人間になったら♪
「…ンッ!リンッ!」
そんな、大きな声を出さなくても聞こえます。
まだ、眠いのですよ。旦那様。
お願いだから揺らさないで下さい。
「…………お休みなさい」
「寝ないの」
頭をペシッと叩かれました。
「う~っ……旦那様、眠いのです。もう、御飯の時間ですか?」
目を擦りながらどうにか起きましたが目の前にいるのは人間なのです。でも旦那様の匂いがします。
旦那様は黒猫。でも今は父、母のような姿をしていました。
「………旦那様は人間になれたのですか?」
それなら、そうと言ってくれたらいいのです……。
ブラッシングとか御飯作ってくれたり、ネコジャラシで遊んでくれたり、寝る時にはモフモフタオルを敷いてくれても………
「毛づくろいも、ご飯を分けたのも、俺の尻尾をネコジャラシして遊んだのも、何処でも寝る君を寝床に運んだのは猫の俺だよ……」
声に出ていたようです。
旦那様は呆れています。
「あっ、そうでした。でも、運ぶ時は人間になって抱っこして欲しかったのです」
口にくわえられて運ばれると、体がひきずられて、ぶつかります。
「その時は人に戻れなかったんだよ。そもそも君は一度寝たらなかなか起きないだろ?もし、ぶつけても記憶にないはずだよ。それに俺はぶつけた覚えはない」
「起きたら、毛並みが乱れているのですよ」
「それ、君の寝相のせいだから……君が起きたら毛づくろいしてやったのは誰だい?」
「……旦那様です」
「他に言うことは?」
「…………っは!私、まだ毛づくろいされてません!」
今、起きたばかりです。
ペシンッ!
先程より強めに、痛くない程度に叩かれました。
旦那様は人間になってから暴力的になった気がします。
これが今、話題の '昼どら' で有名な 'でーぶい' と呼ばれるものでしょうか?
「違うよ」
また、声に出ていたようです。
ちょい反省します。
「そこはお礼でしょ……あと、これは断じてDVではないから……それより君も、今は人の姿になっているからね」
言われて自分の体を観察してみます。
手は白くなく、爪も短い、ピンク色の肉きゅうもなく、尻尾もないです。
「……人間……」
猫=遊ぶ、食べる、寝る。
人間=外で遊べる、お菓子食べれる、モフモフふかふか布団で寝れる。
「旦那様!遊んで下さい!お菓子!モフモフふかふか!」
「………………人間なって喜んだ理由はなんとなく分かったよ。でもまずは俺の話しをよく聞きなよ……質問は後。いいかい?よく聞きなよ」
2回言われました。
(旦那様、なんか恐いのです……)