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不穏な手紙

今日も旦那様はお仕事です。


でもお城には行きません。お部屋で書き物をしています。


私も同じ部屋で絵本を読みます。

旦那様の絵本です。


人間が逆さまに吊るされていたり、針の上に座っていたりしますが、楽しいのでしょうか?


健全な遊びではないのです。


動かない遊びは、遊びではありません。


「旦那様、この遊びはつまらないのですよ」

「それは逃がさないで、会話を楽しむモノだからいいんだよ」


「お菓子とお茶がないのです」

「菓子に夢中になり過ぎて、会話が出来なくなると困るでしょ」


「!納得です」


お菓子は魅力的過ぎます。

食べてる間は確かに、お話は出来ないのです。


でも、つまらない絵本です。


他の絵本を探しましょう。

本棚を漁りますが本が多すぎです。


「絵本はどれですか?」

「その本、見ないの?…………あと絵がある本はこれかな………はい」


書き物を一時中断して旦那様が絵本を渡してくれました。


「ありがとうです」


さっそく、開きます。


題名は'はんざいてはいしょ'です。


人間の顔ばかりですね。


さっきの'ごうもんりれき'も人間でした。


旦那様の絵本は人間ばかりしかないのですか?

今度、私の絵本を貸してあげます。


コンコンコン


ドアがノックされました。


マァムです。マァムの気配と匂いがします。

でも、おやつの時間には早いのです。

お茶だけでしょうか?


「何?」


「先程手紙が届きましたので、お持ちいたしました。お茶もありますし、休憩されては如何でしょうか?」


「入って」

「失礼いたします」


マァムが持つトレイから紅茶とミルクの匂いがします!


「ミルクです!」


「先に、リンにあげて」

「畏まりました。お嬢様、蜂蜜はお入れしますか?」


ハチミツはドロドロの花の蜜です。


ミルクが甘く美味しくなります。かき氷、パン、アイスに掛けても美味しい万能薬です。


そのままでも勿論、美味しいのです。


「入れてください!……………ハチミツ、舐めちゃ駄目です?」


マァムがミルクにハチミツを入れながら、スプーンでかき混ぜます。

壺の中にはまだ、余ったハチミツがあります。

欲しいのです。


「ベタベタになるから駄目だよ」


「お茶の時間になりましたら蜂蜜菓子をお出しいたしますわ」


………おあずけですか。


「………分かりました。ミルクありがとです」


ミルクで我慢します。

熱いのでフゥーフゥーしながらチビチビ飲みます。

美味しいのです。


「こちらが手紙になりますわ」


手紙と紅茶がテーブルに置かれる。

アレスは紅茶を片手に手紙の差出人を確認する。


アレストファ公爵家には毎日大量に手紙が届けられる。婚約後はさらに増えた。だが、アレスが直接手にする手紙は極僅かだ。

悪質な手紙もあるので、まず使用人が読み、それからアレスが必要性を感じない、社交関係の手紙に詫び状を返送するのが使用人の仕事の一つであった。勿論、手紙は保管しアレスに報告もしている。


それ以外の、必要性のある手紙。


「管理人からか…………」


差出人の名前はディル=ハンソン。


アレストファ公爵家所有領地の管理人からであった。

手紙はすでに内容が確認された状態で、ペーパーナイフは要らない。そのまま封筒を開け、便箋を読む。




アレストファ公爵様、御元気でしょうか?

領地は公爵様のおかげで過ごしやすい環境にあります。

我々領民一同、心より感謝申し上げます。

この度、例年同様に夏祭りを催します。

つきましては御参加して戴きたいと思い手紙を送らせて頂きました。

良い御返事をお待ちしております。




「可笑しいね………ハンソンが手紙ね」

「ええ、あの方が手紙ですわ。手は本人のものですが……」


領地では毎年、春夏秋冬の祭りが行われるがアレスは参加した事がない。


アレストファ公爵家は最低限の衣食住に加え、教育、医療、衛生管理を提供し放置した。


人が育める土台にはした。


後は領民次第。


ここまでして貰って、何も返せずのうのうと生きる程、領民の面の皮厚くなかった。


農業者は農作物と畜産の改良研究し、医者はより多くの知識と技術を学び、職人は己の腕をみがき、商人達は領地に様々な情報もたらした。


その集大成を次世代に伝授する。


人が人を育てる。


結果、アレストファ公爵家の領民は優秀な人材ばかりになった。


それでも、アレストファ公爵家は干渉しない。


それなのに、報告書ではなく招待状がきたのだ。


「報告書に書けず、公爵(オレ)の干渉が必要な事態か………」

「どうなさいますか?」


深刻な顔で問い掛ける。

アレスは少し考えてから、ミルクを飲むリンに聞いた。


「…………リン。夏祭り、行きたいかい?」

「お祭りですか?大きい花火は嫌です」


「花火は夜だから、その前には帰るよ」

「旦那様はお祭りに行くのですか?」


「行くよ」

「なら行きます」


花火のない祭りとは、何ですかね?

楽しいのですか?

よく分かりませんが、これも経験なのです。

花火のないお祭りに行きます。

ところで、ミルクがなくなりました。

やっぱりハチミツ、舐めちゃ駄目ですかね?






次の日から書類部屋の本棚に【拷問履歴】【犯罪手配書】と、書かれた資料本の間にリンの絵本が入れられていた。




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