初めての王宮10(番外編1)
陛下とアレスのグルグル遊び編
「きゃあ~♪キャアハハハハハッ!もっとです~もっと!」
リンの楽しげな声が響き渡る、陛下の執務室。
アレスがリンの両手を持ち、体が垂直になるように浮かせ回し始める。
回って、回って…………………………
ソファに向けて投げ飛ばした。
柔らかいソファにドレスをフワリと拡がせながら着地。
「………………楽しそうだな」
傍観していた陛下がアレスに近寄り両手を前に向け出す。
「………………何?」
訝しげ眉間に皺を寄せるアレス。その瞳は暗く鬱蒼と生い茂る森の様に何処か恐ろしいが、陛下は気にしないどころか、期待にみちあふれた表情をしている。
「私にもやってくれ!」
「嫌だよ」
即答。
でも、めげない陛下は最終手段に出る。
「国王命令!」
「………………今からでも国王の地位を剥奪させてやろうか?俺はアレストファ公爵だよ」
「私は罪人ではないぞ!?」
焦る陛下に嘲笑を浮かべるアレス。
「ラフィテル皇国に愚王はいらないよ。存在してはならない……………………それに、何が楽しくて貴方と手を繋がなければならないの?気色が悪いよ」
真面目な事を言ったが後半が本音だ。
絶対、本音だ。
「いいじゃないか!?国王だとて人間なのだぞっ?一時ぐらい童心にかえっても罰はあたらん!…………幼い時は手を繋いで歩いたではないか?」
「子供の頃だろ、今から20年以上前の話を持ち出さないでよね。これだから中年親父は嫌だよ………」
呆れて溜め息が出る。
「私はお前と同い年の幼馴染みで従兄弟だろ!!」
「今の貴方を見ていると血縁関係さえ否定したい気持ちだよ」
「お前は変わらず毒舌だな!ちぃ姫のおかげで少しは性格が柔らかくなったと思ったら……」
「当たり前でしょ?リンは貴方じゃないもの」
陛下はアレスに全否定されて、絨毯に座り込みのの字を書く。
その姿は威厳なんて文字はなく、ただの拗ねた子供だ。
「……王様が可哀想ですよ、旦那様」
生まれて9ヶ月の元猫で人間になって一月たたない少女に憐れみを向けられる国王陛下は一掃惨めだ。
「いいんだよ、構わないで」
「でも、グルグル楽しいのです。王様も遊びたいのに仲間外れは駄目ですよ」
「っっっ~ちぃ姫はなんて良い子なんだ!アレスなんて捨ててもう一掃のこと、私の娘になれ!」
リンをギュウギュウに抱きしめる国王。
毒舌に傷付いた心が癒される。
「旦那様はゴミじゃないです!捨てません!私は旦那様の婚約者なのですよ!」
抗議するリンも可愛らしい。
「…………………いいよ…… 遊んであげる」
静かな低い声がこの場の気温を絶対零度に下げる。
「アッ、アレス…………!!!??」
国王の体だけ空中浮遊させると、その体が目にも止まらぬ速さで高速回転する。
もはや声も出せぬ国王はやられるまま、一番高い本棚に向けて真っ直ぐに飛ばされた。
ガンっ!!
バサバサバサッ
足で着地など出来るわけなく、書類や本を撒き散らしながら顔から着地した。
「ッタ!!!ッッッッッ!!!!!アレスッ!お前な!!!」
頬は腫れ、本の角に当たったのか擦過傷もあり、極めつけに鼻血。
「遊んであげたよ?これで満足かい?」
「これは、ただの暴行だぞ!!!見ろっ!痛いだろっ!!」
アレスに顔を近付け詰め寄る国王。
「…………近寄らないで、汚いよ」
「お前がやったのだろうっ!!!」
「………………貴方、そんな顔で尋問やらないでよね。この国の最高権力者が馬鹿にされるよ。その臣下なんて思われるのは不快だよ」
「話を聞けっ!!!」
「仕方ないから治してあげるよ」
魔力で一瞬で頬の腫れや擦過傷は治癒されたが鼻血のあとはそのまま…………
「顔ぐらい自分で拭きなよ」
「お前っ!さては私とちぃ姫が抱き合ったから嫉妬したな!?器の小さい男だなっ、なぁちぃ姫?」
リンに近寄ろうとする国王からアレスはリンを引き離す。
「リンに汚い顔で近寄らないでよ。遊び足らないのかい、陛下?」
「なっ!?あれは立派な暴りょ…………!」
「王様ばかり狡いのです!!次は私の番なのですよ!」
ワクワクしながらアレスに手を出すリン。
「私も王様みたいな凄いグルグルがいいのです」
「あれは、危ないから駄目だよ。此処は狭いし物が乱雑しているからね」
「王様だけ特別扱いは狡いです」
「ここは、陛下の執務室だよ。陛下は良いけどリンは駄目。陛下は今ので終わり。代わりにリンには後三回やってあげるよ。」
「ヴぅーー………分かりました。三回グルグルします」
「………………依怙贔屓な」
鼻血を拭きながら国王はボソリと呟いた。




