事前予約
「嫌なのです」
お祭りのある場所まで、また馬で行くそうです。
馬は嫌いです。
「私が旦那様を抱えて走ります。だから馬はいりません」
「それは俺が嫌だよ」
アレストファ領地の領民は優秀だ。それは魔法使いにもいえる。
アレスの魔力は大きく目立つ。
移動に魔力を使用すれば、すぐに探知される程だ。
今回の訪問は視察をかねてのお忍びである。
管理人のハンソンには、領地に訪れる事を手紙にて伝えたがハンソンに会うつもりはない。
夏祭りの準備に追われるハンソンと会えば、忙しい最中、時間を捻出してまで会わなければならない相手=アレストファ公爵と、他者に疑念をもたらすわけにはいかない。
バレれば盛大に感謝され、祭りの主役扱いになりかねない。また、鼠も警戒して尻尾を出さない懸念もある。
あくまで視察。
普段の様子でなければ視察にならない。
アレスはそれゆえ、今回の外出には魔力を使用するつもりはなかつた。
そうなると、移動手段は馬に限られる。
「馬車じゃなくて、馬だけならいいでしょ?」
それなら馬車よりは速い。
「馬車も嫌ですが馬も、嫌いなのです」
「…………はぁ」
溜め息をつかれても、絶対に嫌です。
でも、お祭りの場所までの移動はどうしましょうか?
抱えて走る案は旦那様が嫌がりますし……
「キュー、キュー」
窓からメェちゃんがやって来ました。
今は重大なお話の最中です。
遊んでられないのですよ。
「メェちゃん、遊びは後でなのです。大変、重大な事なのです」
「キュー?」
マル爺のお家から態々遊びに来てくれたのに、ごめんなさいです。
今度は私が遊びに行きます。
旦那様に連れて行って貰います。
私も一人で行けたらいいのですが、マル爺のお家は歩いて行くには遠いらしいのです。
飛べるメェちゃんが羨ましいのです。
………………飛べる……
「!!そうです!旦那様、メェちゃんですよ」
「はっ?」
閃きました!
「ピーに連れて行って貰うのです!」
ピーも飛べますし、大きいから乗れます。
「翁の魔獣を馬車代わりには出来ないよ。ピーだって主人以外は乗せたがらないだろうし」
「私は乗りました!」
「………………何時?」
あっ、内緒でした。
旦那様が用事でお城に行った時に、メェちゃんだけでなくピーも遊びに来たのです。
空の散歩は楽しかったのです。
でも、ピーが遊びに来たのは秘密だそうです。
秘密の多い女性は魅力的にうつるらしいのです。ピーが言ってました。
ピーの恋愛講座?はよく分かりませんが、旦那様をメロメロ?にする為らしいのです。
旦那様が喜ぶらしいので頑張ります。
「秘密なので内緒なのです」
「…………秘密なんだ?俺だけ?」
「はいです。旦那様をメロメロ?にするまで秘密なのです」
「…………そう。なら、楽しみにしてるよ」
「はいです!」
「移動手段だけど、翁に話してみるよ…………ピーにも聞きたい事が出来たしね」
問題解決なのです。
「メェちゃんと遊んで来ます!旦那様も遊びませんか?」
「また、あとでね。まずは翁に連絡してみるよ」
「分かりました。メェちゃん!遊びますよ。メェちゃんが鬼さんです」
「キュー♪」
窓から飛び降ります。
メェちゃんとの鬼ゴッコは楽しいのです。
飛ぶし、速いし、火を口から出して来るので、逃げるのが大変です。
火を避けて木を燃やしたら、怒られました。
だから火を出すのは禁止です。
代わりに水を出します。
ピーは出せませんが、メェちゃんのお父さんは水竜?らしいので出せるそうです。
庭の水撒きに最適らしいので、使用人達は喜んでいます。
でも水のやり過ぎは駄目なので、注意するよう言われました。
「キューッ!」
メェちゃんが水を出して来ましたが避けます。
「こっちですよ~♪」
メェちゃんとびしょ濡れになって遊びました。
そのあと、マァムが泥だらけになった服を見て叫び、旦那様にお風呂場に連れて行かれました。
旦那様とメェちゃんと一緒にお風呂に入りました。
目にしみない泡風呂は楽しかったです。
【アレス】
マルクスに連絡→ピーのリンに対する教育暴露。
【マルクス】
ピーに問い詰める。
【ピー】
恋愛講座暴露。
【マルクス】
項垂れる。
【アレス】
ピーに領地まで乗せて貰えないか打診する。
【ピー】
快く引き受ける。
マルクスはピーまでもリンと遊んでいたのを知りませんでした。
除け者にされて寂しいのと、孫に恋愛は早いと、思うも講師担当が己の娘なので強く言えません。
ピーはリンもアレスも本心から気に入っていますが、一番は、マルクスと親しく接してくれる唯一の人間だから嬉しいのです。
恋愛講座はリンとアレスをからかって遊んでいます。
その代わり背に乗せるのを許可しました。マルクスはピーがいいなら、それでいいのです。と、いうか一緒に行きたがりました。




