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前夜祭4

バダンッ


「私の服!!」


リンはイチの店の扉をなんの警戒もなく開けた。


「はぁ!?」


夕方に来るはずの客が突然、予告なしで来たのだ。しかも赤い手袋で扉を開けたせいで、扉に赤い手形がついた。


それだけでホラーだ。


イチの居る部屋にはすでに先客がいた。


倒されているが……………


「なんだ、戦えるの?」


アレスは倒されている男達を見る。

何かで締め付けれたような痕がある。

イチが付けていた飾り腰布は腰ではなく、今は手に持っている。


「それで、ヤったんだ」


「いや、そうだけど!何、冷静に分析してるの!?あと嬢ちゃんの手、何!?」


「手袋です」

「見れば分かるでしょ」


リンが両手をパッと開いてイチに見せるが、その手袋からは血が滴り落ちている。


「赤い手袋だよな!?ただの手袋だと言ってくれ!!それか苺だよな!?」


きっと、苺を潰したんだ。そうだっ、それか赤い絵の具だ!!祭りだから遊んだだけだ!!!


自分に言い聞かせるように暗示をかけるイチ。


そんな苦悩は二人に関係ない。


「何色でした?」

「白だよ。随分汚れたね」


「でも綺麗になりませんでした」

「仕方ないよ。顔だしね」


「板より泡のが良かったです?」

「髭は泡でも落ちないよ」


「おいっ!?何やって来たんだよ!?今日は祭り!!洗濯日和だけど祭り!しかも、何を洗ったんだよ!?それやっぱり血なのか!?あと、髭は剃るだよ!?兄さんが教えてやれよ!?」


「俺は生えてないよ」

「旦那様はツルピカなのです」


「何その、手入れいらず!!これだから美形は………男性ホルモンはどうした!?」


「知らないよ。そんなの」

「チクチクもプツプツもボサボサも嫌だから、旦那様はいいのですよ」


「あ"~っ、ラチがあかねぇ!!経緯を話せ!?何があった?」


イチは男達を店の外に無造作に出し、リンの手袋を回収し、代わりに濡れ布巾を渡すと、男達に赤い手袋と拭いて赤く染まった布巾を叩き付けてから扉の鍵を閉めた。ついでに扉についた赤い手形を拭くのも忘れない。


椅子に疲れたようにドカリッと座り、向かいのソファーにアレスとリンが座った。


話を聞き、頭を抱えるイチ。


最初から可笑しい…………


尾行に気付きながら何故、祭りを満喫出来る。

食後の運動が何故、尾行連中との遊びになる。


何故、髭に触りたくないほど嫌いか。

何故、針など持参している。

何故、手袋を渡した。

何故、髭を洗濯板で洗うか。


……………正気の発想ではない。


結論………………


「心配して来てくれた事は分かった。ありがとな」


イチは髭達の存在を頭から消した。


人は其れを現実逃避と呼ぶ。




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