前夜祭6
広場の出し物が見たかったのです。
お兄さんの買い物は長いのです。
お菓子は買ってあげないのです。
「疲れました…………もう履かないのです!」
いっぱい靴を履きました。
もう裸足でいいのです。
「あと一つだけ!あっ、あの店のはどうだ?」
「靴は靴なのです。もう歩かないのです!旦那様、抱っこです」
両手を出して、旦那様に抱っこして貰いました。
高いのです。
楽チンです。
「……………甘やかし過ぎでない?」
「普通だよ。君の買い物は長過ぎ」
おかげで広場の出し物は、すでに終わってしまった。
時刻は夕方。
あれからイチは散々出店をまわり、アレスとリンにアレコレ合わせた。
素材が良い為、合わせがいがある。
イチは一人だけ楽しんでいた。
小物とアレスの靴は、納得の物を購入出来たが、未だにリンの靴が見つからない。
「嬢ちゃん、次で最後にするから!なぁっ?」
「さっきも同じこと言ったのです!もう騙されません!!出し物が見れませんでした…………」
「あっ、あ~出し物なら明日もあるからなっ?そんなに落ち込まないでくれよ………その、あー連れまわして悪かった」
「本当にね……………次の店で最後だよ?」
「う"~本当の本当に最後です。嘘ついたら舌を抜きます」
「恐っ!えっ、それマジで言ってる!?」
「私、嘘、つかない、舌、抜く」
「本当の最後だよ」
「マジでごめんなさい。お願いだから勘弁して。あと恐いので片言やめて下さい」
お兄さんが土下座で謝りました。
謝ったので許します。
でも嘘だったら舌を抜こうと思います。
お兄さんが見つけた出店には靴以外の物がありました。
「ウサギなのです!」
黒ウサギの耳です!
ふわふわです。
旦那様に下ろしてもらい、さっそく着けます。
「ウサギに見えますか?」
「これ頂戴」
「即決っ!?」
アレスはリンのウサ耳を指差しながら、店主に声をかけた。
イチのツッコミがすかさず入る。
「私が買うのです!」
アレスが財布を出すのをリンがとめる。
食べ物は別だが、欲しい物はお小遣いを遣う。
ウサギ財布からお金を出すリン。
初めての買い物。
「ああ、まい、どっ!?」
出されたお金は金貨。
店主は驚くしかない。
ウサギの耳飾りには本物のラビットファーが使われていたが、毛皮のコートではないのだ。毛皮のコートでも金貨一枚でお釣りが出る。
「足りないのですか?」
チャリン、チャリン。
金貨が二枚足された。
リンに金勘定はまだ出来なかった。
「小遣いじゃねぇー!!!銅貨はないのか、もしくは銀貨!?」
「これしかないのです」
「しか、じゃないから!しか、じゃ!!ありすぎだから!!」
「???買えないのです?」
「…………悪いが、釣りがないよ」
「お釣りいらないのです。ウサギ下さい」
買えないわけではないのですね。
良かったです。
ウサギは私のです。
金貨を店主に渡したまま、ウサ耳を着けて嬉しそうにピョンピョン跳ねる。
「あー………いいのかい?」
余りの大金に、保護者に確認する店主。
「初めての買い物だしいいよ………………可愛いし」
「何、トチ狂ってんの!?いや、可愛いけどさっ!!」
「流石に金貨三枚は多いよ。嬢ちゃん、釣りには足んねぇが………」
金貨二枚に銀貨、銅貨数十枚渡すが、ウサギ財布には入りきらない。
「ウサギが太りすぎて入りません。パンパンなのです」
「残ったので靴買えば?イチ、どれ?」
「…………………コレがいいです」
イチが選んだ靴をアレスがリンに履かせる。
「どう?」
「ピッタリです」
「決まりだね。これも頂戴」
「好きなの持っていきな………全部やっても金貨一枚にはならんよ」
思わぬ儲けに店主は投げやりだ。
悪徳商法ならリンはいいカモだが、店主はアレストファの領民だ。
金は正直嬉しいが、少女の初めての小遣いの買い物がウチの商品であることのが、店主にはそれ以上に嬉しかった。
「入りきらないお釣はあげるよ。あの子には金貨一枚以上に、アレに価値があるからね」
「ハハッ、確かにな!あつらえたように似合ってるよ!可愛いウサギだ!!」
「猫なのにね………………猫耳はないの?」
「何言ってるの!?」
「猫耳はないね。今度は動物耳シリーズでも作ろうかね」
「アンタも何言ってる!?ここのメインは靴だろうが!!」
「お兄さん煩いのですよ。舌抜きますか?」
「え"っ!靴買ったのに!?」
「買ったのは私です」
「そうだけどさっ!」
ウサ耳美少女が他者の舌を抜くシーンを想像し、青ざめるイチ。
萌え要素満点だからこそ恐い。
シュールだ。
「おやおや、騒がしいですな?」
キンピカです。
今日のキンピカはジャラジャラです。
砂利(宝石)の服です。
重そうです。
「これは、これは、男のくせにデザイナーを名乗る……イチだったかな?」
「うるせぇよ、この成金がっ!」
「相変わらず口が悪いですな。野蛮な………んおっ、あの時の御客様ではないか!?なんで…………いや、まぁいい。そこの男の店の服ですかな?随分と貧相ですな」
「君は悪趣味だね」
「キンピカはダサいのです」
「~~~っ"」
「へんっ、あんな店ととっと閉めたらどうだ?どうせ、売れないんだろ?」
「言わせてやれば、付け上がりおってっ!」
「事実、客はウチにくる。アンタの店はどうだ?客は旅人限定、その旅人からも苦情がきてるのが現状だろ?」
勝ち誇るように笑みを浮かべる。
「ウチのが、客は喜ぶのさ」
キンピカは悔しげに唸ります。
キンピカが動くたび砂利がジャラジャラ煩いのです。
耳障りです。
「……………ふんっ、なら明日の祭りで服勝負をしようではないか!?自信があるようですからな?」
「はぁ!?」
「管理人には話を通しておく。何、ただの出し物だよ。どちらの服がより一番か客に決めてもらおうではないか?」
「誰の服を作る気だよ!?着る人が居ない服を作れるかよ!?」
「何、それなら、そのお二方に作った服を着てもらえば良かろう?」
「面白そうだね。でも君の服は着ないよ」
「私も嫌です」
「つっ!なら私は私で男女のモデルを用意する!!負けたら店を閉めることですなっ!!!」
鼻息を鳴らしながらキンピカはジャラジャラと、どっかに行きました。
「あーいいのか?何か勝手に決められたが………」
「自信がないの?」
「あるっ!」
「なら問題ないよ」
「私が明日、出し物に出るのです?」
「見るより参加のが、楽しいかもよ?」
「楽しいならいいのです!」
見るよりキンピカを潰すのに参加します。
服対決がリンの中では、キンピカ喉潰しに変換されていた。
イチは服一式を預かり、対決前にアレスとリンが着ることになった。
それまでは、洗濯に出した昨日の服を着ることになる。
明日はいよいよ本番祭り。
その前に……………
グゥ~ギュルルル
18時なりました。
「ご飯の時間です」
「夕飯だね」
「腹時計…………………原始的過ぎるだろ!!」
夜はまだ始まったばかり…………




