夏祭り2
「いよいよ始まりました!お待ちかねの服対決!判定は会場の皆さんにお願いします。ではまずはハリス男爵様の作品から御覧あれっ!」
ハリス男爵は自らモデルとなり、女性を連れて入場した。
観客は拍手で出迎えたが、すぐに手拍子をやめて唖然とした。
ハリス男爵はけして美男ではない。
そのハリス男爵が古代騎士の格好をしていた。
ハッキリ言おう。
似合わない。
武家名門カリフ伯爵家の者なら貴族であっても格好はついたが、運動とは無縁の筋肉の欠片もないハリス男爵の体格にはマントやら剣は似合っていなかった。
しかも騎士をイメージして作られたと思われるが、やたらと金の刺繍やら、装飾品が目立っていた。
女性は美しい。
美しいが深紅のドレスに大胆なスリット。
あいた胸元には大粒の宝石のネックレス。
スリットから見える足にはガーター。
服がメインであるはずが、やたらと装飾品が多くドレスの布地も少い為、もはや装飾品がメインだ。
似合い過ぎる。
まさに毒婦である。
騎士擬きと毒婦。
「………えっ、あ~……とても斬新な装いです」
司会者もコメントに困っていた。
「コホンッ、あ~続きましてはイチデザイナーの作品を御覧あれっ!」
盛大な拍手で登場した二人に観客は息を飲んだ。
アレスはゴシック系の白を基調とした服装に青のリボンタイ。
髪は編み込みされ、こちらもリボンタイと同色のリボンで結われ耳を見せる髪形。
リンはゴスロリ系の黒を基調としたワンピースに緑のリボン。
髪は左右に緩めの三つ編みにされ、頭には黒兎耳。
互いの髪と瞳の色を取り入れた服装。
互いを引き立てる、二人で一つの装い。
美形をさらに美形にする服装。
「素晴らしいデザインです!言葉もありません!!では両者が出揃いましたので対決に移りたいと思いますが、よろしいですか?」
司会者は断然イチのデザイン派であったが、司会者ゆえに公平に催しを進行しなければならなかった。
「勝敗は見えていますがなっ」
自信満々なハリス男爵にイチは溜め息をついた。
(布地がもったいねぇ……)
「では審査に移ります。最初は質問タイムです。何故この服をデザインしましたか?」
司会者はハリス男爵に尋ねる。
「騎士に憧れる方は多いですからな。私は貴族ですが騎士のように勇敢でありますぞ」
剣を抜き掲げるが滑稽にしか見えない。
その剣さえ装飾され、けして実践向きではなかった。
「私もこの様な装いが出来て嬉しく思いますわ。豪奢なドレスに宝石で飾られるなんて、夢のよう………女性なら一度は憧れますわよ」
服対決のはずが、女性は装飾品の自慢しかしない。
同性でも共感は得られない。
宝石は羨ましいが、女性のドレスを着たい女は会場内にはいなかった。
「…………そうですか。では自慢の服装で何かアピールをお願いします」
司会者は既に投げ遣りだ。
ちゃっちゃか終わらす気だ。
二人はダンスを踊った。
しかもワルツであった。
踊っている二人はいいが、見てる方はつまらないものである。
二人は5分間のアピールをずっと踊っていた。
一方、アレス、リン、イチは………
「イチゴです。ご、ですよ。イッちゃん」
「ご、か~……ご、ご、………ゴマ」
「松毬」
「り~?………リンゴ!」
「また、ご、なの!?」
………………シリトリをしていた。
「あの、スイマセンがアピールを………」
司会者が申し訳なさそう声を掛けた。
「あっ、わりぃ!ほらっ質問だから……」
「逃げました」
「逃げたね」
「逃げてないっ!」
広場の所々から笑い声があがる。
観客はハリス男爵達のダンスなど見ていなかった。
さぁ、いよいよ質問タイム&アピールが始まります。




