魔獣召喚師はお爺ちゃん7(番外編)
思いがけない帰り道編
お家に帰る前に旦那様が町でボールを買ってくれるそうです。
嬉しいのです。
猫じゃらしにボールは最強装備なのです。
「どれにするの?」
色とりどりのボールがお店に並んでいます。
迷います。
「……………これにします!」
選んだのは明るい原色、パステルカラーから逸脱した黒色のボール。
「嬢ちゃん、それにするのかい?そりゃ、売れ残りだ。珍しい色だったから1つ、仕入れてみたはいいがいっこうに売れんでな。買うんなら安くするよ」
店員の言葉に喜ぶほどアレスは金には困っていない。
普段のアレスもリンも服装に拘りがないせいかラフだ。
アレスはシャツにズボン、リンはハイウエストロングワンピース。
下級貴族または商人程度の服装だが、見るものが見れば生地が一級品であることがすぐ分かる。
だがアレストファ公爵家ほどの貴族が町で買い物などしないし、ボールなど買わない。
貴族の買い物は、商人が邸に伺い購入するのが普通だ。
先入観のせいで生地が一級品であっても、そこまで気付かない。
「それでいいの?他にもあるよ」
「このボールがいいのですよ」
「?そう………ならこれ頂戴」
「あいよ!銅貨5枚だが3枚にまけるよ!」
アレスは銅貨を渡しボールはリンがうけとると店を出た。
今度のボールは軽いのです。これなら弾みます。
お家に早く帰るのです。
でも、人間が多い場所では旦那様の移動は出来ません。人間達ががビックリしちゃいます。
「早く帰りましょう、旦那様!猫じゃらしと旦那様ボールで遊ぶのです!」
「……………俺、ボール?」
「はいです!旦那様ボールです。旦那様の色なのです」
旦那様と同じ毛色なのです。
緑色でも良かったのですが、旦那様は今日も黒服です。
ボールと猫じゃらしのぽんぽんと、お揃いなのです。
私の服は黒がないので、お揃いは嬉しいのです。
「 'ぺあるっく' なのです」
恋人同士はお揃いの色をつけるのです。テレビでやってました。
「………合っているけど、間違ってもいるね」
「??どっちですか?」
旦那様は相変わらず難しい言葉を遣います。
でも、いいのです。
「早く帰って、遊ぶのですよ!」
旦那様の腕を引っ張って、人間の気配がないところに向かいます。
「っ!居たっ!!嬢ちゃん!あの時の嬢ちゃんだよなっ!?」
知らない人です。
「誰ですか?」
「俺だよ!!ボールをやっただろっ!?」
「ボール?………ああっ、メェちゃんですか!」
「誰っ、それ!?いや、まぁいい。嬢ちゃんにやったボール、返してもらえなねぇか?」
メェちゃんはマル爺の孫なので駄目です。
この、ボールもあげません。
どうしましょう………
「旦那様………」
「何やってんだよ!早く脅すなりなんなりして奪え!!嬢ちゃん、痛い目にあいたくないだろ?なら早く返しな」
もう、一人の男が乱暴にリンの腕を掴まえようとしたが、アレスがそれを遮る。
「汚い手で触らないでよ」
「ちっ、お前には関係ねぇだろ!俺はそこの嬢ちゃんに用があるんだよ!!優男は引っ込んでなっ!!」
「煩い」
「!!!!!!」
魔力で黙らせる。
男は声も出せず驚愕する。
「ま、魔導師!?なんでこんなとこに!!」
「それこそ、関係ない。それに君達の探し物はもう、ないよ…………………リン、目玉焼きは美味しかったかい?」
「???美味しかったです!」
「食べたのか!?」
「???卵は食べ物ですよ」
何を言っているのでしょう?
目玉焼き、食べたかったのです?
でも、今はないのです。
お兄さん、凄く残念そうです。
そんなに食べたかったのですね。
「君達の罪状は傷害未遂、盗難、王宮への不法侵入、脅迫だね。余罪もありそうだね」
「なっ!?」
「釈放されても安心しないことだね。どの時代でも、母親とは恐いものだろ?」
「それは、お前らが………」
「知らないよ。俺とリンは、何も知らない」
それを最後に、男達は文字通り凍りついた。
リンが氷付けにされた男達をツンツンつつく。
「冷たいのです。死にました?」
「仮死状態だよ。連絡したから警備隊も来るし、帰るよ」
「はい!…………旦那様、かき氷が食べたいのです」
氷を見たら食べたくなりました。
冷たくて甘いのです。
氷のザラザラが口で溶けます。
苺が入ってないのに、赤くて苺味でした。
「かき氷ね。まぁ作れるかな………流石にシロップはないからジャムで代用すれば………」
男達の事などすでに眼中になく、かき氷に意識が囚われている、アレストファ公爵と夫人は邸へと帰っていった。
数年後、釈放を嫌がる男達は強制釈放されたが、魔獣襲撃の恐怖に苛まれ、心を病み自殺した。




