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ツッコミ役は不憫な役割

イチの店は先程の店に比べれば小さく、看板もない。


店とは思えない民家であった。


中へ入ると服より、デザイン画のが多くある。


「紙ばかりです」


お兄さんはお絵描きが上手です。

散らかった紙には人間ばかり書かれてます。

絵本はないのですかね?

お絵描きより絵本のが好きなのです。


「ここは仕事部屋だからな。ウチは基本、オーダーメイドだから」


オーダーメイドは自分だけ服です。

ドレスを着た時、マァムが教えてくれました。


「ドレスは嫌です」


お姫様の格好は苦痛でした。


もう、着ません。


「それじゃあ、間に合わないよ」


オーダーメイドは作るのに時間がかかるそうです。


「そこは僕の腕のみせどころさ。ちょっと、来てくれ」


お兄さんの後に付いて行くと小さな部屋に案内されました。


「ここに、ベースの服とかがあるから好きなの選んでくれ。それを僕がアレンジするから」


小さな衣装部屋にはシンプルな服や小物が置かれていた。


「決まったらまたこっちに、持って来てくれ」


お兄さんは部屋から出ていきました。


「さっきよりはマシのようだね」


きちんと客に選ばせる。


どんなにお薦めでも、客は好みでなければ買わないし、似合わない場合もある。


二人は2日分の着替えと寝間着代わりの服を選んで、イチの元へ戻った。


「おっ、早かったな?どれにし………………はぁっ!?」


「何?」


「なんで同じ服ばかりなんだよ!?他にも色や形が違うのあっただろっ!?」


アレスの服は黒シャツ、黒ズボン。リンも黒のワンピースを三つずつ。

2日分の着替えと、寝間着がどれも同じ服であった。


「面倒だから」

「面倒です」


二人の服を選ぶ基本基準は着やすく、着れればいい。


「素材がこんなに、いいのに…………無頓着過ぎるだろう!!」


嘆くイチ。


デザイナーとしては許せない。


「さっきの服よりはいいよ」

「キンピカな服もキンピカも嫌いなのです」


「………あんな店と比べられても、嬉しくない。どうして黒ばかりなんだよ?喪服でもあるまいし」


「黒だと楽だからね。合わせる必要もないし」

「旦那様と御揃いがいいのです。黒い服は持ってないのですよ」


「………マジでもったいねぇ………………貸せ」


鬼気迫るお兄さんに服を渡します。


鋏、糸、針、布切れ、リボン、釦、他にも色々と取り出すと、もうスピードで縫製するイチ。


神業である。


手が二十三重に重なって見える。


ものの数十分で二着の服が変化した。


アレスの黒シャツの襟とリンのワンピースの裾には銀の上品な唐草模様が刺繍され、ズボンの裾には飾り銀釦が外側、縦に五つ並び。

リンのワンピースには飾り銀釦でとめた白リボンが背中に縦に五つ並んだ。


「これに嬢ちゃんは白のフリルエプロン、兄さんは白のインナー…………畜生、時間さえあれば………」


時間さえあれば、こんなその場しのぎの様な服にはならなかった。


それでも、十分な凄業だ。


シンプルな服があっという間に上品な仕上がりになったが、イチは納得がいかない。


服は人を選ぶ。


イチのデザインは着れる者がいない。


いくらデザイン画を書いても、着こなせる者がいなかった。


だからこそ、オーダーメイドの店を開いた。


人が選ぶ服。


だがそれは自分の服ではない。


それでもいいから、服を作りたかった。


「……………兄さん達の服、最初から作らせてくれないか?」


「明後日に間に合えば構わないよ」

「苦しくて重い服は嫌です」


「その服はどうだ?」

「これならいいのです。旦那様とお揃いなのです」


重くも、苦しくもなさそうですし、それにこれなら一人で着れます。


旦那様とお揃いは嬉しいのです。


「ご注文承りました。必ず明日の夕刻までに仕上げます」


「お願いね。金はそこから好きに遣えばいいよ」


旦那様は財布ではなく小さな巾着をお兄さんに渡しました。お兄さんが中身を確認して固まります。


「少ないかい?」


「………………………何を考えとんじゃあー!!!!!こんな大金が服にかかるわけあるかっ!?」


「足りるなら問題ないね」

「問題だらけだわっ!!」


「それより下着類はないの?」

「っっっっ!ないっ!ここは服屋だぞ!!」


「服があります。下着はいりませんよ?」

「……………それも、そうだね」


「宿に行くのですよ」

「戻ろうか」


何処かで聞いたような会話が、またしても繰り返された。


「どうして、そうなるの!?可笑しいだろ!!服より大事!あっ~!!もう、いいさっ!!」


すぐさま服作りに入りたいが、これは放ってはいけない事態だ。


イチは専門ではない下着に靴下まで作り上げるのであった。




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