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第六十七話:予知見の姫の警告

 レティアが里長の所を訪ねると、彼は待ち構えていたように彼女たちに椅子を勧めた。

「いったい、何があったのですか?」 

 お茶が出揃うのを待ってからレティアは目の前にどっしりと構える村長に疑問をぶつける。

 彼は淹れたての茶をすすりながら「まあ、落ち着いて」とレティアを制してみせた。

「儂たちもしっかりとしたことがわかっているわけではない。森の外に時守の一族の頂点ともいうべき『時見』様が現れ、空間を歪めて森の結界を残した状態で道を開通させてくださった。それだけしか判らぬ。

 何故、彼が里に立ち寄らなかったのか、そしてどこへ去っていったのかすら皆目、見当がつかぬのです」

 村長の言葉にレティアも驚いて見せた。フェルスリュートが伝説とまで言われていた『星替』というだけでも十分な驚きなのに、それ以上に存在を疑われている『時見』までもがこの時代に生まれているとは思いもしなかったのだ。

「つまり、この里はもう外界とは遮断されていないわけですね」

 端的に理解したルミエールに村長は少しだけ考え込んだ。

「完全に、ではありません。あの道は時守の能力を持つ者のみを通すように設定されています」

 おそらく、普通の護符を持っている程度ではあの道は通れないだろう。

 彼女たちがもっていた『星替』が作った護符ならば通れる可能性はあるかも知れないが、以前の森の暴走から踏まえてそう易々と試すことなど出来ない。

「時が、満ちていません・・・」

 不意に村長の家の置くから少女の声が響いた。3対の視線が一斉にそちらへと向けられる。

 出てきたのは自分たちよりも僅かばかり年下の少女あった。

 長い白金の髪を有し、琥珀色の瞳の少女はレティア達に近づく。

「時が満ちてなかったからこそ『時見あのかた』も『王女達あなたがた』に逢わずに旅立たれたのです」

予知見さきみの姫」

 村長は驚いたように彼女の元へと駆け寄る。

 そしておごそかに彼女の手を取る彼女を導いた。どうやら彼女の目はあまり良くないらしく、彼女は導かれるまま彼の隣の席へと座った。

「お初にかかります、竜の方々。わたくしはオクタヴィア。時守の中でも予知見を統べております」

「レティア・リストラルだ」

「ルミエール・フィネアだ」

 いつもどおりの口調のレティアと、彼女を真似たような口調で挨拶するルミエールに目の前のオクタヴィアはもう一度頭を下げた。

「時が、来ていないというのは?」

 一通りの挨拶を済ませると、レティアは待ちきれない様子で彼女に問いただした。

「今、ルミエール様、ヘンリー様をリディア、ロシキスどちらに戻したとしても確実に悲劇が起こります。あの方が行動を開始しない間は、彼女たちをこの里から出すことは許可できないのです」

 断言をする彼女にレティアは少しだけ安心した。レティアもまたオクタヴィアと同じ意見をもっていたからだ。

 しかし、レティアの横で聞いていたルミエールは心外そうにオクタヴィアの意見に不平の声をあげた。

「許可が、できないって・・・」

 他の人たちだって気楽に外に出て行く準備をしている。同じ兄弟のレティアだって、自分の竜を使い外へ出かけているのに何故自分と弟だけが出てはいけないのだろうか。

「レティア姫、『星替』様の護符をこちらに渡してくださいませんか?」

 ルミエールの文句を無視し、オクタヴィアはレティアに申し出た。

 レティアは少し険しい顔をして彼女に向き直ると横に首を振った。

「あれは、私が管理する。あなたが許可するまで私が責任を持って保管する・・・それではいけないだろうか」

 オクタヴィアは彼女の意見に丁寧に頭を下げると、自分の役目は終わったとばかりに席から立ち上がった。

「レティア様、お頼みします・・・そして、ルミエール様、あなたはその日が来るまで更に武術の腕を上げておいてください」

(その時期みらいが来た時に『時見あのかた』の足手まといとならないように)

 最後の言葉は飲み込んで、オクタヴィアは部屋を後にした。

 殆ど光を読み取らなくなってしまった自分の目に今でも残る光の姿。彼の隣に立つことが許される彼女たちに嫉妬がないといえば、嘘となる。

(だからこそ、強くなってください)

 正直に、そこまで言うことの出来ない自分の醜さに辟易へきえきとしながら、オクタヴィアは自分の住む庵へと戻っていった。




 後に残された王女達は彼女の態度に疑問を覚えつつも、自分が知りたい部分を聞いたことに満足して村長の家を辞した。

「これは、預かっておく」

 村長の屋敷を出たところで、レティアはルミエールの首に掛かったままだった護符を取り上げた。

「大丈夫なのに」

 不満そうに口を尖らせるルミエールにレティアは「約束したからな」と言い聞かせた。

 取り上げた護符は手の中できらきら光っている。それはあの悪友ソルディスの髪の毛の色にも似ていた。

(悲劇というのは、何なのだろうな)

 このまま記憶を失ったままの彼女を自由にさせる事などできないのは理解できる。それに伴う『悲劇』も想像できる。

 だが、自分が想像している『悲劇』と彼女が予知ている『悲劇』は本当に一緒なのだろうか。

 第一、彼女も村長も何かを隠している。隠した状態でルミエールとヘンリーに「剣を取れ」という。

(考えても詮無いことか・・・)

 レティアは一つ重い息を吐くと、広場で待たせたままだったルシルヴィリアの元へと戻るのだった。

ルミエールの恋敵ライバル!?登場です。

今回の話は生むのに大変苦労しました。

途中、放棄してさっさと違う場面にいってやろうかと思ったのですが、なんとか長い状態で生み出されました。

何とか書き上げましたが、現在、修正候補の第一候補のお話・・・もう少し、話し全体が見渡せるようになったら真っ先に修正せねば、と思っています。

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