初めての王宮1
今日はいつも以上にヒラヒラのフリフリのキラキラのドレスです。
髪も結われて絵本のお姫様と同じです。
重くて、苦しくて、動きずらいです。
でも、マァムが張り切って支度して
「何処の令嬢より一番、お嬢様が可愛いですわ!」
と、誉められたので、脱ぎたいですが言えませんでした。
お姫様は実は最強なのかもしれません。
心優しく、力強く、我慢強い。
なんで王子様が必要なのでしょう?
絵本のお姫様は一人でも生きていけそうです。
「旦那様、王宮はまだですか?」
「今、馬車に乗ったばかりだよ」
馬遅いです。
速く走るんです。
食べますよ?
ヒヒーン!!!
「うわっ!!?どうした!?落ち着け!!」
急に速足なった馬を落ち着かせようと、馬主が宥めますが、馬は言うことを聞きません。
「少し速くなりました………まだですか?」
「君ねぇ……馬に殺気を向けるんじゃないよ」
溜め息を吐きながら注意されましたが、馬が遅いのが悪いのです。
馬のせいです!
馬車は貴族の移動手段らしいですが、こんなのに良く乗れます。
遅いし、ガタガタしてお尻が痛いのです。
「旦那様の魔力で王宮まで行けばいいのです」
「不要なのに陛下がわざわざ君の為に迎えを寄越したのだから、一応使わないとね」
大きなお世話なのですよ!
私はこの馬より速いし、強いです!
何より自分の匂いのしない場所は落ち着きません。
これも、それも、王様のせいです!
婚約者が見たいと騒いだらしいです。
お城が見たかったので喜んで王主宰の夜会の招待を受けたら、礼儀作法にダンスにマナーをやらされました。
礼儀作法は走らないで歩く。
極力しゃべらない。
挨拶は名を名乗って笑ってながせ!です。
ダンスは旦那様としか踊らないし踊れないです。
旦那様が私を空中浮遊させるので足を踏む心配なし。
ダンスが一番楽しかったです。
マナーは飲み物はがぶ飲みしないで、チマチマ飲みます。
気になる軽食、お菓子は旦那様が魔力で亜空間に保存、家で食べます。
その場では食べません。
付け焼き刃らしいですが、私は限界です。
礼儀作法もマナーも馬車も嫌いです。
お城も王様も嫌いになりそうです。
次は絶対に行きません。
「だから、夜会なんて行くものではないと言っただろ?」
「本物の王子様とお姫様が見たかったのです。あとお城も……」
けして、お菓子とかお菓子とかケーキが目的ではないのですよ!?
…………………嘘です。
ちょっぴりは、あります。
落ち着かないので旦那様の膝に顔をつけてスリスリします。旦那様の匂いです。
「こら、髪型が乱れるよ。マァムの力作なんだから乱したら俺が怒られるだろ」
「頭もドレスも重いのです。マァムは嬉しそうでしたが私は限界です」
グデグデと旦那様と馬車の中で過ごしていたら、ようやくお城が窓から見えてきました。
「まだ、お城が小さいのです」
お城が遠くにあります。まだまだ先です。
「君が脅したせいか予定より早いけどね」
「私のが速いです!」
馬も頑張ったようですが、私のが頑張ってますし、我慢もしてます。
「馬と張り合わないの」
馬、嫌いです。
やっぱり狩ります。
ヒヒーン!!!!!!
悲痛な馬の嘶きが響き渡りました。
「やめなさいっ!」
ペシンッ
旦那様に叩かれました。
………馬が憎いです。
馬車は二度とのりません