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第六十四話:時守の里の開放

 砦を出てから10日を過ぎた頃、ソルディスは最初の目的地である時森の入り口へと到着した。

 一人になったらすぐにおもむこうと決めていた場所だ。

 森は時見として自分が結界を張った時よりももっと強い・・・まるで呪詛のような結界に包まれていた。

 森の外側には常に時の精霊・森の精霊を中心としたすべての精霊エレメントが行き交い、少しでも森に踏み入れようとする者がいれば、凶暴な手口で排除していた。

 ただ時の守護符や時守の民は森からはじき出されるだけで怪我を負わされる事はなかった。

 その様子を暫く見ていたソルディスは小さく溜息をついた。

 彼は全て人が諦めて帰る姿を見送ってから、本来森の中にある里へと通じる道があった場所に立ってみた。

 とたんに精霊が彼を排除しようと集まってくる。

『ワレラノ……憎シミ……──……失ッタ……奪ワレタ』

 狂ったように言葉を紡ぐ精霊の頭をソルディスは軽く撫でてやる。

『コノ手ハ……時見リル……ドノ?』

 一人の精霊が呟くと一斉に精霊達がソルディスの前に集まってきた。彼らはソルディスの身体に触れることで少しづつではあるが正気を取り戻してゆく。

星替にいさんの死は僕にも伝わっている。父王あのひとをここに捕らえてくれて、ありがとう」

 バルガスがこの森に閉じ込められたことにより、ソルディスは内乱を治めるまでに5年間の猶予を得ることが出来た。この猶予期間を無駄にせず『彼』を凌ぐほど強くなれれば、呪いの成就はなくなる可能性も出てくるはずだ。

「だけど、里に通じる道だけは確保しなければならない。この奥にいる僕が守るべき人たちを飢え死にさせるわけにはいかない」

 馬車の中から遠隔操作で修正しようとした時は失敗したが、この場にいればそれほど難しいことではない。自分が姿を現せば、精霊達はソルディスの思念をきちんと理解してくれる。

「森は閉じたままでいい……時守の力を持つ者と『星替ラル』か『時見リル』の護符を持つ者だけここを通すようにしよう」

 折角閉じられている森を開放することなど愚の骨頂だ。精霊たちも彼の心を理解し、道を作るための準備を開始する。

「すべての時とすべての精霊を司りて結界を修正する……円環は時空を歪め、通じし道は『能力』又は星替か時見の護符を持つ者だけに通行を許可する……『時空転換魔法ラムル・リエ・ファーダ』」

 重々しい詠唱とともにソルディスの身体は金色に光り輝く。

 その光は精霊達の存在オーラと交じり合い、森全体を包んでいった。




 森の外で起きている異変に一番最初に気がついたのは里長だった。

 大きな時の魔法が森を包むように発せられる。彼が驚いて外に出ると同時に感知能力が強い時守の里の民が一斉に顔を出していた。

 その様子に気付いたのか、感知能力の低いものや、彼らとともに過ごしていたロシキスの王子たちも外へと出てくる。

「何かあったのですか?」

 ヘンリーが村長に尋ねると、彼は森の方を見ながら頷いた。

「森の外に『時見』様がみえられている……どうやら孤立したこの里と外界との道をつなごうとなさっているようだ」

 その言葉に様子を窺っていた村人たちが一斉に歓声をあげた。

 里は霧の影響であまり食物の育ちはいいほうではないし、結界が張られているため森に食料を取りに行くことも出来ない。

 いくら備蓄としての食料が用意してあるとはいえ、いつ明けるとも知らぬ森の結界に少なからず不安を抱いていたのは確かだった。

 まして助けてくれるのは自分たちの一族を救うとされる『時見』なのだ。盛り上がるなというほうが無理である。

「もうすぐ、あそこの空間だけが開く……そうすればこの里も前のように外界と行き来できるだろう」

 ヘンリーはその言葉を聞いてほっとした。

 『星替』であるフェルスリュートをむざむざ死なせ、精霊達が結界を張る原因を作ってしまったという罪への呵責が彼にはあった。

 もしこのまま閉じ込められ、食料がなくなったときにどうすべきか、唯一空を飛ぶルートを持っているレティアと話し合ったりもした。

 不意にふわりと匂いの違う風が吹いた。

「ああ、もう道が開いた」

 村長の言葉に全員が胸を撫で下ろし、その道を通ってくるだろう人を待ち受けた

森の結界はそのままで道を開いて、その右と左に出来た空間の切れ目をえいやっとくっつける・・・そう言う作業を彼は精霊の力を借りてやりました。

一種のワープみたいなものと考えてください。

ちなみにソルディスは全力で精霊魔法を使うと、髪の毛が元に色に戻ってしまいます。

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