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魔獣召喚師はお爺ちゃん1

花火を買ってお家に帰りました。


「お帰りなさいませ」

「ただいま」

「ただいまです~マァムが言ってたピンクのお店に行ってきました。'パフェ'は美味しいのです。あと花火買いました!ボールも貰ったので遊びましょう?それから………」


マァムに駆け寄って今日あったことを報告します。


「楽しかったようで何よりですわ…………あの店にアレス様をお連れして行けるのはお嬢様だけですわね」


クスクスとマァムが旦那様に笑いかけます。


「はぁ、もう行きたくないね」


私は行きたいのです。

'パフェ'も花火もストローも良かったです。これでカーテン登りが出来たら最高なのです。


「駄目なのですか?」

「…………………パフェは料理人にでも作って貰いなよ。花火もパフェにあったのより綺麗だよ」


「ストローがないのです」

「…………ストローを2本させばいいだろ?」


おおっ!その手がありました。

さすが、旦那様です。


「お話の途中に申し訳ありませんが、アレス様にお客様がお見えです」

「誰?」

「マルクス侯爵様ですわ、応接室にてお待ちしております」

「翁が?………珍しいね」

「私共では応対出来ませんのでアレス様がお茶を運んで頂けませんか?」


「…………リンに運ばせて。先に行ってるから」


旦那様のお客様のようです。

初めてのお客様なのです。

しっかりお茶を運びたいと思います!


旦那様は先に応接室へ、私は食堂へマァムと向かいます。


食堂にはすでにマァムが用意したお茶やお菓子が置かれたワゴンがありました。

ボールを脇の下でどうにか抱え、ワゴンを押します。


「お嬢様、ボールをお預かりしますわ。お部屋に置いておきましょうか?」

「大丈夫なのです」


応接室でボール遊びするのです。

ワゴンは私が旦那様に頼まれたので頑張るのです。


応接室に着きました。

マァムは居ません。お客様が近寄るのを禁止されているらしいです。


ドアが開けられないのです。


「旦那様、お茶です。開けて下さい」


「………っ!…………れ!!」

「………よ………………いの…」


ドア越しにお客様の叫び声がします。

喧嘩ですか?

旦那様が虐めてるのでしょうか?

はっ、もしかして遊んでいるのですか!?

狡いのです!私が先に旦那様とボールで遊ぶのですよ!!


「開けて下さい!私だけ仲間外れは狡いのです!」


「!!!!!」

「………リン?」


旦那様がようやく開けてくれました。ついでにワゴンも押してくれます。


父みたいな(老人)男の人がソファーから腰をあげて、此方を見てきました。


私は睨みます。


「旦那様は私とボール遊びするのです!お客様はお茶でも飲んでるのですよ!!」


私は怒っているのです!

私が一番に遊んで貰うはずでした。


「…………儂は遊んどらんよ?」

「…………こんな老い耄れとは嫌だよ」


「…………なら良いのです。じゃあ喧嘩ですか?旦那様、勝ちましたか?」

「喧嘩もしてないし、こんなの相手にさえしないよ」


「儂は猛烈に悲しいぞ…………陛下より話は聞いている。お嬢ちゃんがちぃ姫か?本当に小さいのう」

「小さくないのです!これから大きくなるのです!旦那様を越えるのです!!」


人間の成長は遅いのです。でも大きくなります。私が大きくなったら旦那様を抱えてあげるのです。


「……………無理、じゃろ」

「……………無理、だね」


「無理じゃないのです!!」


旦那様まで酷いです。

もう、知りません!

ボールで遊ぶのです。


コロコロと転がる黄色のボール。

追いかけてながら意地焼けて、応接室で一人で遊ぶリン。


「怒らしてしもうたか?」

「そのうち、遊びに夢中になって忘れるよ」


マルクスが不安そうにアレスに問うが、問題ないらしい。実際にリンは転がるボールを夢中になって追いかけている。寂しいらしく応接室からは出ていかないが、すでにもう、マルクスには興味の欠片もない。


「……………可愛いのう」


「人間嫌いが何言ってるの?使用人達でさえ嫌がって近寄らせないのに」

「人間は好かん

マルクスは例外を除けば、大多数の人間が嫌いであった。

会うのも、話すのも、そこに存在するのも嫌がる。同じ人間なのに人間嫌いの老人。


普段は人が入ることの出来ない山奥に住み、けして町や村などに下りない老人がアレスを訪ねて来た。


「で、何があったの?」


会った途端、叫び出して要領なく話し出すから何を話したいのか要点が掴めない。

完全にコミュニケーション不足だ。


リンより酷かった。


「先程、話したではないか!?ピーちゃんの子供が誘拐されたから探してくれ!初孫なのだ!私とシェリーの!可愛い孫が!!」


「……………だから、貴方は結婚もしていないのになんで、孫が存在するの?」

「愛の形は結婚が全てではないのだよ。若人が」


「……………で、ソレって人間なの?」

「ソレとはなんじゃ!?ソレとは!!私の可愛い孫が人間で在るわけなかろうっ!!!」


「…………やっぱりね。魔獣か………」

「魔獣とはなんじゃ!?シェリーも、ピーちゃんも、孫も、儂の大切な家族じゃぞ!!」


マルクス侯爵または稀代の魔獣召喚師。


人間嫌いを反動に魔獣をこよなく愛する変人だ。


人が召喚出来る魔獣は一匹のみ。しかも低級から中級までの魔獣だ。上級魔獣は人の手におえない。下手に召喚出来ても喰われるのがおちだ。


それが通例であるはずが、マルクスは違う。


召喚魔獣は2匹で2匹共上級魔獣しかも、もう一匹増えた模様。でだ、マルクスはそんな奴等と一緒に暮らしている。召喚後は元の棲みかに返すの普通だ。


新しい魔獣はアレスは知らないが2匹なら知っていた。


シェリーは三頭犬。言葉の通り、巨大な体に頭が3つある犬で牙に毒があり、口から業火の炎を吐く。

ピーちゃんはドラゴン。これもまた巨大な体に鱗と蝙蝠のような翼を持ち、口から蒼い炎を吐く。


どちらか一匹だけでも伝説上の最上級の魔獣で容易く国を滅ぼす威力があり、しかも頑丈だ。


魔獣召喚師を始末すれば魔獣は棲みかに勝手に帰るのが契約だが、マルクスは契約しない魔獣召喚師だ。しかも暑苦しいまでの過度な愛情を捧げる変人だ。


だからマルクスを始末すれば間違いなく国は滅びる。


愛情には愛情で還すのが家族だ。契約もしないマルクスが喰われずに、今なを生きているのが証拠であった。


魔獣召喚師は魔獣が居なければ只の人だ。魔法使いにも劣る。


「アレスならピーちゃんの魔力も知っているから、孫も探せるかと思うてな………」

「魔力は似ていても同じ魔力は存在しないよ。俺では探知出来ない。それに貴方の魔獣達に探させれば?」


「ピーちゃんは産後の経過が良くなるまで安静なんじゃ。初産だったしのう。シェリーは孫の匂いが分からんから探せんし、今はピーちゃんに付き添って貰っとるのじゃ………」

「そもそも、なんで誘拐されたの?子供とはいえ魔獣でしょ」


「それがの…………」


初孫を自慢したくて報告(魔獣召喚師は国に魔獣登録、申請するのが義務)をかねて王宮に行ったはいいが、久し振りの王宮には当たり前だが多くの人が居り、人嫌いのマルクスは酔った。


陛下やアレスは何故か平気だが(リンは仔猫認識)他は駄目だ。また孫が重く、腰や腕が痛くなり、人気のない王宮の池がある庭で座って休んでいたら何者かに池に落とされ、孫が連れて行かれた。


「びしょ濡れのまますぐに探したが見つからんかった………陛下に相談したらアレスなら見つけらるかもと………儂、自慢じゃないが人間の相談相手は少ないのじゃ」


「…………………」


(人気のない池って、あの池しかないよね)


リンが子豚達を洗い、男達に魚を捕らせようとした。


「子供の特徴は?子供のドラゴンなら抵抗もするし目立つから、すぐに分かるだろ」

「大きさは30cmほどでな、硬くて、重くて、ツルツルの卵肌じゃ。まだ抵抗は出来んよ」

「結構小さいね。抵抗出来ないなんて子供のドラゴンは弱いの?」


上級魔獣の生態は知られていない。普通は契約が出来ないのだから当たり前だが。


「卵だから無理じゃ」


「……………………タマゴ?」


「うむ、黄色の卵じゃ。ほれ、ちぃ姫が遊んでいるボールみたいのじゃよ」


「……………………」


荷馬車での男達の会話を思い出すアレス。


ガンッ!メキッ!


その時リンが遊んでいたボールがドアにぶつかった。


ボールがする音ではない。


ドアが凹んでいる。


リンは音やドアを気にせず、絨毯の上でボールを転がし夢中で追いかける。


「…………………リン」


旦那様が呼んでいます。


「旦那様も遊びますか?」


ボールを抱えて近寄ります。


「ソレ、貸して」


差し出された手にボールを渡しますが、旦那様はボールを落としてしまいました。


ガンッ!コロコロコロ……………


「……………………」

「……………………最近のボールは鉛で出来ているのが流行りなのか?」


コロコロと落ちて転がるボールを追いかけるリン。


「そんな、流行りはないよ」

「なら、あれは…………」

「お探しの卵のようだよ」


大の男が片手で持てないほどのボールなど必要ないだろう。


「中身は無事かわからないけど………」


さっきからずっと、転がして遊んでたしね。


「!!!!!!!!」


アレスは落としたことを棚にあげて気にせず告げる。


夢中で遊ぶリンからボールを取り上げるのは誰だって嫌だ。本人にとってはただ、楽しくボール遊びをしているだけである。


アレスはリンの好きにさせたままマルクスを放置することにした。


「疲れた…………」


普段は余り食べない菓子を摘まみ紅茶を飲み、一息つくアレス。


茫然自失のマルクス。


ボールを追いかけるリン。


無言の空気の中、ボールがコロコロと転がる音だけが応接室に響いた。




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