夏祭り1
遅い朝食を食べ終えた二人は、昨夜入らなかった風呂に入っていた。
朝風呂ならぬ、昼風呂である。
「いっい、湯だぁにゃ~にゃははん、いっい湯だぁにぁ~にゃははん♪極楽です~」
父が歌っていたのです。
替え歌らしいのです。
父は必ずお風呂に入るとこの曲を歌ってました。
お風呂は母に入れられましたが、父はお風呂に入れませんから安心して、お風呂場に居られました。
お風呂の蓋は暖かいから好きなのです。
今ではお風呂の中にも入れます。
私は成長しました。
「アワアワです~」
「こっちに飛ばさないの」
泡を持ち上げて息を吹き掛けると、泡は旦那様に飛んでいきました。
ミルクも林檎も好きですが、泡が一番遊べて楽しいのです。
ドタドタッ、バタンッ!
「何、優雅に風呂に入ってるの!?時間だから!催し始まってるからっ!!しかも一緒かよっ!!!」
イッちゃんは今日も元気です。
汗をかいてます。
「イッちゃんもお風呂に入りますか?」
「狭くなるから一人で入りなよね」
「んなことより、早く風呂から出ろやっ!時間がないから早く服を着ろっ!椿さーんっ………」
イッちゃんはタオルを投げるとお風呂場から出ていきました。
お姉さんも居るようです。
旦那様にお湯で泡を消されてから、タオルで拭かれました。
「出たのです」
「裸で出てくるなっ!!」
イチは慌てて後ろを向いて視界を閉ざした。
「注文が多いね」
「兄さんも下くらいは隠せよっ!嬢ちゃんも恥じらいを持てっ!!」
「恥ずかしいは旦那様にだけなのですよ」
「なら一緒に風呂に入るなよっ!」
「帽子がないと一人で髪が洗えないのです」
「帽子って何っ?それより下着は!?着たっ!?」
「下着は寝室だよ」
「持って来るからタオルを巻いて!隠してっ!!椿さんも居るんだからっ!!」
仕方がないのでタオルを巻きました。
「良いものを見させてもらいましたわ」
良いものとは何ですか?
お姉さんに呼ばれて行くと、髪をタオルで優しく拭いてくれました。
「これっ!早く着てっ!!」
下着をイッちゃんに渡されたので着ます。
イッちゃんはまたもや、後ろを向きます。
お姉さんは見れるのに、イッちゃんは駄目らしいです。
恥ずかしがり屋さんです。
「着ました」
「着たよ」
「次はこれっ!」
今度は服です。
「………………着ました」
「………………着たよ」
「………………っ~でかした!僕っ!!最高っ!!!」
イッちゃんは着替えた私と旦那様を見ると、飛び跳ねて喜びました。
「あとは………」
「ふふっ、私の出番ね」
お姉さんが旦那様と私の髪を弄ります。
「………………ヤバイわ。我ながら完璧だわ」
「椿さん!ありがとう!!この服にはこの髪形で正解だっ!」
「素材を生かした服に合わせるなら当然よ」
イチと椿は納得の出来に互いを褒め称える。
二人はかたく握手を交わした。
「仲良しなのです」
「仲が良いね」
そんな二人を横目にアレスとリンはお茶をしていた。
お風呂上がりはミルクなのです。
「って、そんな暇はねぇ!?行くぞ!」
「何処にですか?」
「少しは休ませてよ」
「広場っ!もう忘れたのかっ!?もう昼だからっ!!ゆっくりし過ぎっ!!!」
そうでしたっ!
「キンピカの喉を潰すのでした!」
「何それっ!?恐っ!違うからっ!!服対決だからっ!!!」
勝ったら潰せるのです。(*潰せるのは店)
どっちも同じなのです。
リンは勘違いをしていた。
服対決開始時刻に近くなり、慌てて宿から出るよう促すイチに続いて宿を出た。
「はい、これ……」
アレスは椿に紙を渡す。
「あの、これは……?」
「媚薬の成分表。解毒剤の作り方も書いてあるから、それを服用すれば治るよ」
「!!っ有り難うございます!」
椿は紙を握り締めながら頭を下げた。
催しを見る予定であったが、椿は礼を告げると診療所に急いで向う為、宿の前で別れた。
椿が持って来た、成分表と解毒剤作製書に医者は度肝を抜かれた。
媚薬の成分は混ざり物が多いため解毒剤はなく、本来なら体から薬の成分が抜けるまで待つしか解決法がなかった。
アレスが椿に渡した解毒剤作製書は新薬なのだ。
理論、作用、数量まで細かく計算された解毒剤。
医者は薬師にそれを見せ、薬を作り患者に飲ませた。
すると患者の容態は落ち着き、数日振りの深い眠りについた。
助かる見込みのなかった患者に光りが見えた。
数日後、椿と患者であった娘が互いに抱き合う光景が見られ、媚薬の解毒剤が世に流通するようになった。




