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初めての王宮11(番外編2)

リンの遊び映像編




首輪が映写機になり映像が白い壁に写し出される。


初めは憤りを見せていた二人も、リンの遊びが始まってからは国王は茫然と、アレスは頭を抱えながら証拠映像を無事最後まで鑑賞し終えた。


「……………ちぃ姫の遊びは過激だな」

「……………約束は守ったようだけどね」


リンの頭を撫でながら褒めるアレスは達観していた。


「今度は守りきりました!」

「うん、偉いね」


おかげで犯罪者は生きてる。重傷ではあるが……


約束がなければ、死んでいただろう。

しかも虐殺だ。


猫は鼠を狩る時にすぐは殺さず、わざと傷を負わせ逃げ回るさまを楽しみながら、時間をかけてから狩る動物だ。

食べない獲物を狩り、持ち帰るのは楽しかった気分のお裾分けだ。


お土産なのだ猫にとっては……


喜んで欲しくてお土産を持って来た猫を叱るほど狭量ではないアレスはリンの気持ちを理解し、褒めるのを忘れない。

使用人達も心配はするが理解している。


「……アレストファ公爵家の教育方針に不安を感じるのは私だけか?」

「猫だからね………今回は持ち帰らなかったね?魔物や花は持ち帰ったのに…」

「ドレスが汚れるのです。お家にはお菓子があるからやめました」


「ハハハハハッ!ちぃ姫にとっては彼奴等は菓子以下の存在か」

「菓子に失礼だよ………存在価値もないね」


「これだけの証拠がある以上、あの女一味も言い逃れ出来ん。尋問する必要はないではないか?」

「証拠を先に見せたら諦めて謝罪するだろ。反省する者を嫌がらせ程度で重罪には出来ないよ。良くて幽閉止まりが限度だね………」


「嫌がらせか?あれが?」

「未遂だよ。リンに実害がない限りね」

「………………」


「だから、嵌める」


「………………あの女はお前の何処に惚れたのだろうな………」

「知らないよ。知る気もない。リンも言ってたでしょ………」


俺の婚約者はリン=アレストファだよ。









その後編




王宮であの方とお会い出来たのは正に運命。


漆黒の艶やかな髪に、深い翡翠色の瞳の美しき魔導師アレストファ公爵様。


陛下が信頼する臣下でありながら御自身も王位継承権を持つ王族でもある高貴な御方。


私はロデオ伯爵の娘。

伯爵の位を父に持つ令嬢なら公爵様につりあえる。


私なら公爵様に相応しい。

私だけが公爵様に相応しい。


公爵令嬢も侯爵令嬢よりも私の方が………。


私だけの公爵様。


御父様にお願いして王宮にやりたくもない淑女教育を受けるのも、公爵様に少しでもお会いしたいから。


公爵様は夜会には出ず、王宮にも滅多には来られないのに、昨日から連日王宮にいらしている。


また、お会い出来た。また……………。


夢のような1週間。


そう、夢のように嬉しかった。


夢から醒めるまでは…………。


御父様から公爵様に婚約者が出来たと報告されるまでは…………。


何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、なぜっ、なぜっ、なぜっ、なぜっ、なぜっ、なぜっ、ナゼッ、ナゼッ、ナゼッ、ナゼッ、ナゼッ、ナゼッ、ナゼッ!!!!!!!!!!


どうして、私ではないのっ!!

しかも庶民の娘ですって!?


貴族でもない、ただの娘。

相応しくない、相応しいはずない。


……………………許せない。許さない。許されるはずない。


陛下主催の夜会に公爵様が婚約者を伴って出席する。今までも陛下主催とはいえ夜会に参加されなかった方が!


あの、娘が我儘を言ったのだわ!


老婆のような髪もつり目な青い瞳さえ卑しい、幼い娘がっ!


公爵様に相応しくない!

騙されてるのだわっ!


………あんな子、いらない!イラナイッ!死ねばいいのよ!


そしたら、私が公爵様の婚約者に…………


だから毒を盛った。

だから取り巻きとダンス中に嫌がらせをした。

だから金で雇った男に襲わせた。

全ては公爵様のため…………


なのに、ナノに、ナノニッ!!


あの女のせいでっ!!!


牢に入れられたメディアは命の終わりに向けて時を刻む。

残された時間は極僅か……


暗い牢に響く足音。


「…………… 公爵さ…ま」


「これより刑を執行する」


アレスがメディアに目もくれず、淡々と宣言する。


「公爵様、公爵様、公爵様っ!」

「………君、煩いよ」

「私はただ、ただ、貴方をお慕いして…………貴方の為に………!!!」


「黙りなよ」

「………………!!!!」


魔力で言葉を封じる。


「コレ、あげるよ」


牢の中に何かが入れられゴロリと転がる。


「さっき死んだよ。君の父親」


「!!!!!!!」


ソレから離れながらも目が離せないで、涙を流すメディア。


牢に入れられたのは首。


ロデオ伯爵の生首であった。


「君もだけど、無知ほど恐いもの知らずはないね」


不思議に思わないのか。


庶民の死罪は貴族が裁き、貴族が命令し庶民が処刑する。


なら貴族、王族は?

国王陛下が裁き、誰が処刑する?

もし、国王陛下が罪を犯し死罪なら?

アレストファ公爵家が裁き、誰が処刑する?

執行する者は誰?


裁かれる場はある。

だが死刑執行する場はない。


罪状が言い渡され、執行されたとの報告しかない。


死刑執行人は誰が行う?


貴族、王族を処刑することを赦された者。


アレストファ公爵家は罪人を裁く者。

罪が露見し裁かれた結果、処刑される。

唯一、国王陛下でさえも裁くことが出来る者。

だからこその異名。


本当に?


「死の貴族、処刑人、断罪者、アレストファ公爵家はそう呼ばれる」


死刑に追いやることから、貴族に恐れられ付けられた異名。


「無知だから知らない」


アレスは淡々話しかける。


「だから、罪人になって初めて知る。異名は事実だと………アレストファ公爵家は代々死刑執行人なんだよ」


知るのは陛下のみ。


ソレ以外は存在しない。


存在しなくなる。


「じゃあね」


牢の中のみが灼熱の炎に包まれる。

高温の炎は何も遺さない。

灰さえ焼かれ無になる。


そして、そこには誰もいない牢が存在するだけ……




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