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婚約+指輪=首輪>離婚

お散歩は楽しかったです。

また、遊びに行きたいのです。


花も鼠も喜んでもらえましたが………


「約束、守らなかったね」


一人では森へ行ってません。

ウサギも一緒です。

私は約束を破ってません!

だから、お菓子を下さい!


マァムが買ってきてくれた菓子を目の前で取り上げる旦那様。


「私のです!旦那様にもわけますから返して下さい!」


いつもは自分の分のお菓子もくれるのに、今日の旦那様は意地悪です。


マァムが買ってきてくれたお菓子が美味しそうだから、きっと独り占めする気です。


旦那様め、お菓子の魅力に今頃、気づいたのですね。


でも今でなくてもいいと思います。


「菓子はあげるよ。反省したらね」

「私、凄く反省しています!だからお菓子!」

「……それは何に対しての反省かな?」


そんなの、もちろん!


「今まで旦那様の分のお菓子まで食べてたからです!これからはハンブンコしましょう!」


譲るのではなく、妥協。


「まずは菓子からはなれなよ。でっ約束は?」


「一人で森へ入るの禁止です……」

「ウサギは人かな?」

「………ぬいぐるみです」


「…………」


「…………約束、破りました。ごめんなさい」


ウサギは一羽でした。


悪いことしました。

人間は悪いことしたら謝るのです。

約束を破るのは悪い子です。


しゅんとして、うつむいてたら旦那様が頭を優しく撫でてくれました。


「……花、綺麗だったよ。ありがとう」


旦那様が笑ってお礼を言ってくれました。

約束を破ったのはいけませんが、謝ったら許してくれました。

良かったです。


「鼠も捕まえました!」


狩ってきた鼠は、つまらなかったけど初めて見る大きさです。

是非とも旦那様に見て欲しかったのです。


「……あれ、魔物だからね。毒もあったし……本当に怪我がなくて良かったよ」


あれは鼠ではなく魔物でしたか。


魔物は弱いですね。


魔物は旦那様が燃やしました。

魔物は食べられないそうです。

残念ですがその代わりマァムがくれたお菓子があります。


旦那様がお菓子を返してくれました。


お菓子はクッキーという丸い菓子です。


表面は固いのに噛み砕くとホロホロと口の中で崩れていきます。


サクサクのホロホロです。


味はケーキのスポンジを焦がした感じで美味しいです。


でも、ボロボロこぼれます。


旦那様が口を布で拭いてくれたり、服に落ちた食べカスを拾ったりしてくれます。


クッキーは食べやすいですけど汚れますね………


美味しいから良しとします。


5枚あったクッキーも残り1枚です。


はっ!旦那様とハンブンコしてません!


美味しいから旦那様も食べたいはず………

でも、最後の1枚です。

あげたら喜んでくれます。

でも、食べたいです。どうしましょう………


これが人間が言う葛藤というものなんですね。


「何、唸ってるの?」


決めました!


さっき悪いことしましたし、最後の1枚は旦那様にあげます!

私は良い子です!


名誉挽回です!


「旦那様あーんして下さい」


食べカスだらけの手で最後の1枚を旦那様の口へ持っていきます。

旦那様は驚いた顔をしましたが嬉しそうに笑うと半分だけサクッとクッキーを食べてくれました。


「ハンブンコだったね」


手に残った半分だけのクッキーは、さっき食べた物と同じクッキーのはずなのに、さらに美味しかったです。


ハンブンコは凄い技です。


でも全部、半分にすると食べる分が少なくなります。


味をとるか、量をとるか………


ハンブンコは諸刃の剣です。


手についた食べカスを舐めながら考えていたら旦那様が何やら小さな箱を取り出し、差し出して来ました。


お菓子でしょうか?


「貰ってばかりなのもね。それ、あげるよ」


小さな箱をパカリと開けると絵のついた小さい輪っかがありました。

箱を持ったまま嗅いでみますが、匂いがしないので食べ物ではありません。


ちょっと、ガッカリです。


「なんですか?これ??」


「婚約指輪」


旦那様が輪っかだけ箱から取り出すと、それを持ったまま私の首に触るとカシャンと音がしたと同時に首が少し窮屈になりました。


「……………首輪ですか?」


確かめたくても首なので見えません。

でも、感触が首輪に似ています。

首輪すると痒い時かけないから嫌いなのです。

引っ張って見ますが取れません。


「外して下さい!」

「駄目」


旦那様の魔力で大きくした指輪は取り込んだ魔力の欠片と違い、旦那様の魔力その物なので何処に居ても旦那様には居場所が分かるらしいのです。

しかも、旦那様にしかはずせないとのことです。


一人で森へ行ったの、やぱっり怒ってるのですか?


「心配なんだよ。それに婚約したしね」

「…………婚約って何ですか?」


「「「「「……………婚約!?」」」」」


最初は微笑ましく成行を見ていた使用人達が指輪の登場から茫然とし先程ようやく覚醒した。


「いっ、いつの間に婚約!!!」

「婚約指輪って首輪でいいのか!?」

「あれ…………アレストファ公爵家当主の紋章入りの指輪ですよね………婚約指輪にして良い物なんですか……」

「由緒ある指輪が首輪に…………」


騒ぎだした使用人。


いつもの人に戻りました。


煩いのは嫌ですが静かだと変です。


「お嬢様、婚約とは結婚の約束の事ですわ」

「結婚とは違うのですか?」


「そうですわね。結婚が夫婦なら婚約は恋人とお考え下さいませ……ところでアレス様、お嬢様も(ワタクシ)共使用人も御婚約のお話は初めて伺ったのですが?」


どういう事かしら?


顔は笑ってるのに怖いです。


マァムは怒らせないようにしましょう。


でも、旦那様は平然としています。怖くないのでしょうか?


「今日だからね。婚約したの」


ここ1週間仕事でいなかったのではなく、リンと共にこの世界に来た次の日に、婚約する旨を陛下に伝えたら……


リンを紹介するまで婚約は認めないやら……

庶民だと体裁が悪いから自分の養女にするやら……

二人で王宮に住めやら……


何だかんだと言って婚約書類にサインを貰えず……


苛ついたアレスが魔力で陛下を軽く攻撃。

陛下高笑いしながら華麗に回避。

アレス苛つき上昇、攻撃連発。

陛下焦って段差に気付かず転ける。


陛下意識暗転、寝不足、過労中に急激な運動が原因。


三日後陛下起床。

寝惚けた陛下にサインを貰う。

リン行方不明の連絡が来る。


マァムは怒りも忘れ、呆れた。


「陛下が御代わりなく、相変わらずのようで安心いたしましたわ」


「この国、大丈夫かよ……」

「国王陛下って賢王って有名だったよな?」

「あの方は寝食も忘れ民に尽くす御方ですよ。ただ、変わった方ですが……」

「陛下とアレス様は従兄弟ですからな。気心もありましょう」


この国の王様は旦那様と仲良しです。

私も一緒に遊びたかったです。


旦那様は今日から恋人になりました。


恋人は街の店でお菓子を食べたり、遊んだり、口と口をくっ付ける関係です。


あちらの世界のテレビで見ました。


街に行くのが楽しみです。


ところで、婚約指輪は婚約首輪のままですか?


「君の攻撃は爪みたいだからね。指輪だと指が千切れたら身に付けてられないし…………」


(飼い猫には首輪がないと誰に連れていかれるか分かったもんじゃないよ)


ただの婚約に国王陛下のサインが必要なわけない。


貴族の婚約はマァムが言った庶民の恋人と考えて相違ない。


アレストファ公爵家当主の紋章の指輪を持つ婚約者。


それは結婚していなくともアレストファ公爵夫人として権限を奮えるもの。


王政のこの国は貴族が上流階級で庶民は逆らうことを許されない。


猫だったリンには貴族を敬うことなど、到底無理である。身分から守る為にも必要な措置であった。


「これから、君が名乗る名は[リン=アレストファ]だからね」


名前が長くなりました。


旦那様は私の名前を滅多に呼ばないので、呼ばれると、くすぐったい気持ちになります。


いつもは君とか、この子呼ばわりですからね………

熟年夫婦みたいなのです。


熟年夫婦の離婚原因は奥様を「おいっ」とっしか名前を呼ばなくなった旦那様が原因で夫婦間が上々に冷めていく現象です。


すでに熟年夫婦のような時はどうすれば、いいのでしょうか?

毎回答えをくれるテレビはありません。


「さそっく離婚の危機です!」


「「「「「「はっ!?」」」」」」


その後、旦那様はなるべく私の名前を呼んでくれるようになりました。







アレスは初め婚約ではなく結婚書類を陛下に出したが、婚約もしないで結婚など認められるかと却下され、仕方なく婚約書類のサインを御願いしたら、再び却下されたのでキレました。




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