魔獣召喚師はお爺ちゃん3
2つの皿の上には黄身が潰れて焦げた目玉焼きと綺麗な形の絶妙な半熟目玉焼きがテーブルに置かれ、アレスは前者のを食べ、リンは後者のを仲良く食べていた。
「旦那様、美味しいですか?」
「美味しいよ。注文通り完熟だね」
卵が腐っていない限り、目玉焼きに美味しいも不味いもない。
リンの初めての手料理は、見た目は最悪だが味は芳ばしい目玉焼きだ。
もともとアレスは食に煩くない。基本、食べられるならキャットフードでも文句を言わず食べられる程、食に無関心で料理人泣かせであった。
ちなみに余談だがリンがアレストファ公爵家に来て、一番喜んだのは料理人だ。菓子の腕まで奮え、リンに絶賛されるのがまた嬉しいらしい。
「キュー」
「メェちゃんも旦那様の目玉焼きが食べたいのですか?」
目玉焼きを小さく切った物をフォークに刺し、口まで持っていくとパクリと食べた。
「キューッ♪」
「メェちゃんも旦那様の目玉焼きが美味しいみたいなのです」
「そう」
「美味しのです。ねぇ~」
「キュー」
二人と一匹は和やかに過ごしていた。
「なんじゃ、なんじゃ!儂は除け者か!?儂もまぜてくれっ」
「目玉焼きは2つだけなのですよ」
それに、もう食べ終わりました。
完食です。
「貴方、まだ居たの?用は済んだし、帰りなよ」
「お客様はバイバイなのです~」
「キュー」
マルクスを空気の様に扱い、今頃存在気付いた様にアレスが冷たく帰りを促し、リンは手を振り、メェは尻尾を振る。
「孫が冷たい…………アレスもちぃ姫も酷いのじゃ…………………………ところでちぃ姫、メェちゃんとは、もしや………………」
「メェちゃんはメェちゃんです。ねぇ~?」
「キューッ」
勝手にドラゴンに名付けたリン。
ドラゴンもすでに自分の名前だと認識してしまっていた。
「儂が一晩中考えていた名前が……………」
孫にも冷たくされ、考えてた名前さえ付けられず、マルクスは悲しさの余り目尻に涙が浮かぶ。
「なんでメェなの?」
「目玉焼きのメェちゃんです!」
ボール→卵→目玉焼き→目玉→目→めぇ→メェ→メェちゃん
短くしたら、こうなりました。
「長い名前は覚えられません。短いのがいいのです」
リンはマルクスの名前さえ覚えられません。
興味もないし、長いから無理です。
「シェリーやピーよりはマシだね」
「なんじゃと!?」
三頭犬の正式名シェリアンヌ
ドラゴンの正式名ルピーナ
名前だけだと貴族令嬢の名前に聞こえるが、上級魔獣の名前だ。
「シェリーは女神、ピーちゃんは天使からとった名前じゃぞ!!」
「由来からして可笑しいよ」
何処の魔獣に神やら天使の名前をつける輩がいるの?翁ぐらいだよ。
メェの目玉焼きの名前のが由来的にはまだ、納得出来る。
リンの行動はかなり印象的だ。
「そんなことより、帰りなよ」
「儂だって帰りたいわ。じゃがメェちゃんがの………」
チラリとリンを見ると、二匹は楽しそうにじゃれあっていた。
「リン、翁が帰るらしいからメェを渡しなよ」
メェちゃんともっと遊びたいですが、旦那様に言われたので渋々、お客様に渡しに行きます。
「キューッ!!!!」
「………離さないのです」
ドレスに爪をたて、噛み付いてまで離れません。
お客様が嫌みたいです。
「……………メェちゃん……」
お客様がメェちゃんの名前を呼びながら、両手両膝を床につけて蹲ってしまいました。
「メェちゃん離すのです。お客様はメェちゃんのお爺ちゃんなのですよ。家族には優しくするのですよ」
「キューキューキュー」
何を言っているのか分かりません。
メェちゃん語は理解不能です。
「おおっー!そうか、そうか、ちぃ姫もな」
マルクスは復活した。
お客様にはメェちゃん語が分かるみたいです。
「そうゆうワケじゃ、アレス、ちぃ姫をちとっ借りるな?」
私は物ではないのですよ!
「どんな理由か知らないけど嫌だよ」
「私、物、違う」
「メェちゃんがちぃ姫と一緒じゃないと帰らんと言うんじゃ」
「ならメェだけ置いていきなよ。翁だけ帰れば?」
「そんな殺生な!家には儂とメェちゃんの帰りを待つシェリーとピーちゃんがいるんじゃぞ!?」
「………キュー」
お客様とメェちゃんの目が潤んで今にも泣きそうです。
爺と孫はソックリなのです。
「…………はぁ、リンと家まで送るよ。これでいいかい?」
また、誘拐されても困るからね。
どうやら、お客様とメェちゃんのお家に行くみたいです。
初めてのお宅訪問です。
「さすが、アレスじゃ!話が分かるのう」
「キュー♪」
「はぁ……………」
旦那様は最近、溜め息が多くなりました。
お疲れなのです。
帰ったらお菓子をあげようと思います。
疲れた時には甘い物です!
「久し振りの人間の客人じゃ、シェリーもピーちゃんも喜ぶじゃろ」
「今度は私がお客様なのですね!」
「そうじゃ!ちぃ姫は客人じゃからのう、儂のことはマルクスお爺ちゃまと呼んでおくれ」
「長いから嫌です」
「気持ち悪いね。貴方なんか翁か老い耄れで十分だよ」
「嫌じゃ!可愛くない!」
「元から可愛さの欠片もないのに、何を期待しているの」
「孫にはちゃま付けで呼ばれたいんじゃ!」
「翁の孫はメェだろ」
「ちぃ姫は孫みたいなもんじゃろ」
お爺ちゃんが出来たみたいです。
でも、名前が長いのです。
「マル爺でいいですか?」
「ちゃまは駄目かの?」
「長いのです。呼びずらいのです」
「うむ、まぁええかの」
マル爺がお爺ちゃんになりました。
「私、マル爺の孫ですか?」
「うむっ」
「メェちゃんもです?」
「うむっ」
「旦那様も?」
「うむっ……………………!!!!!!!イヤッ!!アレスは違うぞ!!!!」
「旦那様は婚約者なのですよ?孫、違うのです?」
「んっ??そうじゃったな……………んん~アレスも孫じゃ」
「マル爺、孫いっぱいになりました!」
「そうじゃな~家族は多い方が良いのう。儂とシェリーとピーちゃんに孫三人、大家族じゃ!」
和気藹々と家族の和が勝手に広がっていく光景に、アレスは再び溜め息をついた。
「キュー?」
メェがアレスを見て不思議そうに鳴いた。




