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第六十一話:見抜かれた思い

 ソルディスは一人で医療施設までの道を歩いていた。

 自分の去った部屋からは泣いているシェリルファーナの思念がずっと伝わってきている。スターリングに頼んできたが彼にはまだ早すぎただろうか。

 それでも自分は一人で離れなければいけない。自分の持つ『狂乱の星』が誰かに影響を及ぼさないようにするためにも。

 とぼとぼと歩きながら、医療室の前につくとそこにはクラウス独特の明るい緑色のオーラが存在した。

 あの男そっくりの容姿を持ちながら、自分みたいに呪われず誰からも愛される王子。彼の持つ瞳と同じ色のオーラは常に人に明るい気持ちを植え付けてくれる。

 本当ならば自分や父のように歪んだ人格の持ち主ではなく、彼のような人が王位を継ぐべきなのだろう。彼ならば民を大事にし、国土を豊かにする力量を備えている。

 ソルディスは小さく笑うと医療室のドアをノックした。

 中から明るい女性の声がして、ドアが開かれる。現れたのは白衣に身を包んだ朗らかな感じの女性だった。年のころはグランテと同じぐらいだろうか、医療に携わってもう何十年も過ごしているベテランとしての貫禄があった。

「どのような御用?」

「あ、ここに兄が・・・いるはずなんですけど。茶色い髪で15歳ぐらいの……」

 ソルディスがそういうと彼女はぱぁっと顔を明るくさせ、通りやすいようにドアを大きく開いてくれた。

「ああ、今日、運ばれてきた男の子だね?聖長たちの魔法で大分回復しているよ」

 目の前の少年がどことなく意気消沈しているのを、兄が大怪我を負っているからだろうと勘違いした彼女は、安心させるようにソルディスの頭を撫でた。

 彼女が示すほうを見ると、クラウスは普通に起き上がっており弟の姿を認めて手を振る元気もあった。

「大丈夫?」

 ソルディスはとりあえずクラウスのベッドまで行くとその傍に置いてあった丸椅子に腰掛けた。

「ああ、それより・・・ルアンリルが来ているって?」

 いつもどおりの明るい口調で、クラウスは普通に話を進める。

 そのことに肩の力が少しだけ抜けたが、逆に話を切り出すタイミングを逸してしまった。

「うん、龍族の若君の背に乗って派手に登場してくれた。兄上の怪我の殆どはこの二人が治したんだ」

 とりあえず、兄の振った話題にのるつもりでルアンリルの登場シーンを兄に教えてやる。

 クラウスはソルディスの話を聴くと眉間に皺を寄せて、「うーん」と唸り声を上げた。

「それって・・・誤解されないか?」

 様々なところを自由気ままに旅行するクラウスは以前、龍族の里の近くまで行った事があった。

 そこの近くの宿屋の親父は1/8が龍族の人間でその風習などに詳しかった。その中の一つに聖体の状態の龍の背に乗ることの意味も含まれていた。

「あ、知ってんだ……ルアンリルは知らなくて、龍族に誤解されたって」

「ははは」

 知らないと想っていたのだが、どうやらこの兄は想った以上に博識らしい。

 彼はソルディスの言葉に軽く笑うと「誤解をちゃんと解かないとな」と的を射た応えで返す。

 とりあえず和やかな会話の後、ソルディスはそのままの勢いで切り出した。

「ところで、兄上、これからなんだけど」

 たぶん、クラウスもシェリルファーナと同じように自分たちは離れないと想っているだろうと、考えていたソルディスに彼はそのままの笑顔で問い掛ける。

「お前はどの町に移動するんだ?」

「……え?」

 ソルディスが驚きのあまりその視線をあげた。普段はセーブしている人の心を感じる力が解放され、クラウスの心の中が垣間見えた。

「お前が俺たちと共に旅をする目的は、この砦に俺とシェリルを連れてきたことで終わったんだろう?

 ならば次にお前が考えるのは俺たちから離れることだ。ここに来る前に将軍と頼んだんだろ。身分証を作ってもらうことを」

 いつもは見せない弟の驚いた顔にクラウスは静かに笑ってみせた。

ソルディス、兄・クラウスが出来がよかったことに初めて純粋に驚いています。

ある意味、とっても失礼な奴です。

クラウスはソルディスがどうしたいのか、どうするべきかをわかっているので、彼が負担にならないように笑って話をしてくれます。


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