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前夜祭1

道がお店だらけです。

人間達が煩いのです。


お祭りの、前のお祭りは騒がしいのですね。

…………お祭りはもっと煩いのですか?


嫌です。


早くお家に帰りたいのです。

煩いのも、大きい花火も要らないのですよ。


「宿に行きます」

「…………今、来たばかりだよ」


「煩いのですよ」

「前夜祭だからね。それに戻っても昼食と夕食はないよ」


「部屋に台所があるのです。目玉焼きを作ればいいのです」

「卵は?」


「……………ないのですか?」

「買わないとないよ……………ほら、リンの好きな菓子の出店もあるけど、卵だけならいらないね?」


旦那様が指差した方には、棒に刺さった雲があります。


「???お菓子なのです?」


雲は食べれないのです。


ピーに乗った時に雲には乗れないのを知ったのです。雲は掴めませんし、なぜか濡れたのですよ。


雲は生クリームではないのです。


「そんな子供騙しは通じないのです。雲がお菓子ではない事くらい、私は知っているのです!」


私の夢が一つなくなりました。


生クリームに乗って、食べる夢が…………


こうやって人間は、大人になるのです。


大人は夢がない生き物です。


「騙されないのです!」


「……………じゃあ、食べない?」

「食べます!」


確めるのです!

けして、お菓子ではないのです。確認するだけなのですよ!


そうと決まれば旦那様と雲を買いに行きます。


「………一つ頂戴」

「まいどっ」


おじさんが、雲が出る器に棒を回すと雲が棒に張り付いて丸くなっていきます。


「凄いのです!雲に触れるのですか!?」


「おやっ、綿あめは初めてかい?ウチの雲は特別さっ!甘くて口に入れると溶けるんだよ」


「かき氷ですか?」

「カキ氷?カキ氷は知らねぇが、氷じゃないよ……………ほら、出来たよ。食べてみな?」


おじさんから雲の綿あめを貰いました。


匂いは甘いのです。

触れます。


「こらこら、ベタベタになるぞ?兄さん、これやるから拭いてやんな」


店主は苦笑しながらも濡れ布巾をアレスに渡す。


「助かるよ。リン、遊んでないで食べなよ」


遊んでないのです!

確認中なのです!!


…………………食べるのです。


パクリッ


「!!!甘いのです!溶けました!!旦那様、溶けたのですよ!?」


「綿あめだからね……美味しいかい?」

「美味しいのです!お土産にするのです!!」


雲の綿あめは、甘いお菓子なのです。


皆にあげるのです。

きっと驚きます。


「あ~わりぃが嬢ちゃん、綿あめは土産にはむかないんだよ。萎んで固くなっちまうからなぁ」


「ふわふわがシナシナのカチカチですか?」

「ああ、今日までしか保たないよ」


雲の綿あめは貴重なのですね。

雲はふわふわでないと駄目なのです。


…………残念です。


「なぁ、オヤジ?そっちの嬢ちゃんのが俺よりでかいよな?贔屓か?」


雲の綿あめを持った男が、私のと比べますが変わらないのです。


「いや、同じだよ。砂糖の分量は決まっているからな」

「なら、なんで俺の方が小さいんだよ?俺が男だから減らしたんだろっ!?」


「そんなこと、態々するかっ!」


「ここの店は客を選ぶのか!?」


騒がしくなりましたが、今は食事中です。


周りの人間達もコソコソと見て騒ぎ始めました。


食事中は静かにですよ!


雲の綿あめは甘いのです。ふわふわ、スッーです。

リンは綿あめの、口の中で溶けては消える食感が楽しくなり瞬く間に完食した。


「ごちそうさまなのです」


アマアマでした。

そして、口も手もベタベタです。


旦那様がおじさんから貰った濡れ布巾で拭いてくれます。


ありがとです…………………


「はっ!!!!」


やってしまいました!


旦那様と一緒に食べてないのです!


そうでした!


「ハンブンコするの忘れました!おじさん、もう1つ欲しいのです!」


「ああっ……ちょっと待っ………」

「話に割り込んでくんなよっ!?俺はなっ………」

「買わなくていいよ」

「遮るなよ!そうだ、こんな店のも買う必よ……うな……い…………っっ!!!」


男はアレスとリンを見て驚愕。


店主も周辺の人達もポカーン。


リンの手は布巾で拭かれたが、口の周りはアレスが周囲に見せ付けるように、リンの両頬を手で支え、上向きに固定させると舐め拭った。


最後にチュッと、音を鳴らして唇にキスをする。


「甘いね」

「はいです!」


「「「「「えっ、それだけ!?」」」」」


騒ぎを聞き付けて集まった人達が、異口同音でつっこんだ。


でも、これが日常の二人は気にしない。

気にする理由もない。


「ハンブンコしないのです?」


「食べたからいらないよ…………これ、ありがとね」

「ありがとです」


旦那様が濡れ布巾をおじさんに返します。


「ああっ………………余り必要なかったな……」


次のお菓子を探すのです。


雲の綿あめがあったのです。星のお菓子もあるかもです。

どんなに高く飛べても星は掴めないらしいのです。

星は小さいから果物の味かもしれません。それとも、キラキラの金色だからハチミツかもです。


「ちょっと、待てよっ!さんざん俺を無視しやがって何様のつ………」

「居たの?」

「まだ居たのです?」


「だ・か・らっ、遮るなよ!話を最後まで聞けっ!!それと、俺はずっとここに居たっ!!」


「暇人」

「私は星のお菓子を探すので忙しいのです。暇人とは遊べないのですよ」


「他をあたりなよ、暇人」

「暇人は一人遊びが得意なはずですよ?一人で遊べばいいのです」


「虚しいね、暇人は……」


「可哀想なのです?」

「哀れむ必要はないよ。暇人だからね」


「でも暇人、泣いてますよ?」

「嬉し泣きだよ。暇人は構われたいだけ」


「暇人は変態ですか?」

「変態だね。暇人だし」


「ッッッ俺は、オレッ……は変態でも、暇人でもない!!!」


心に深い傷を負いながらも、どうにか泣きながら反論する。


その顔は鼻水と涙でグショグショだ。


「汚いね」

「汚いのです」


追い討ち。


男のライフはすでにない。


大衆の面前でボロクソに言われた男のメンタルは弱く、残す道はただ一つ。


「………………っひっく………………お前ら、覚えてろよ!!!」


男は逃亡した。


泣きながら走り去る暇人兼変態。


「何をですか?」


悪党の捨て台詞に、悪気のないリンは首を傾げる。


「また、構って欲しいみたいだね」


悪意満点のアレスが応える。


「………変態暇人の考えは分からないのです」

「分かるのは変態暇人だけだよ」


「分からなくて良かったのです」

「本当にね」


「星を探しに行きましょう、旦那様」

「……….あるといいね」


旦那様と手を繋いで星を探しに行きます。


これがロマンチックと言うものです。

ロマンは夢で溢れるものです。


「ああっ!兄さん、嬢ちゃん!!これっ……」


おじさんが雲の綿あめを袋に入れて、くれました。


「?旦那様も食べたのです」


口を舐められました。


「礼だよ。あの変態暇人(笑)を追い返してくれただろ。魔法保存袋に入れたから土産にはなるだろうよ」


「いいのかい?」


魔法保存袋は魔道具の一つで、その名の通り状態保存の魔法がかけられた袋で、高くはないが安くもない代物だ。


「いいさっ、祭は楽しむもんだよ。楽しませて貰ったよ!ははっ、変態暇人とは……見たかい?あの顔?」


店主が周囲の人達に話し掛けると、皆一様に思い出したのか笑い声をあげた。


「さぁ!ウチの綿あめは変態暇人を撃退するだけでなく、恋愛成就のご利益付だよ!掴めて甘い雲だよ!」


店主は宣伝を始めると、笑いながら客が列をなす。


「さすがは、商売人だね」


「お土産、出来ました!」


忙しく綿あめを作り始める店主に二人は礼を言うと、リンはアレスと仲良く手を繋ぎ、ロマンを求め、星探しに歩き始めた。






綿あめは過去最大の売上げとなり。


変態暇人撃退、恋愛成就に商売繁盛が加わり、祭りの代表格の出店になったとか….……




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