前夜祭2
星のお菓子はあったのですよ。
クッキー、タルト、ケーキに飴までありました。
人間の星は三角と逆三角を合わせて、星らしいのです。
「…………違うのです」
「何が?」
「星は丸くてキラキラなのです。三角ではないのですよ」
人間は星の形を知らないのですかね?
お菓子は好きなのですが、私は星が欲しいのです。
「星…………」
「何でそんなに欲しいの?」
いつもなら形はどうあれ、菓子なら喜ぶのに…………
「お願い事をするのです」
流れ星に願い事をすると叶うのです。
でも、見たことないのです。
朝までずっとは、起きてられません。
私は眠くなったら、寝るのですよ。
「お願い事?」
「内緒なのです!お願い事は秘密にしないと叶わないのです」
いくら旦那様でも言わないのです。
乙女?の秘密なのです。
私は魅力的な女なのです。
「メロメロになりましたか?」
「もう、なっているから意味はないけどね」
ピーの教えはバッチリなのです。
旦那様は私にメロメロです!
「だから秘密はこれ以上いらないよ」
旦那様が頭を撫でてくれました。
「はいです。秘密はなしなのです」
もうメロメロなので、秘密は要らないのです。
「でっ?願い事は?」
「あのですね………」
グゥ~
お腹が鳴きました。
ご飯の時間なのです。
「お腹が空いたのです…………」
「クスッ、今の願い事は昼食のようだね。女将の店にでも行くかい?」
おばちゃんのお店はスープなのです。
スープ、飲みたいのです!
「おばちゃんのお店に行くのです!」
旦那様の手を引っ張ります。
リンの頭の中では秘密<<<星<スープで占められた。
リンの本当の願い事は聞けず仕舞いだったが、星などに頼らずともリンの小さな願いはアレスでも叶えられる。
「…………ロマンチックなんていらないよ」
(リンが頼るのは俺だけでいいよ………)
「旦那様?」
「何でもない。行こうか?」
「はいです!」
互いに手を離さないように、女将の出店を探す。
お店の場所は教えて貰いました。
私は分かりませんが旦那様が知っているのです。
「…………おばちゃんです!」
おばちゃんのお店を発見しました。
お店を片付けてるのです!
「スープ、無くなっちゃったのです!?」
「………店仕舞いには早すぎるね」
おばちゃんに聞くのです!
私のスープが………!!!
「おやっ?アンタ達かい………」
おばちゃんに駆け寄ると、気付いてくれました。
「スープは無いのです?」
「いや、あるよ…………」
おばちゃんが暗いのです。
どうしたのですか?
「何かあったの?」
「…………スープに虫が入っていると、難癖をつけられたのさ。おかげで客足が途切れたよ………売れないなら閉めようと思ってね」
「虫ですか?」
虫くらいで飲めないのですか?
「外だから羽虫は分かるが、小さい芋虫が入ってたんだよ!アタシはそんなの入れないよ!」
入ったとしても、魚介スープは澄んだ琥珀色だ。混入していれば客に出す前に気付く。
「妨害行為だね。さっきの店でもあったよ」
綿あめに難癖をつけた変態暇人。
未然に防ぐどころか、アレスとリンが泣かせて撃退したが…………
「…………他でもありそうだね」
「ウチだけじゃないのかい!?…………あの、御貴族様の仕業かね。あの馬鹿ならやりかねないよ!」
「可能性はあるね」
「それより、スープ下さい!お腹が空いたのですよ」
空気をよまないリンが声をあげた。
私のお腹は限界なのですよ!!
ギューギュルルル…………
再びリンの腹が鳴いた。
「アッハハハハ、元気な腹の虫さっ!!いいのかい、ウチので?」
他の店にもスープはある。
「おばちゃんのスープが飲みたいのですよ!」
「嬉しいこと言ってくれるよ。ちょっと、待ってな………」
おばちゃんがスープとパンをくれました。
「スープが冷たいのです」
「冷製スープさっ、パンを浸しながら食べとくれ。パンに味がしみて旨いよ」
おばちゃんの言う通りに、パンをスープに浸けます。
パンがスープを吸うのです!
サクふわパンがジュワジュワなのです。
パクリッ
「……………美味しいのです!もっと食べます!」
「俺にも頂戴」
「はいよ!」
旦那様と食べていると、周りにまた人が集まり出しました。
「あー………嬢ちゃん、それ旨いのかい?」
周囲に集まっていた人達の一人が、リンに話し掛けた。
「美味しいのです!あげないのです!!」
知らない人に声を掛けられました。
これは私のです。
あげないのです。
スープを奪われないように遠ざけます。
「いや、取らないよ!その、何だ………虫の味はしないかと………」
小さい声で聞いて来ました。
虫の味は分からないのです。
「魚の味なのです。おばちゃんは虫なんか入れないのですよ…………おかわりするのです」
スープとパンが無くなりました。
おばちゃんにまた、貰うのです。
余りにも美味しそうに食べるリンに、話し掛けた人も食べたくなる。
「あっ!俺も………」
「駄目なのです!」
「「「「えっ!?」」」」
周囲の人達も声をあげた。
「私のです!全部、私が食べるので無いのです!!」
「いや、全部は無理だろっ?」
「旦那様と食べるのです」
「二人でも無理だからっ!金もなくなるぞ?」
「お小遣いがあるのです。大人買いなのですよ」
「いや、それは違うからっ!」
「何でもいいのです!おばちゃんのスープは私のです」
虫入りの心配もなくなり、しかも旨い。
スープは買い占めたい程、美味しいらしい。
そうなると、食べたくなるのが人の心理だ。
「嬢ちゃん、それは無いだろ………」
また、知らない人なのです。
「女将のスープは宿客限定なんだ。祭りの時くらい食べさせてくれよ?」
領内に住む者は宿に泊まらない。
スープを飲めるのは祭りの日だけ。
「女将さん!スープまだある!?」
「売り切れてないだろいな!?」
「これを飲まなきゃ、祭りが始まらないぜっ」
続々と領民が店へと押し寄せる。
「ハハハッ、悪いけどスープは嬢ちゃんが買い占めるみたいだよ」
女将はリンを指差しながら笑い声をあげた。
「それは、無いよ!?」
「一杯でいいから譲ってくれ!?」
「独り占めは駄目だっ!」
領民が一斉にリンに話し掛ける。
「う"~!!!」
「リン……………」
「…………少しならあげるのです。少しですよ!?」
「「「「よっしゃー!!!!」」」」
スープとパンが次々と減っていきます。
領民だけでなく、周囲に集まっていた人達も買っていきます。
「駄目です!少しだけなのですよ!?無くなるのです!!!」
悲鳴をあげるリン。
「美味しいのは皆と食べる、でしょ?」
「皆は、お家の皆なのです!この人間達ではないのです!!」
アレスが宥めるも、リンから出たのは差別発言のみ。
「使用人には綿あめがあるから、スープくらい分けてあげなよ。宿でまた飲めるしね」
「う"~分かりました…………人間は強欲なのです」
怨めしげに、スープを購入する客を見る。
「…………独り占めも十分、強欲だよ」
「旦那様と二人占めなのです。私、強欲、違う」
「………はぁ、売り切れる前におかわりはしないの?」
「はっ!そうです!!」
リンは慌てて女将の所へ行く。
「退くのです!スープは私のですよ!!」
客の列など気にせず割り込むリン。
女将も客も苦笑するしかない。
女将の出店はリンのおかげで、客足が戻り大盛況だ。
そんな様子を見ながらアレスは一言呟いた。
「本当の招き猫だね」




