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初めての王宮9

豚の親子と汚い男は騎士が連れて行きました。


殺されるらしいですけど、何か悪い事でもしたのですかね?


「アレス、ちぃ姫、ご苦労であった」

「仕事だからね。今回はリンの活躍で早く捕らえられたよ」


「うむ………ちぃ姫に何か褒美をやろう、何がいい?」

王様がご褒美くれます。

「何でもいいのですか!?」

「ああ、良いぞ。ドレスか?宝石か?それとも菓子か?私がやれる物なら何でもやろう」


王様は偉いのです。

なら、あれもご褒美貰えます!


「カニカマが欲しいです!」


「カニカマ?」


「ご褒美やオヤツはカニカマです」


ドレスは重いし邪魔くさいです。

宝石は色のついた砂利です。

ご褒美と違います。

お菓子は旦那様が持ってますから、今はいりません。


ご褒美=オヤツ=カニカマです。


「カニカマはこの世界にないから、手には入らないよ」


王様は一番偉いのです。

絵本の王様は

「私の手に入らぬ物はない!」

と、言ってました。


可笑しいです。


「王様なのに?」

「陛下どころか、誰でも無理だよ」


「じゃあ、猫缶でもいいのです」

「猫缶も無理だよ」


猫缶もないのですか!?

魚がいるのに猫缶がないのですか!?

信じられません!!!


「…………ショックをうけているところ悪いが、カニカマとネコカンとやらはなんだ?」

「むこうでの猫の餌だよ」


「作れないか?予算に目処はつけんが……」

「金があっても、こちらの技術では一生無理だね」


猫餌は加工処理された長期保存食だ。

こちらでは食材は腐敗防止の魔法、魔道具などもあり、その場で新鮮なうちに調理することが出来る。

加工してまで長期保存食を作ろうとする概念がない。


「お前でも作れぬのか?」

「貴方は煮魚と乾燥させた蟹を一年後に食べたいかい?」


「…………毒より質が悪いな、それは……」


猫缶は煮魚違います。

干した蟹はカニカマではないのです。

似てますが違うのです!


猫缶は猫缶です。

カニカマはカニカマなのです。


旦那様はガラガラしか食べた事ないから、分からないのですよ。

私はガラガラ嫌いです。


悲しいです。


もう、食べれないのですか……


泣きそうです。


「……………… うぇっ…………ご褒美…ないのです…………」


「あっ、いやな、ちぃ姫泣くな!なっ?ほらっ、魚と蟹なら用意するからっ、なっ?」


「うぅ……猫缶…カニカマぁ…………」


「国王陛下のくせに軽はずみな発言をするからだよ」

「アッ、アレスッ!どうにかしろ!?………ちぃ姫、あー菓子はどうだ?夕食は?ちぃ姫は魚が好きだったな、うちの料理人は魚料理が得意でな、旨いぞ?新鮮だから生でも食べられる魚を捌いてくれる」


生魚?

お刺身ですか?


「お刺身食べます。白いのにお刺身乗せたの………お菓子は皆と食べるからいらないのです」


猫缶とカニカマは諦めます。

食べたいけどないなら、仕方がありません。


お菓子を食べれる人間になったのです!


我儘いいません。

でも、お刺身は食べます。


お刺身の日はいつも父に少しだけ貰いましたが、今は人間なのでいっぱい食べれます。


ご褒美なのです♪


喜んでいると王様が旦那様にコソコソ話しかけています。

内緒話らしいですが私には聴こえます。


「なぁ、アレス…あちらでは生魚はオサシミと呼ぶのか?白いのとは何だ?」

「ドレッシング、玉ねぎなしのカルパッチョみたいなやつだよ。白いのは大根を糸見たいに細長く切った物をツマ」


ドレッシングの代わりに醤油、ワサビなどの調味料に一口サイズに切った生魚を浸けながら食べるのが刺身。


「大根はあると思うが、ショウユとワサビはないぞ?」

「ツマの上に刺身があれば満足だよ」


猫だったから醤油もワサビも食べたことないしね。


(なんで野菜嫌いなのにツマは食べるのか、今だに分からないよ。大根は食べないのにね)


「お刺身、お刺身~♪」


念願達成です。


食堂へ行ってお刺身と白いのを食べました。

いっぱい食べたら眠くなりました。

寝ます。

お休みなさい。旦那様。






「寝たようだし帰るよ」

「ちぃ姫は寝顔も可愛いな」

「遊んで、食べて、寝るのが猫だよ」


リンを抱え挨拶もそこそこに、立ち上がる。


「また来い、と起きたら伝えてくれ」

「嫌だね。ここにはもう二度と、連れて来るつもりは毛頭ないよ」


アレスは陛下を見ずに応え、視線をリンに向けたまま背を向けた。


「………ちぃ姫に護りはいらんだろ」

「いらないよ。そんなの必要ない」


「なら、……」

「どうしてリンが貴方に会う為にここに、わざわざ来る必要があるの?」


……それ……、………ゆ…………………よ………………


「じゃあね」


魔導師は別れを一言ですますと一瞬で消えた。

残されたのは国王のみ。


「…………マジかっ!?」


国王は誰もいない空間に声をあげるが、それに対しての応答はない。ただ、国王の声のみが響き渡り、辺りは無音。


「……………………………ふっ……………ふはははははははっ!!!!!!ッッッゲホッ!ゲホッ!」


誰もいなくなった部屋でやたらと大声を出して笑い出す。あげぐに、腹を抱え咳き込みながらの爆笑。

しかし、落ち着くとそこには、慈愛に満ちた表情があった。


「まさか、あんな独占欲を見せるとは………ちぃ姫に感謝だな……これはますます、会いに行かねば!」


楽しくアレストファ公爵家、御忍び家庭訪問計画を考えながら執務室に戻る国王。

思い出すは先程のアレスの言葉………


「…………それに、俺が不愉快だよ………」








アレストファ公爵家にて


「お帰りなさいませ」

「ただいま」


上着をマァムに預け、リンを連れ寝室に向かうアレス


「夜会は如何でしたか?」

「釣れなかった魚が雑魚と一緒に罠に掛かったよ」


「…………それは、ようございました。お嬢様にお怪我は?」

「ないよ、リンには………」


「……………怪我をなさるようなことは、されたのですね………そして、させたのですわね」


「………………」


「まぁ、お嬢様ですし、仕方がありませんわ」


マァムは寝室の扉を開けながら溜め息をついた。


「では、何か御用がありましたら、お呼びくださいませ」


マァムが寝室の扉を閉める前にアレスが声をかける。


「リンに夜会の菓子を沢山もたされたよ。君達と一緒に食べたいらしいから、明日の菓子は準備しなくていいよ」

「っ!私共にですか?」


「夕食に出された菓子も珍しく断ってたよ。家に帰って君達と食べた方が美味しいから、だそうだよ……食べる前に寝たけどね」

「…………明日が楽しみですわ。他の方達にも伝えておきますわ」


明日の楽しいお茶の時間考え、マァムは満面の笑みを浮かべた。


「よろしく」

「はい、畏まりました。お休みなさいませ。アレス様、お嬢様、良い夢を…………」


扉が静かに閉まる。

アレスはタイを取りシャツのボタンをはずしながら、ベットへ向かった。

ベットにリンを寝かせてから、靴とドレス脱がせ髪をほどいてやる。


「おやすみ」


リンの額にに軽くキスすると、いつものように抱きしめながら眠りについた。




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