魔獣召喚師はお爺ちゃん5
邸の中に入るなり、シェリーとマルクスは正座をさせられていた。
シェリーとマルクスの前には、蒼髪金眼の美女が仁王立ちしている。
「シェリーはんは何してはるんどす?こないな魔力が大きい人間が、アレスはん以外おるわけありまへんのに。気付かんとは………それでも三頭犬どすか?そないな記憶力もない頭ならただの犬で十分どす。脳ミソ二つもいらん。削ぎ落としてきなはれ」
「……………すまぬ」
「主様も王宮に行くならシェリーはんと行きなはれ。うちはドラゴンどすえ、心配はいらへん。主様はうちらがおらんと脆弱な人間なんよ。何も出来ひんくせにアレスはん達に迷惑をかけたん?」
「……………すまん」
美女、ピーが笑顔でお説教をする。
怒り任せに怒るのではなく、相手の否を穏やかな笑みで諭す言い方なので、諭された方は萎縮し余計に恐がる。
「はぁ…………アレスはんもおひいさんも堪忍ね」
ピーは深々と頭を下げ謝罪する。
「メェちゃんのお母さんなのです?」
メェちゃんと似た匂いがします。
「ええ、その子の母どす。うちはルピーナ、ピーでええどす。あちらの駄犬がシェリアンヌのシェリー。おひいさんは?」
「リン=アレストファです。メェちゃんはメェちゃんなのです」
「メェどすか、ええ名どす。おひいさんもよろしゅう」
おひいさんはお姫様のことらしいです。
旦那様のお姫様だからピーはそう呼びたいそうです。
私は旦那様の婚約者で恋人でお姫様なのだそうです。
お姫様、嬉しいのです!
「アレスはんもおひいさんもゆっくりしていっとくれやす……………二人共、何時までも床に座ってへんで御茶くらいお出しなはれ」
「「え''!?」」
「……………」
「今すぐ持ってくる!!」
「我も!!」
マル爺もシェリーも慌てて部屋から出ていきました。
お菓子もありますかね?
「キューキュー」
「メェちゃんどうしました?」
メェちゃんが私の後ろに隠れて出てきません。でもチラチラとピーを見ては、目が合うと隠れてまた見るのを繰り返しています。
変な行動です。
メェちゃんを無理矢理掴み、ピーが見えるよう正面に出してあげます。
「キューッ!!!」
翼がバサバサと羽ばたかせて、長い首を振って抵抗しましたが離してあげません。
「メェちゃんのお母さんですよ?」
嫌なのですか?
「おや、まぁ……」
ピーが嬉しそうに笑っています。
「メェ、おいでやす」
手をメェちゃんに触れない程度に伸ばします。
メェちゃんは暴れるのをやめて、伸ばされた手を見ると、首を伸ばして匂いを嗅ぎました。
「キュー」
手を舌でペロリと舐めてからピーに抱きつきました。嬉しそうです。
「クスクスクス、メェは、ほんに恥ずかしがりやな~」
ピーがメェちゃんを抱きしめながら可笑しそうに笑います。メェちゃんは首をピーの胸に埋めるようにイヤイヤしていますが、爪をたて離れずにいたので嫌ではないみたいなのです。
恥ずかしいとはなんでしょうか?
「旦那様、恥ずかしいとは何ですか?」
「…………………」
旦那様が無言で顔を近付けて来ます。
何ですか?
「口開けて」
言われた通りに開けます。
お菓子でもくれるのですか?
「ぅむっ!!!」
顎を掴まれてから旦那様の口で口を鬱がれました!
「ッ!~~~~~!!!」
口の中に柔らかいのが入ってきました。
柔らかいのは、ねっとりと動き回ります。
舌を絡め取り、吸い付いては絡んできます。
呑み込めない涎が口から垂れるのも構わず、旦那様は離してくれません。
息がしずらいのです!
旦那様は私を殺す気ですか!?
旦那様の肩をポンポン叩き、もうやめるよう訴えます。
「っん…………ぷはぁ………はぁはぁはぁ」
最後に唇と顎についた涎を舐めとると、やっとこ離してくれました。
「どう?」
何やら旦那様の顔が見れません。
モヤモヤします。
旦那様の胸にしがみつき、顔をあげたくありません。
……………メェちゃんと同じなのです。
これが恥ずかしいですか!?
でも、メェちゃんは口を鬱がれてませんでした。
でも、このモヤモヤは恥ずかしいであっている気がします。
「…………恥ずかしいのです。モヤモヤします」
メェちゃんと同じ様に旦那様の胸でイヤイヤします。
少し落ち着きます。
旦那様はクスクスとピーと同じ様な、笑い声が上から聞こえてきます。
笑った振動が伝わります。
気持ちいのです。
「嫌だった?」
からかうような声で聞いてきます。
声をあげず、首を振ります。
嫌ではないのですが、まだ顔はあげられません。
「アレスはんもおひいさんも仲が宜しゅうおすな~」
「キューッ♪」
ピーもメェちゃんも見てました。
ますます恥ずかしいのです。
旦那様は優しく頭を撫でてくれます。
ガッシャン!ガラガラ………パリンッ
大きな音がしました。
旦那様の顔は見ずに、しがみついたまま音のした方向を見ます。
マル爺がお茶を盛大に落とし、カップが割れて床が水浸しになっています。
シェリーもクッキー皿を落としてクッキーがわれて粉々です。
マル爺はワナワナと震え、シェリーは固まっています。
「お前は何をしとるんじゃー!!!!!!」
マル爺の怒鳴り声が響き渡りました。
何を怒っているのです?
お菓子が勿体ないのです。
マル爺もシェリーも見たのですか?
ちゅーは嫌ではありませんが嫌になりました。
恥ずかしいのです。




