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第五十話:いざ、北へ

 翌朝、ガイフィードの宿営している砦に辿り付くまでに必要な食料を分けてもらったソルディス達は、短い挨拶と共に此処までの路銀としては充分な金貨をグランテに渡すと街道の村を後にした。

 一座はこれから南に下ると言っていたから、丁度間逆の道行きとなる。

「後、5日、何事もなく過ぎてくれれば」

 すでにガイフィードの管理している地域に入っているとはいえ、この混乱に乗じてディナラーデ卿の手の者が潜んでないとは言い切れない。注意はどれだけしても無駄にはならないとこの旅で深く実感した。

 ただでなくとも子供だけの一団は目立つ。その上本人達にはあまり自覚はないが、スターリングを含めた全員が人目を引く容姿の持ち主だ。

 それに気付いて出て来るのが敵か味方かは神のみぞ知るところだ。

 いや、実際はソルディスにはその『未来とき』が見えるのかもしれないが、クラウスは彼に時を読んで欲しくなかった。

 サイラスがさらわれた時の嘆き、あの夜、自分は目を覚ましていた。用心棒の一人が咄嗟に嘘をついてくれたが、あの鋭いグランテが気付いていただろう。あの時、半信半疑ながらも自分はソルディスを・・・いや自分の身の安全を優先した。

(さすがに目の前で拘束される兄を見たときにはその選択を忘れて助けようとしてしまったが)

 クラウスは自己反省をしながらひたすら馬車を走らせた。

 街道沿いにある宿泊施設は概ね、占い師の格好をしているソルディスを歓迎してくれる。何事も無く馬車は3日進み、予定よりも早くガイフィード将軍のいる砦に到着できそうだった。

 砦に近づくと複数の街道が一つの大きな街道に合流してゆく。ソルディス達の通ってきた街道も例には外れず、リディアの首都とロシキスの首都をつなぐ大きな街道へと昼頃に合流した。

「後、もう少しだな」

 クラウスは目の前に見えてきた砦を囲む高い城壁に少し心を躍らせた。他の二人も目を輝かせたが、ソルディスだけは眉間に皺を寄せ、自らの傍らに置いておいた剣に手をかけた。

「でも、もうすぐ・・・来るよ」

 彼の一言にスターリングが自分の剣を手に持った。

 クラウスは馬車馬に先ほどよりも鞭を入れると一気に砦に向かってスパートをかけた。自分たちに気付かれたことがわかったのか、追手は馬車隊と騎馬隊に分かれて必死にソルディスたちの馬車に追いすがる。

「ルシェラーラ!」

 ソルディスは自分たちの馬車に併走しながらついてくる神馬の名前を呼んだ。馬車の横から聞こえる嘶きに、ソルディスはそちら側の幌を一刀のもと切り裂くと、シェリルファーナの身体を掴み、その馬の背に投げる。

 何が起きたのか解からないまま、ルシェラーラの手綱を捕らえて馬上の人となったシェリルファーナにソルディスは砦を指差した。

「急いで援護を呼んできて、大丈夫、神馬の足に追いつけるものなどいない」

 やっと兄の意図を汲むことの出来たシェリルファーナはしっかりと手綱を握ると、足で馬のわき腹を軽く蹴ってやる。それを合図にして、神馬は風を裂くように走り始める。

 ソルディスはそんな彼女へと矢が向けられないように、開けた幌から何本もの矢を彼らに向かって放って擁護する。スターリングも同じ様に、上手に弓を使い次々に馬上の人間を落としていった。

 クラウスは馬車に追いついてきた騎馬の騎士の刀を自らの刃で受け止めると上手に弾き、右へ左へと受け流す。

(さすがに不利な状況だ・・・いっそ、馬車を棄てるべきか?)

 棄てたところでこんな野原で弓兵と騎馬兵から逃れられるだろうか。クラウスは馬車を操りながら必死に自分たちが取るべき道を詮索していた。

 その時、馬車の両側からまるで挟み込むように騎馬が突っ込んできた。

 崩れるバランス。クラウスは何とか手綱を操りながら、その一騎を薙ぎ払い、もう一騎の方へと刀を薙ぐ。

 しかし、その刀が届く前に騎馬の持っていた槍は彼の腹部を貫いていた。

今のところ予定で通りクラウスが怪我をしてくれました。

最初の予定では矢を受けるだけの設定でしたが、やっぱり瀕死の重傷って言うのは槍で腹部を貫かれるぐらいじゃなきゃ駄目ですよね?

ちなみにシェリルファーナはまだその事実を知りません。

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