れません。
リンは頭から被る服でないと一人で着れなかった。
リンの一人で着れました!発言は最上級の誉め言葉であったがイチは知らない。
「他ですか………旦那様色です!旦那様は私色なのです!」
「うん、うん。他にもあるだろ?」
軽くて柔らかい生地、可愛らしいデザイン、洗練された刺繍、ふんわりフリル、チクチク痛くないレースそれから…………
「???」
「え"っ、終わりっ!?」
「はいです」
もう褒めました。
褒め過ぎは教育に良くないのです。
何事も程々が言いと旦那様が言っていました。
私も魔物は一匹しか狩ってないのです。
褒めて欲しいから、また狩りたいのですが我慢です。
イッちゃんも我慢を覚えるべきなのです。
「頑張れです!」
「頑張ったのっ!兄さんは!?」
イチの望みはアレスに託されたが…………
「服より猫耳を作りなよ。尻尾もね」
「なんで耳!?そんなに猫が好きなの!?それより服っ!服対決の場なのっ!!主旨変わってるからっ!!!」
渾身の自信作も貶されはしなかったが、褒められてもいない。
イチはガックリと肩を落とした。
「…………とても良い作品です。苦労が目に映ります」
司会者がイチを労るように、優しく肩を叩いた。
「僕の味方は貴方だけだっーーー!!」
イチは瞳を涙で潤ませながら司会者に抱き付いた。司会者も何度も頷きながらイチを抱き締める。
ここに新たな友情がひとつ生まれた。
「………………それでは作品アピールをお願いします」
アピールとは何てましょうか?
リンはハリス男爵達のダンスを見ていなかった。
「…………リン、5分間だけ遊んであげる。かかっておいで……」
遊ぶのです!
リンはアレスに向かって攻撃した。
拳はながされアレスがすかさず蹴りを入れる。それを跳んで回避するも足を掴まれ、リンはアレスに投げられた。
リンは空中で一回転してからフワリと着地しバックステップした。
トスットスットスッ
着地場所に針が三本突き刺さる。
リンはアレスから視線を外さずに、刺さった針を抜くとアレスに向かって投げた。
投げられた針を掴み取ったアレスは上体を後ろに傾ける。
掴み取った針は1本。
なら次は………
リンは指の間に2本の針を入れ、握り締めながら一閃させた。
針がアレスの顔ギリギリに横なぎされる。
「針は突き刺す物だよ」
リンの掌に1本の針が刺さっていた。
針を握り締めていた手に力が入らず、手からこぼれ落ちた。
「針は狡いのですよ!」
「だって君、骨を折るでしょ?」
「旦那様のは折ってません!」
アレスはリンの攻撃を受け流すから骨は折れなかったが、受け止めていたら確実に折れていた。
お互いにハンデはある。
アレスは魔力を使用しないし、リンは爪を使わない。
身体能力はリンのが上だ。
リンは素早い動きに、見た目からは想像も出来ない程の力強さもある。
それに対してアレスは頭脳戦だ。先を詠み、行動に移す。
二人は雑談しながらも体を動かす。
片方が攻撃すれば避け、すかさず攻撃しては避けるを繰り返す。
二人に殺気がない為、観ている方はまるで舞を観ているように感じた。
「…………ねぇ、5分過ぎたよ?」
「終わりなのです?まだ遊びたいのです」
「帰ったら遊んであげるよ」
「約束なのです!」
「約束ね」
リンが小指を出して来たので、アレスも小指を出し、お互いの小指を絡ませて約束した。
お家なら爪を出しても大丈夫なのです。
皆(使用人)で遊ぶのです。
約束なのです。
「素晴らしい!素晴らし過ぎて時間を忘れました!」
司会者、観客から盛大な拍手が贈られる。
「イッちゃんの服は動きやすいです。邪魔になりませんでした」
「僕の服は戦闘服じゃねぇっ!」
イチの絶叫さえ拍手でかき消されたのであった。




